あなたは人から「なにが言いたいのかわからない」と言われてしまったり、メールの文章が長すぎて肝心な要件が伝わっていなかったという経験はありませんか? ついいろいろ言いたくなってしまい、伝わらないモヤモヤを抱えていませんか?
実は、このような悩みは「ひと言でまとめる技術」の手にかかればすべて解決してしまいます。ポイントはたった2つ。「捨てる」それから「まとめる」。このコツさえつかめば、伝わり方が劇的に変わります!
言葉をまとめるプロが明かす、言語化と伝え方の究極のスキルをまとめた書籍『ひと言でまとめる技術 言語化力・伝達力・要約力がぜんぶ身につく31のコツ』の中から一部を抜粋・編集し、雑談でたくさんモヤモヤを解消するヒントをまとめました。
依頼文作成のチェックポイント
[ポイント1]なぜ依頼をしたいのか、理由を明確に
依頼文を書くときにもっとも必要なのは、「なぜ、あなたでなければいけないのか」をはっきり書くことです。
私がこれまでいただいた講演依頼にも、明確な依頼理由がなく、「なんとなく広告クリエイティブ系で講演をよくやっていそうな人だから」といった、自分でなくてもいいような頼み方をされたことがありました。
もちろんむげに断ったりはしませんが、そういう頼み方をしてくる相手はたいてい運営が雑だったり、講演中にもトラブルが起きたりするものです。いざ会場に行ったら頼んだ機器やモニターがまったく用意されていなかったのも、こういうタイプの主催者の方でした。
逆に私がどなたかに講演を頼むときは、依頼理由の記述にはじっくり時間をかけるようにしています。本当に頼みたいと願っていると、自然に熱が入って筆が走ります。
[ポイント2]相手のメリットとこちらの熱意を提示
その依頼を受けたら相手がどういうメリットを得られるか、を書きましょう。
たとえば社内業務において部下に仕事を頼むときは、「業務命令です」と頭ごなしに伝えるのは避けましょう。「このプロジェクトはあなたの成長につながる」「将来のために、大きな仕事に取り組んでみてほしい」というように、相手のメリットを考えて頼むのが、いい伝え方です。
また、同時に熱意を示すことも大切です。
「ほかの誰でもない、あなたにやってほしい」という気持ちが、相手の背中を押してくれます。必要以上に温度を上げなくてもいいですが、淡々と依頼したとしても「あなただから」という意図を入れてください。
あなたには、部下に頼むことで「仕事が円滑に進む」「プロジェクトリーダーとしての責務を果たせる」といったメリットがあるはずです。ならば、相手にもメリットがあってこそ、Win−Winの関係になれると思いませんか?
もうひとつ、外部に依頼をするときは、「相手のメリット= 目的×熱意×謝礼」だと考えましょう。社内の人にお願いするのとは違って、外部の相手は持っている時間を商品に変えて売っています。その対価として、報酬を支払います。
10年以上前のことですが、「未来ある高校生に『言葉のプロから贈るメッセージ』というテーマで講演をお願いします」という依頼をされたことがあります。
しかし、その高校は東海地方にあり、しかも提示された謝礼が2時間で5000円でした。関東に住んでいる私には、交通費だけでマイナスになってしまいます。テーマ自体はおもしろそうだと思いましたが、さすがに講義の準備にもそれなりの時間を使うことを考え、お断りしました。
ただ、世の中には「おもしろいことならタダでもやる」という人は一定数います。また、「あなたの話をどうしても聞きたい」という熱意に弱い人もいます。
何度も頼まれるのでつい引き受けてみたら、とてもいい講演会になった、なんてケースもあります。当時はリモート会議が一般的ではありませんでしたが、いまなら遠隔で講演も可能です。
もしあなたが誰かに何かを頼むときは、薄謝しか用意できなくても、その相手が興味を示すような熱意と説得力のある目的を設定できたら、メリットの有無を飛び越えて引き受けてくれるかもしれません。それも人の心を動かすための作戦と言えます。
もちろん、「謝礼が見合わない」ことを理由に断られたら、さっさと諦めてください。
ただし、相手から「+αいくらなら可能」といった申し出があった場合は、予算を検討しましょう。
[ポイント3]期限を伝える
「そんなの当たり前でしょ」と思うかもしれませんが、意外と「返答の期限」を書いていない依頼文は多いです。
文末に「よろしくご検討ください」とか「お手すきなときにお返事をください」などと書かれているような曖昧な依頼は、瞬殺で後回しにされます。
ロードマップを示さない依頼は、相手の時間を奪うだけです。
期限をはっきりと設けて、依頼を完成させてください。
〈例〉
コピーライターが、著名な演出家に講演依頼をする場合。
1 依頼をしたい理由を明確にする。
2 相手のメリットと、こちらの熱意を提示する。
3 期限を伝える。
これらを踏まえて、こんな依頼メールにしてみました。
簡潔ながら、こちらの思いも伝えつつ、かつ相手が判断しやすいよう、日時や予算感、返事の期限も入れ込んだ内容にまとめることができました。
依頼文は、受け取る相手の気持ちになって作成することが大切です。
★ ★ ★
いかがだったでしょうか?
「ひと言でまとめる技術」はビジネスパーソンの悩みだけを解決する技術ではありません。話をしてもパートナーに言葉が届いていないと感じている方。自分は面白いと思ったのに、友人の反応はイマイチ。ちゃんと伝えたつもりなのに間違った料理を出されてしまった。こんな悩みも解決する伝え方のコツも満載です。
「伝え方」を追求し続けてきた著者が、すべての「伝え方」で悩む人たちに手にしてほしい技を是非、書店でチェックしてみてください。
『ひと言でまとめる技術
言語化力・伝達力・要約力がぜんぶ身につく31のコツ』
著/勝浦雅彦/アスコム
勝浦雅彦
(かつうら・まさひこ)
コピーライター。法政大学特別講師。宣伝会議講師。
千葉県出身。読売広告社に入社後、営業局を経てクリエーティブ局に配属。その後、電通九州、電通東日本を経て、現在、株式会社電通のコピーライター、クリエーティブディレクターとして活躍中。また、15年以上にわたり、大学や教育講座の講師を務め、広告の枠からはみ出したコミュニケーション技術の講義を数多く行ってきた。クリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリスト、ADFEST FILM 最高賞、Cannes Lions など国内外の受賞歴多数。著書に『つながるための言葉』(光文社)がある。