あなたは人から「なにが言いたいのかわからない」と言われてしまったり、メールの文章が長すぎて肝心な要件が伝わっていなかったという経験はありませんか? ついいろいろ言いたくなってしまい、伝わらないモヤモヤを抱えていませんか?
実は、このような悩みは「ひと言でまとめる技術」の手にかかればすべて解決してしまいます。ポイントはたった2つ。「捨てる」それから「まとめる」。このコツさえつかめば、伝わり方が劇的に変わります!
言葉をまとめるプロが明かす、言語化と伝え方の究極のスキルをまとめた書籍『ひと言でまとめる技術 言語化力・伝達力・要約力がぜんぶ身につく31のコツ』の中から一部を抜粋・編集し、雑談でたくさんモヤモヤを解消するヒントをまとめました。
【さあ、ひと言でまとめよう】相手の時間を奪わないために、簡潔な表現を身につける
まず法則をお伝えする前に、大事なお願いをもう一度言います。
勇気を持ってまとめてください。
日本人はとにかく「はっきりと物を言う」ことが苦手です。だから日本語もつい曖昧な表現になり、それを「察する」ことが美徳と考えている人もいます。
しかしこの本の目的は、「相手に敬意を持ち、時間泥棒にならないこと」です。
あなたが勇気を持ってひと言にまとめることが、相手のためにもなるのです。
それでは、実際にひと言にまとめるために必要な7つの法則をお伝えします。
[法則1]1文にはひとつのメッセージしか入れない
話しているうちに何を伝えたかったのかわからなくなる。
聞いているほうも、最初のテーマを忘れてしまう。
そんな経験が、きっとあなたにもあるはずです。
日本語は「膠着語」と言われていて、名詞や動詞などの自立語に、補助となる機能語の助詞や助動詞がくっついているので、「果てしなくだらだらとした文章」が書けてしまいます。
たとえば、
●今日は電車で出かける予定でしたが、雨が降り出したので、みんなで行き先を遊園地から映画館にしようと話したところ、ジブリの新作が上映されていることを思い出し、行くことにしました。
この読みづらい文章を分解すると、
(1)今日は電車で出かける予定だった。
(2)雨が降り出した。
(3)行き先を遊園地から映画館にしようと話した。
(4)ジブリの新作が上映されていることを思い出した。
(5)みんなで行った。
と、5つの内容が入っていることがわかります。
こういった場合は、1文にはひとつのメッセージしか入れないという法則を用いることで、グッとわかりやすくなります。
実際に書き換えてみましょう。
●今日は電車で出かける予定。ところが雨が降り出した。ジブリの新作が上映されていることを思い出し、行き先を遊園地から映画館へ変更した。
だいぶすっきりしました。
解説すると、(5)の「みんなで行った」は「目的地を変更する=そこに行く」ことなので省略しています。
ちなみに人が理解しやすい文章の長さは、40字から60字程度と言われています。
ビジネス文章や説明を意図とする文章は、この字数を目安にしてみてください。
ただし、文学や随筆など、作家性の強い文章はこの限りではありません。
たとえば庄司薫さんの芥川賞受賞作『赤頭巾ちゃん気をつけて』では、
ぼくには、このいまぼくから生まれたばかりの決心が、それがまるで馬鹿みたいなもの、みんなに言ったらきっと笑われるような子供みたいなものであっても、それがこのぼくのもの、誰のものでもないこのぼく自身のこんなにも熱い胸の中から生まれたものである限り、それがぼくのこれからの人生で、このぼくがぶつかるさまざまな戦い、さまざまな苦しい戦いのさ中に、必ずスレスレのところでぼくを助けぼくを支えぼくを頑張らせる大事な大事なものになるだろうということが、はっきりとはっきりと分ったように思えたのだ。
といった具合に、延々と続く文体が特徴です。
これは「わかりづらい」のではなく、字面も含めて「感じること」が目的の文章であり、小説なのでOKです。
言葉はあくまで目的があって、初めて理想的なかたちができます。
〈練習問題〉
次の文章を、「1文1メッセージ法」で伝わりやすくまとめてみましょう。
●出張費が増え続けていますが、すべての出張にチームで行く必要はないので、とくに高額な海外出張に関しては、プロジェクトリーダーと必要最低限の人数で行くようにしてください。
↓
(修正例)
●出張費が増え続けています。すべての出張にチームで行く必要はありません。とくに高額な海外出張は、プロジェクトリーダーと必要最低限の人数で行くようにしてください。
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いかがだったでしょうか?
「ひと言でまとめる技術」はビジネスパーソンの悩みだけを解決する技術ではありません。話をしてもパートナーに言葉が届いていないと感じている方。自分は面白いと思ったのに、友人の反応はイマイチ。ちゃんと伝えたつもりなのに間違った料理を出されてしまった。こんな悩みも解決する伝え方のコツも満載です。
「伝え方」を追求し続けてきた著者が、すべての「伝え方」で悩む人たちに手にしてほしい技を是非、書店でチェックしてみてください。
『ひと言でまとめる技術
言語化力・伝達力・要約力がぜんぶ身につく31のコツ』
著/勝浦雅彦/アスコム
勝浦雅彦
(かつうら・まさひこ)
コピーライター。法政大学特別講師。宣伝会議講師。
千葉県出身。読売広告社に入社後、営業局を経てクリエーティブ局に配属。その後、電通九州、電通東日本を経て、現在、株式会社電通のコピーライター、クリエーティブディレクターとして活躍中。また、15年以上にわたり、大学や教育講座の講師を務め、広告の枠からはみ出したコミュニケーション技術の講義を数多く行ってきた。クリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリスト、ADFEST FILM 最高賞、Cannes Lions など国内外の受賞歴多数。著書に『つながるための言葉』(光文社)がある。