出世しないなら、代わりにFIREできますか?
ここまで読まれた方の中には「おいおい、出世の話からズレてない? 出世したくないだけで生活が貧しくてもいいという話ではないだろ?」とツッコミを入れたくなる人もいるでしょう。回りくどくなりましたが、私が伝えたいのは〝経済面から生活を豊かにするという意味では、出世はコスパがいいぞ〟ということです。
出世しないでも昇給するケースはあると思います。しかし、「役職給」を導入している企業なら、やはり給料を増やすには出世したほうが上昇幅は大きくなるのは自明の理です。ご自身や周りを見渡してみると、年度初めに「これっぽっちしか昇給しなかった」と嘆いている人は意外と多いのではないでしょうか。〝そのままの状態〟で働き続けて、どれくらい収入が増えるのか、定年までシミュレーションしてみると、その緩やかさに落胆してしまうかも。
そして、定年まで会社が倒産しない保証はどこにもありません。ほかにも転勤や家族の介護といったライフスタイルの変化によって、それまでの会社に勤め続けることが難しくなることもあるでしょう。仮につぶしの効かない仕事をしていたとしても、「人をマネジメントする」という管理職としてのスキルを養っていれば、それなりの収入が保証された働き口はあるものです。
「出世したくないから、しないように仕事をする」というのは個人の選択ですから、私から止めるようなことはしません。しかし、もしもの時への備えが難しく、将来の選択肢が少ない状態になる可能性は極めて高いということはお伝えしておきたいです。そして、あなたに〝もしも〟が発生してしまった時に、先ほど触れた「貧すれば鈍する」ということが起きない保証はどこにもありません。
出世して高い報酬を得るということは、必ずしも贅沢をすることが目的ではなく、将来に対するリスクヘッジという側面もあるのです。「将来どうなるかわからないから、とりあえず今稼いで将来に備えるために出世しよう」という考え方があってもいいと思います。
もし出世を望まないのであれば、少なくとも資産運用や副業をするなどして、FIREできるくらいに蓄えを増やしましょう。「それも難しいよ」と感じるならば、責任を負うことに対する恐怖心を少しずつ克服して、出世に対するアレルギーを弱めていくしかないでしょうね。
責任の問題ばかりに目が行きがちだが、その対価としてもらえる報酬に目が向くことは意外と少ない。現代日本においては、サラリーマンが収入を増やす手っ取り早い手段は「出世」なのだ。
犯罪学教室のかなえ先生
元少年院の先生で、犯罪心理学や教育犯罪学の知見からニュースなどを解説するVTuber。近著に『もしキミが、人を傷つけたなら、傷つけられたなら』。
©夢乃とわ SDイラスト/紀羅わたり
※「教えてかなえ先生」は、雑誌「DIME」で好評連載中。本記事は、DIME12月号に掲載されたものです。