音は音楽だけじゃない、情報を聞くには最適なデバイス
ただ、イヤホンの代替として使うのは、あまりお勧めできない。音質や没入感は低いからだ。ある程度周囲の音を聞きながらBGM的に音楽をかけたい人にはいいかもしれないが、それであれば、耳をふさがないイヤホンでも済む。あえてメガネ型をしている必要性が薄いというわけだ。どちらかと言えば、HUAWEI Eyewear 2が真価を発揮するのは、音楽再生以外の音を聞く場合。少なくとも筆者は、音楽以上に〝音の情報〟を聞くために活用している。
例えば、ZoomやTeamsを使ったビデオ会議はその1つだ。このような時は、音楽と違い、常に音が流れているわけではない。交差点や工事現場の近くで参加することもないため、周囲の騒音も気にならず、ある程度音量を抑えて利用できる。イヤホンは長時間つけっぱなしにしていると耳が痛くなってしまうのが難点だが、メガネと同等の着け心地であるHUAWEI Eyewear 2ならその心配は不要。イヤホンのように、開始前にあわててつける必要もない。
ビデオ会議アプリは、立ち上げた時からHUAWEI Eyewear 2につながっている。音も自然で、長時間着けていても耳が疲れない
また、電話を含む音声通話もHUAWEI Eyewear 2向きの用途と言えるだろう。同機は、テンプル部分のダブルタップや長押し、スワイプで接続したスマホを操作できるが、電話もダブルタップだけで簡単に取ることが可能。特にLINEやFaceTimeのようなビデオ通話の場合、そのまま取ると音がスピーカーから出てしまう。このような時、通常であればイヤホンを装着するが、HUAWEI Eyewearならそのまま応答が可能。身に着けられるアイテムとしての利点が発揮される。
自然と電話に応答でき、急にビデオ通話がかかってきても困らない
こうした用途に加え、筆者は通知の読み上げにもHUAWEI Eyewear 2を活用している。通知の読み上げは対応しているスマホが限られてくるが、「Zenny」などのアプリを入れることで解決できる。筆者の場合、HUAWEI Eyewear 2を接続したのがサムスン電子のGalaxy Z Fold5だったため、「ルーティン」の中の機能として「通知の読み上げ」を利用できた。HUAWEI Eyewear 2を接続した場合のみ、通知の読み上げをオンにするよう設定できた。
Galaxy Z Fold5では、ルーティン機能で通知の読み上げを設定できた。この機能で、HUAWEI Eyewear 2の価値がさらに高まった格好だ
このよさは、何もせずに通知を確認できるところにある。スマホをポケットから取り出す必要がないのはもちろん、スマートウォッチをチェックするために腕を上げなくてもいい。ハンズフリーどころから、一切の動作をすることなく、通知を確認できてしまうのだ。常時身に着けるメガネのため、装着の手間もかからない。通知の見逃しを減らすには、これ以上ないデバイスだ。
読み上げた日本語のイントネーションがやや不自然だったりすることはあるが、どんな内容かは大体把握できる。重要な通知ならスマホを取り出せばいいし、そうでないから無視してもいい。その取捨選択が自然にできるのは、HUAWEI Eyewear 2の魅力だ。ただし、先に述べたようにこの機能はスマホ側に依存するのが難点。サードパーティアプリに頼らず、同じようなことができればよかったのだが……。ファーウェイ自身のアプリが通知の読み上げに対応することを期待したい。
接続にはAI Lifeというアプリを利用するが、残念ながら、通知の読み上げのような機能は実装されていない
音楽鑑賞用のイヤホン代わりにはならなかったHUAWEI Eyewear 2だが、より実用的な用途では、かなり役に立つアイテムだ。スマホの使い方を大きく変える可能性を秘めていると言っても過言ではない。この体験をするためなら、3万円台後半の価格は安いとすら言える。ただし、これはあくまで普段からメガネをかけている立場での印象。元々視力がよかったり、コンタクトレンズを使っていたりすると、メガネをかけることに違和感があるかもしれない。一方で、メガネを普段からかけている人にとっては、何の追加もなく、音が耳元で聞こえるようになる。後者の場合、購入する価値は高い。
【石野’s ジャッジメント】
質感 ★★★★
デザイン性 ★★★★★
着け心地 ★★★★
UI ★★★★
音楽性能 ★★★
バッテリーもち ★★★★
*採点は各項目5点満点で判定
取材・文/石野純也
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。