DIME MAGAZINE
あなたは人から「なにが言いたいのかわからない」と言われてしまったり、メールの文章が長すぎて肝心な要件が伝わっていなかったという経験はありませんか？ ついいろいろ言いたくなってしまい、伝わらないモヤモヤを抱えていませんか？
実は、このような悩みは「ひと言でまとめる技術」の手にかかればすべて解決してしまいます。ポイントはたった２つ。「捨てる」それから「まとめる」。このコツさえつかめば、伝わり方が劇的に変わります！
言葉をまとめるプロが明かす、言語化と伝え方の究極のスキルをまとめた書籍『ひと言でまとめる技術 言語化力・伝達力・要約力がぜんぶ身につく31のコツ』の中から一部を抜粋・編集し、雑談でたくさんモヤモヤを解消するヒントをまとめました。
【さあ、ひと言でまとめよう】相手の時間を奪わないために、簡潔な表現を身につける
まず法則をお伝えする前に、大事なお願いをもう一度言います。
勇気を持ってまとめてください。
日本人はとにかく「はっきりと物を言う」ことが苦手です。だから日本語もつい曖昧な表現になり、それを「察する」ことが美徳と考えている人もいます。
しかしこの本の目的は、「相手に敬意を持ち、時間泥棒にならないこと」です。
あなたが勇気を持ってひと言にまとめることが、相手のためにもなるのです。
それでは、実際にひと言にまとめるために必要な7つの法則をお伝えします。
［法則6］文末のリズムをよくする
留学してもいないし、帰国子女でもないのに、流暢な英語を話す知人がいます。
その方に「英語をどうやって習得したのですか？」と聞いたところ、「大事なのは単語とリズム。文法は苦手なので、あまり勉強したことがない」と言っていました。
最初はよく意味がわかりませんでしたが、別の英語の達人に「ビートルズを聴くだけでだいたい英語はわかるよ」と言われたとき、なんとなく理解できました。
話し言葉も書き言葉も、単語と文節によってできています。
そして、人間にとってちょうど心地よいリズムが存在するのです。
「タイポグリセミア現象」をご存じでしょうか？
人間が一定のリズムで言語を読めていれば、そこに多少の抜けや間違いがあっても脳が勝手に補完して読んでしまう現象のことを言います。
ためしに、声に出して次の言葉を読んでみましょう。
トウキョウ
ナゴヤ
キョウト
オオサカ
コウベ
ハタカ
もしかして最後の単語を「ハカタ」と読みませんでしたか？
じつは、書いてあるのは「ハタカ」なんです。リズムに沿って読むと、脳が『地名＋カタカナ』という法則に慣れて、勝手に変換してしまうのです。
言語は一定の心地よいリズムで読まれるべきというのが、私の考え方です。
とくに、文末は文章全体の心地よさを左右します。
「1文1メッセージ法」や「言い切り法」は文章を端的にするにはもってこいの法則ですが、あまり厳密にやろうとすると、～た、～る、～だ、のような単語の連続になりがちです。
作家、谷崎潤一郎は、「日本語のセンテンスの締めは、限定され単調になりがちである」と述べています。
●ラーメン五郎では、トッピングにモヤシ、ニンニク、アブラ、カラメをつけることができます。ご希望があれば、トッピングをマシマシにすることができます。ただし、食べ残しには追加料金をいただくことをご了承いただきますようお願い申し上げます。
リズムが悪くて回りくどく、何より語尾に「～ます」という言葉が続いています。
法則3の同語言い換え省略法は、文末にも通じる考え方です。
●文末に連続して同じ言葉を使わない。
●省略や体言止めを用いてもよし。
これらを意識して文末を言い換え、リズムをつくりましょう。
●ラーメン五郎では、トッピングにモヤシ、ニンニク、アブラ、カラメをつけられます。ご希望があれば、トッピングをマシマシに！ ただし、食べ残しには追加料金をいただくことをご了承ください。
文章のリズムをよくするもっとも簡単な方法は、「声に出して読むこと」です。音読は、リズムが悪いと口が嫌がります。
大きな声でなくてもいいので、口と耳で文章のキレをアップさせましょう。
〈練習問題〉
次の文章を、「リズム法」で、聞いていて心地よいものにしてみましょう。
●アップル航空をご利用いただき、誠にありがとうございます。パイロットがマニュアルを読み終えたら離陸させていただきます。トイレは禁煙とさせていただきます。罰金は1000ドルいただきます。それだけあればビジネスクラスに乗れるかと存じます。なお、ユーモアが嫌いな方は出口へお進みいただくようお願い申し上げます。
↓
（修正例）
●アップル航空をご利用いただき、誠にありがとうございます。パイロットがマニュアルを読み終えたら離陸いたします。トイレは禁煙、罰金は1000ドル。でも、それだけあればビジネスクラスに乗れますよね？ なお、ユーモアが嫌いな方は出口へお進みくださいませ。
堅苦しい説明やアナウンスほど、小気味いい内容とリズムを心がけましょう。
★ ★ ★
いかがだったでしょうか？
「ひと言でまとめる技術」はビジネスパーソンの悩みだけを解決する技術ではありません。話をしてもパートナーに言葉が届いていないと感じている方。自分は面白いと思ったのに、友人の反応はイマイチ。ちゃんと伝えたつもりなのに間違った料理を出されてしまった。こんな悩みも解決する伝え方のコツも満載です。
「伝え方」を追求し続けてきた著者が、すべての「伝え方」で悩む人たちに手にしてほしい技を是非、書店でチェックしてみてください。
『ひと言でまとめる技術
言語化力・伝達力・要約力がぜんぶ身につく31のコツ』
著／勝浦雅彦／アスコム
勝浦雅彦
（かつうら・まさひこ）
コピーライター。法政大学特別講師。宣伝会議講師。
千葉県出身。読売広告社に入社後、営業局を経てクリエーティブ局に配属。その後、電通九州、電通東日本を経て、現在、株式会社電通のコピーライター、クリエーティブディレクターとして活躍中。また、15年以上にわたり、大学や教育講座の講師を務め、広告の枠からはみ出したコミュニケーション技術の講義を数多く行ってきた。クリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリスト、ADFEST FILM 最高賞、Cannes Lions など国内外の受賞歴多数。著書に『つながるための言葉』（光文社）がある。
最新号
