文化も宗教も異なる国が議論する重要性と難しさ
現地参加する意義としては、セッションの後もスピーカーと話をしたり、参加者同士で議論したり、交流の機会ができることが大きい。参加者の中には民族衣装を着ている人たちも多く、日本にいるとは思えないほど国際色豊かな空気で彩られていた。
様々なテーマのセッションが各会議室で開かれた。(提供:IGF 2023)
海外から参加するサテライト会場も用意されていた。(提供:IGF 2023)
著者は個人的には関心があったAIの話題を中心に、ロボティクス、デジタルヘルスに関するセッションにいくつか参加してみた。技術的な話題もいくつかあったが、どちらかといえばすでにある技術やサービスで生じている問題に対する意見を求めたり、情報を共有したりすることがメインになっていることが多いという印象であった。
特にAIやロボティクスに対して倫理面をどう考えるかという議題がしばしば見られたが、このあたりは文化的、宗教的な背景がからんでくるだけに、議論することがかなり難しいと感じ、それこそがインターネットが今抱えている課題であると実感した。
インターネットを支える様々な組織が出展
会場では小さい規模だが企業や組織が出展する展示エリアも設けられていた。中でもドメイン管理や登録、ネット上のセキュリティ監視、動画配信やオンラインゲームで激増しているデータトラフィックの流通効率化など、インターネットに関連する様々な組織がブースを出しており、どのような活動が行われているのかをあらためて知ることができた。
JPドメイン名の登録と管理を行う日本レジストリサービス(JPRS)
情報通信研究機構(NICT)はインターネットをサイバー攻撃から守る研究などを行っている。
他にも同じように海外でそうした活動を行っている組織やWikipedia、GitHubも出展しており、日本の各キャリアやサービスプロバイダー、Google、Metaといった企業ブースもあったが、例えば、IIJは数年前から進めているカーボンニュートラルデータセンターの取り組みのように、グローバルにアピールできるものであったのが興味深かった。中でもインターネットでのコンテンツ不正利用による海賊版サイト撲滅活動の紹介は海外からの参加者から関心を集めていた。
ヨーロッパのトップレベルドメイン「.eu」を管理する組織も出展
Wikipediaを運営するWikimedia Foundation のブース
IIJはデータセンターの課題である環境負荷の解消に向けた動きを紹介。
後編では今回のIGFで大きく取り上げられた生成AIの議論を中心にレポートする。
取材・文/野々下裕子