4. デジタル遺言書の解禁によって期待される効果
デジタル遺言制度が導入され、PCやスマートフォンなどを用いて電子データにより自筆証書遺言を作成できるようになれば、全文手書きが必須である現行制度に比べて、作成のハードルが下がります。
遺言書の重要な役割は、遺産の分け方をあらかじめ決めることにより、相続人が遺産を取り合うトラブルを防ぐ点です。デジタル遺言制度によって遺言書作成が容易になれば、より多くの人が遺言書を作成するようになり、相続トラブルの件数が減ることが期待されます。
5. デジタル遺言書の導入に向けた課題
デジタル遺言制度を導入するに当たっては、本人確認が重要な課題と認識されています。
遺言書は本人しか作成できないため、本人が作成したものであることを確認する必要があります。手書きであれば筆跡などが本人確認に役立ちますが、電子データによる遺言書の場合はそうはいきません。
本人確認の方法については今後検討される見込みですが、一例として電子署名を活用する方法や、データ入力の様子を録画する方法などが挙げられます。
6. まとめ
デジタル遺言制度が導入されれば、遺言書の作成がいっそう普及し、相続トラブルの予防に寄与することが期待されます。伝統的な日本の遺言制度が、DXの流れによってどのように変容するのか、今後の法改正に注目です。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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