TOKYO2040 Side B 第28回『DXの先にある世界観と危機感』
※こちらの原稿は雑誌DIMEで連載中の小説「TOKYO 2040」と連動したコラムになります。是非合わせてご覧ください。
人口減少でインフラが維持できなくなる?
10月に内閣府で「デジタル行財政改革会議」が開催されました。デジタル行財政改革はDXに絡めて言うと「”D”+行財政+”X”」ということです。行政、財政という国の基盤がDXで包まれている、と受け取ることができます。
このコラムでも長くにわたって触れてきたDXについて、いよいよ誰もがスルーできなくなる時代に突入したのだと言えます。苦手意識があったり疎いからといって避けたりしている場合ではなく、否が応でも触れなければならない段階です。
<引用>
急激な人口減少社会への対応として、利用者起点で我が国の行財政の在り方を見直し、デジタルを最大限に活用して公共サービス等の維持・強化と地域経済の活性化を図り、社会変革を実現するため、デジタル行財政改革会議を開催します。
<ここまで引用>
Webサイトでは冒頭から「急激な人口減少社会」というが示され、なぜこの会議が現代に開催されねばならないのかが明示されています。そして、「利用者起点」「公共サービス等の維持・強化」「地域経済の活性化」「社会変革を実現」と、デジタルと未来を語る上で欠かせないキーワードが続いています。
人口減少について、すぐにイメージしやすい少子高齢化から将来的に一人の老人を何人で支えることになるのかという福祉や介護のイメージが先立つのですが、それは支える余裕がある場合の話で、人口が減少するとそれどころではなく、社会的なインフラが維持できなくなります。
50年前の高度成長期に作られた道路や建物が老朽化して補修も効かなくなっていく様子は想像できるかと思います。そこから交通や物流が滞り、物や人を運べなくなると、悪循環が始まって僻地や過疎地は急に行き詰まることになります。
これまで進行してきた過疎化は、高齢者が亡くなったり若者が都市部へ出ていったりというところを俯瞰して考えていたと思うのですが、ある日ストンと立ち行かなくなるというケースが多数発生すると考えられます。
まだ今なら、何らかの仕事に人を寄せたい場合は賃金の上昇で可能な範囲もあるかと思いますが、いずれお金があってもそもそも人がいなくてどうにもならないという状態にまで陥ります。これを防ぐためには人口を増やすしかないのですが、今がすでにそうであるように、急には増えません。
少子化対策の決め手は子育て支援よりも婚姻の数を増やすことだというのは統計からわかっていますが、国が国民に対して結婚を急かすというのは難しく、現在は自治体と民間が進めている婚活マッチングが行政で取り組める範囲というところです。
となると、人口が減少していくということを許容し、そこを目指して社会をトランスフォーメーションしていくことになります。変革しきれずに漏れるところは諦めるしかなくなってしまいますので、デジタルによってどこまでできるかが焦点となります。