英語由来のビジネス用語には、幅広い分野でさまざまな意味で使われている言葉がある。「アセスメント」もその一つだ。新聞やネットニュース等で目にする機会は多いが、分野ごとにまったく異なる内容で使われる場合は、それぞれの意味を大まかにでも押さえておくと役に立つ。
そこで本記事では、さまざまな分野で実践される「アセスメント」の意味と具体的内容について解説する。
アセスメントは「評価」を意味するビジネス用語
「アセスメント」の由来は、英語の“assessment”。人や物の評価・査定、もしくは税額・評価額などを意味する言葉で、主にビジネスの人材分野や徴税関連の用語として使われる。
日本では、英語と同じく「人・物の評価」という意味のビジネス用語として使われるほか、環境分野、医療・福祉分野といった多方面で「アセスメント」が使われる。分野によって言葉の定義や具体的な内容が異なるため注意が必要だ。
■分野によって複数の意味に分かれる「アセスメント」
ビジネス分野、特に人材領域での「アセスメント」は、別名を「人材アセスメント」「ヒューマン・アセスメント」とも呼ばれる。その人物の能力や適正を客観的に把握し、組織の中で適材適所に配置するための評価ツールを指すことが多い。
また、環境分野における「環境アセスメント」は、「環境影響評価」とも呼ばれ、特に大規模な開発事業を行う際に環境に与える影響を予測・評価することを指す。
一方、医療・看護分野や、福祉・介護・保育分野でも「アセスメント」が実施されている。これらの分野では主に、患者・利用者・子供の状態を把握し、業務をスムーズに行うための情報の収集・整理・分析・評価を指す。
知っておきたい分野別「アセスメント」 の意味
このように、各分野の「アセスメント」は、共通して評価・査定といった意味を持つものの、評価の具体的な内容や活用方法はそれぞれ異なっている。アセスメントの意味を取り違えることがないよう、分野ごとのアセスメントについて押さえておこう。
■ビジネスの人材領域で行われる「ヒューマン・アセスメント」
人材領域のアセスメント(ヒューマン・アセスメント)は、企業が従業員の職務適正(能力、人柄、スキル等)を事前に査定・評価することを指す。アセスメントに沿って、その人材に適した配置や育成などが行われる。
■地球環境への影響を精査する「環境アセスメント」
環境アセスメントは、一定規模以上の開発事業を行う際に、環境に対して適正な配慮をする目的で実施される。事業者があらかじめその事業の環境に与える影響を予測・評価し、住民や自治体の意見も聞くとともに、専門的な立場から事業の内容を審査する。環境調査は原則的に事業者側が行うが、環境アセスメントを専門とする外部機関と連携して行われるケースもある。
■看護・医療分野での「アセスメント」は看護計画を立案する際のスタート地点
医療分野での「アセスメント」は、看護計画を立てる際に、患者の情報を収集・分析・評価することを指す。患者の健康上の問題を把握するために行われており、患者本人と対話することでわかる「主観的情報(頭痛、食欲不振、気がかりなど)」と、数値化・視覚化が可能な「客観的情報(バイタルサイン、検査結果、外傷や皮膚の状態など)」の2種類の情報が求められる。アセスメントに必要な情報を過不足なく収集するための「アセスメントスキル」は、看護師業務の中でも重要な能力となる。
■介護分野の「アセスメント」はケアプラン作成に不可欠
介護分野でも医療現場と似た「アセスメント」が行われる。介護サービス利用者の状態や周辺情報、利用者本人の希望や解決すべき課題を洗い出し、「アセスメントシート」にまとめた上でケアプランの作成に反映させる。介護におけるアセスメントは、ケアマネージャーが担当するケースが多い。
■保育分野でも活用が進む「アセスメント」
保育分野での「アセスメント」も、医療・介護分野のアセスメントに類似している。保育者が子供への適切な支援を行うために、子供の基本情報(健康状態や生活環境)、生活の記録、発達状況などをまとめ、介護分野と同様に「アセスメントシート」に記載する。ただし、アセスメントシートという呼び名は一般的でなく、保育施設ごとに「個人記録」など呼び名が決まっているケースが多い。
保育分野におけるアセスメントは、子供の発達支援や小学校への引き継ぎ、虐待の早期発見などに活用される。
※データは2023年11月中旬時点のもの。
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文/編集部