開会式に岸田首相がリアルで登壇
国連といえばニューヨークのマンハッタンにある本部ビルに世界各国の代表が集まって、様々な会議を行う組織というイメージがあるが、インターネットに関する課題を議論する「IGF(インターネット・ガバナンス・フォーラム)」を主催していることをご存知だろうか。
ドメインを管理したり、規格を標準化したり、地球上に広がるインターネットの共通ルールを決める活動はいろいろあるが、IGFでは主にインターネットを管理、統制するガバナンスについて議論が行われ、2006年から毎年各国が持ち回りでホスト役を務める形で運営されている。第18回目となる2023年は初めて日本が開催地に選ばれ、国立京都国際会館で10月8日から12日まで5日間開催された。
今回は全体のテーマに「Internet We Want – Empowering All People -(私たちの望むインターネット -あらゆる人を後押しするためのインターネット-)」が掲げられ、178カ国から11,145のステークホルダーが登録し、現地には6200人を超える参加者が集まった。参加が難しい遠隔地域にはサテライト会場も設置され、オンラインでも3000人以上が参加するという過去最大規模での開催となった。
開会式には国立京都国際会館のメインホールは立ち見が出るほど参加者が集まった。
今やインターネットは世界にとってなくてはならないものになっており、経済や政治、選挙から国際紛争まで与える影響は大きくなっている。IGFだけでインターネットのルールが決められるわけではないが、議論に参加して意見を出すことは重要で、国連も他の組織よりできるだけイニシアティブを高めようと動いているのが感じられる。
9日の開会式では国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏がオンラインで開会を宣言し、「デジタル政策を各国でより良く推進し、グローバルサウスと格差を縮めながら、安全にアクセスできるインターネットを提供するための努力が必要だ」と参加者へメッセージを送った。
続く開会のあいさつでは岸田文雄首相がリアルで登壇し、「山積するインターネットの課題解決に向けて、マルチステークホルダー(*1)によるアプローチで安全かつ自由で信頼あるものにしていくことを支持する」とIGFへの賛同を示すと同時に、インターネット政策に力を入れていることをアピールした。
*1:複数の利害関係者という意味で、ここではインターネットに関する意思決定を持ち、利害関係にある国や組織、団体、企業、個人が集まって一緒に議論する運営のことを指す。
参加は無料。300を超えるセッションの内容は全て公開
開会式を含むオープニングセッションでは、電気通信技術の世界標準化を進める国連組織のITU(International Telecommunication Unio)やOECD(経済協力開発機構)の代表をはじめ、各国の政府関係者が登壇し、ノーベル平和賞を受賞したジャーナリストのマリア・レッサ氏による基調講演が行われるなど、国連主催による国際会議らしい雰囲気でプログラムが進められていった。
とはいえ物々しいオープニングはほんの一面で、IGFのプログラムの多くは事前に応募した提案によって構成される。今回は以下の8つをサブテーマに、300を超えるセッションが開かれ、他にもワークショップ、ネットワーキングなど交流と議論を深める場が提供された。
1. AI と先進技術
2. インターネットの分断回避
3. サイバーセキュリティ、サイバー犯罪、オンラインの安全性
4. データガバナンスと信頼性
5. デジタル格差と包括性
6. グローバルなデジタルガバナンスと協力
7. 人権と自由
8. 持続可能性と環境という
ちなみにIGFは参加費無料で誰でも登録できる。セッションは事前予約も不要で入退出も自由。発表を聞くだけでなく、必ず質疑応答の時間が設けられるので議論に参加することもできる。全てオンラインでライブ配信されるのでリモートでも参加でき、同時間に複数行われるため参加できなかったセッションは後日公開されるレポートや動画で内容を知ることができる。