あなたは人から「なにが言いたいのかわからない」と言われてしまったり、メールの文章が長すぎて肝心な要件が伝わっていなかったという経験はありませんか? ついいろいろ言いたくなってしまい、伝わらないモヤモヤを抱えていませんか?
実は、このような悩みは「ひと言でまとめる技術」の手にかかればすべて解決してしまいます。ポイントはたった2つ。「捨てる」それから「まとめる」。このコツさえつかめば、伝わり方が劇的に変わります!
言葉をまとめるプロが明かす、言語化と伝え方の究極のスキルをまとめた書籍『ひと言でまとめる技術 言語化力・伝達力・要約力がぜんぶ身につく31のコツ』の中から一部を抜粋・編集し、雑談でたくさんモヤモヤを解消するヒントをまとめました。
【ひと言でまとめるために、捨てる】「捨てる技術」を身につけて伝え方をアップデートする
[問題]ビジネスの目標達成のためにはどちらが大事でしょう?
1 何をするか決める
2 何をしないか決める
答えは2の「何をしないか決める」です。
ご存じの方もいるかもしれませんが、スティーブ・ジョブズが言い残したと言われている言葉です。
では、なぜ何をしないか決めることが大事なのでしょうか?
あなたはtodoリストをつくってはみたものの、優先順位をつけられないまま時が過ぎ、気づけば一日が終わってしまったという経験はないでしょうか?
どう考えても一日ではできないことなのに、つい詰め込んでやろうとしてしまう。夏休みの宿題と同じです。
人間は何かをしようとするとき、「いまの状況に何を足していくか?」から入りがちです。そのほうがプラスの行動に思えるし、「やっている感」が得られるからです。
ですが、この考え方で選択肢を増やしていくと、たいてい混乱します。
人間には、持っている時間にも行動のエネルギーにも、限りがあるからです。
するべきでないことは、視界から消してしまいましょう。
それによって、本当にやらなければならないことに注力できるようになります。
営業職だったころ、創業して間もないとあるベンチャー企業から電話がかかってきたことがありました。「新聞広告を出稿したいが、設立したばかりで実績がないので相談したい」といった内容でした。
先輩とともにさっそくその企業に向かったところ、プリント1枚の会社案内を見せられました。その事業目的の欄には「通信」「建設」「金融」「リサイクルショップ」「英会話教室」……挙げ句の果てには「占い」「パワーストーンの販売」といった項目までが書かれていました。
帰り道に先輩が、「あの会社は、おそらく飛ぶ(潰れる)ぞ。取引は見送ったほうがいい」とつぶやきました。1年後、その会社は影も形もなくなっていました。
「あれもこれもできます」というのではなく、「弊社は◯◯のプロです」と言ってもらうほうが信用できると思った瞬間でした。
■「捨てる」と「残す」を見極める
私は企業から預かった膨大な経営戦略、商品開発、市場調査などの資料を徹底的に読み込み、その99.99%を捨て、ほんの数行のメッセージに凝縮する仕事をしています。
クライアントは自社や商品に思い入れがありますから、「あれも言いたい。これも入れたい。その情報にも触れないとほかの部署が怒る」といった事情を抱えています。
私はその際、いったん事情をのみ込みつつ、「多くを言おうとするとひとつも伝わらなくなります」と、利用者の代弁者となって正論を伝えます。
まずは勇気を持って、「捨てる」ことからあなたの仕事を変えていきましょう。
この章では、ひと言でまとめるためのシンプルな技術を、「捨てるもの」「残すもの」という視点から問題形式でお伝えします。
[問題]取引先から「この広告案のキャラクターは、著作権上問題ないのでしょうか?」と質問を受けました。A・Bどちらが適切な返答でしょうか?
