アウトドア施設の「人手不足問題」
現在、漫画『ゆるキャン△』の影響もありキャンプブームが発生している。
しかし、ソロキャンプに挑戦する人全てが『ゆるキャン△』の登場キャラ・志摩リンのような器用な女の子ばかりではない。
筆者が実際に見たのは、慣れない手つきでカセットコンロをいじる人の姿である。カセットコンロは、操作に慣れていなければ安全とは言えない代物だ。
現にカセットコンロの爆発事故も、キャンプ場で発生している。中にはキャンプ場での火の後始末をしないまま帰ってしまう……という人もいる。
では、これからキャンプをしてみたいと考える人が基本的な知識や技術を学ぶ場が充実しているかというと、決してそうではない。
「私の若い頃はバイクに荷物を括り付けて山奥の施設へ行ったものですが、今やそのようなことをする学生は見かけなくなっています」
公営の野外活動施設は人手不足に陥り、初心者に火の取り扱いを指南できるスタッフも少なくなってしまった。このあたりは、個人経営のバイクショップが店を畳んだため若者に正しいバイクの乗り方を教えられるライダーがいなくなったのと同様の現象でもある。
いつでもどこでも電気を利用できる21世紀の人類は、それ故に火を遠ざける生活を送っているのだ。
しかし、「火を扱うこと」は人間の人間たる所以である。
火を自分の思い通りに扱う技術は、文明の基礎とも言える。火は人類に「料理」という概念を与えた。そして料金さえ払えばいくらでも電気を利用できる現代だからこそ、我々は「火の有用性」を改めて認識するべきではないか。
その上で、日本人は「米の調理」に並々ならぬこだわりを持った民族だということも忘れてはいけない。
『魔法のかまどごはん』は、「我々の原点」を静かに穏やかに教えてくれる製品だ。
スペアである補修用内なべを再利用したモデルは教育施設向けとして提供が開始されており、野外活動施設の問題解決に一役買っている。なお、『魔法のかまどごはん』には一般販売向けのバージョンも存在し、こちらは新規生産の内なべを使用している。
生産に全力
そんな『魔法のかまどごはん』は、タイガー魔法瓶のオンラインストアで1万9,800円で一般向けにも販売している(一般販売向け製品は、専用の内なべを採用)。どうやら注文が殺到しているらしく、筆者が記事を執筆している時点では「2024年02月下旬以降 発送予定」とある。
これに関して、村田氏はこう付け足した。
「この製品は、極力お客様をお待たせしてはいけないと考えています。生産に全力を注いでいる事実は、ここではっきりお伝えしなければと思います」
直火を使う故、AIともスマホアプリともまったくつながりのない『魔法のかまどごはん』。が、そこには「現代だからこそ」の付加価値が満載されている。
【参考】
魔法のかまどごはん-タイガー魔法瓶
https://www.tiger-corporation.com/ja/jpn/product/rice-cooker/kmd-a/
取材・文/澤田真一