〈A〉おそらく大丈夫かと思いますが、本日は例としてご提案したまでで、持ち帰って至急確認します。
〈B〉はい、著作権上は問題ありません。あとは、表現上問題ないかは、どのメディアで使用するかが決まったら確認いたします。
[捨てる技術その7]「曖昧な返答」を捨てる
プレゼンや会議の場で、「答えづらい質問」は容赦なく飛んできます。その際に、即答しようとするあまり、焦って曖昧な返答になってしまい、結果、相手の信頼を失ってしまうことがあります。
かつて企画提案の場で、「この企画は予算内で収まるのか」とクライアントに問われ、「収まるはずです。いや、収めてみせます!」と即答した人がいました。ですが、その企画のことをきちんと詰めておらず、あとから予算にハマっていなかったことが発覚。クライアントの機嫌を損ねるという事態になりました。
このシチュエーションは、じつはよく見る光景だったりします。
人はついプレッシャーを回避するために、苦し紛れに曖昧な返答で逃げてしまうことがあります。そうならないためには、できる限り「想定問答」を用意することが大切です。
Aについて解説します。
企画というものは、すべてをかっちりと決めて提案することが難しい代物です。「まだ存在しないもの、前例のないもの」に仮の構成を考え、値札をつけるわけですから、不確定要素ばかりとも言えます。
だからこそ、想定問答が必要になります。想定問答を効果的につくる秘訣は、「自分のなかに、鋭く突っ込むもう一人の自分を持つこと」です。
この場合、キャラクターが企画の提案に使われているのでしたら、
●そもそも、そのキャラクターは使用可能なのか
●使用可能なら、使用料はいくらか
●作者の了解は必要なのか
このくらいはすぐに頭に浮かびます。さらに、
●このキャラクターじゃなくてほかの候補はないのか
●オリジナルでキャラクターをつくることは可能なのか
●キャラクターを使うのとタレントを使うのは、どっちがいいのか
こういったことも、クライアントと自分の考えを重ね合わせたら、どんどん「ツッコミ」が浮かんでくるはずです。
もちろん、これらすべてを企画提案前に確認するのは難しいと思います。ですが、クライアントは、あなたとプレゼンの場で世間話をしたいわけではないのです。
ならば事前に想定問答を用意しておけば、質問にも臨機応変に対応できるはずです。
●相手の気持ちを想像して答えを用意する
正解であるBの返答では、まず質問に対して「即答できる部分と、できない部分があること」を示すために「~は問題ありません」と伝えています。
それによって、しっかり準備をしてきたことを感じさせつつ、「しかし、実現に関してはこの点に確認の必要があります」とひと言続けることで、「曖昧さ」を回避しています。
「自分のなかに、鋭く突っ込むもう一人の自分を持つ」とは、結局、「相手の立場に立って、相手の気持ちを想像して答えを用意する」ということなのです。
手塩にかけたあなたの企画が、曖昧さのなかで誤解されることのないように、頭のなかで想定問答を繰り返して説明に臨みましょう。
【まとめ】相手からの信頼を得るために、「曖昧な返答」を捨てる。
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いかがだったでしょうか?
「ひと言でまとめる技術」はビジネスパーソンの悩みだけを解決する技術ではありません。話をしてもパートナーに言葉が届いていないと感じている方。自分は面白いと思ったのに、友人の反応はイマイチ。ちゃんと伝えたつもりなのに間違った料理を出されてしまった。こんな悩みも解決する伝え方のコツも満載です。
「伝え方」を追求し続けてきた著者が、すべての「伝え方」で悩む人たちに手にしてほしい技を是非、書店でチェックしてみてください。
『ひと言でまとめる技術
言語化力・伝達力・要約力がぜんぶ身につく31のコツ』
著/勝浦雅彦/アスコム
勝浦雅彦
(かつうら・まさひこ)
コピーライター。法政大学特別講師。宣伝会議講師。
千葉県出身。読売広告社に入社後、営業局を経てクリエーティブ局に配属。その後、電通九州、電通東日本を経て、現在、株式会社電通のコピーライター、クリエーティブディレクターとして活躍中。また、15年以上にわたり、大学や教育講座の講師を務め、広告の枠からはみ出したコミュニケーション技術の講義を数多く行ってきた。クリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリスト、ADFEST FILM 最高賞、Cannes Lions など国内外の受賞歴多数。著書に『つながるための言葉』(光文社)がある。