ワールドコイン(WLD)
7月24日にデビューした「ワールドコイン(WLD)」は、瞳の虹彩データを記録し、認証に使用できる機能を持つ暗号資産だ。生成AI「ChatGPT」の生みの親で、OpenAI社CEOのサム・アルトマン氏らが、ベーシックインカムの実現を狙って立ち上げたことで話題を呼んでいる。
実店舗などに設置された虹彩スキャン装置を使ってユーザー登録し、「World ID」というデジタルID機能が利用できる。法学者で、内外の金融規制に詳しい野村総合研究所の大崎貞和さんはこう分析する。
「オンラインでの給付金手続きなどでの認証に活用できれば、ロボットによる不正を排除できるでしょう。使用には虹彩データが必要なので、ほかの暗号資産で問題になっているような犯罪による送金も抑止できる可能性があります」
一方で「虹彩データは個人情報に当たるのか?」といった議論はまだ結論が出ていない。
「金融規制の論点でも宙に浮いている部分があります。現状は配当金を支払う機能を持たないので『有価証券』ではないとされ、金融当局による規制・排除の動きが見られません。が、今後どうなるかはわからない。動向が注目されているのは確かでしょう」(大崎さん)
生体認証データとの紐づけが犯罪やマネーロンダリングの抑止力になることは大きなメリット。政府が発行するデジタル通貨「CBDC」にも同機能が取り込まれるかもしれない。
眼球の虹彩データをスキャンするとワールドコイン(WLD)がもらえる
Orb(オーブ)という専用虹彩スキャン装置を使って虹彩登録をする。日本では東京・渋谷/新宿での設置されている。
ワールドコインアプリの利用者は月間170万人まで急増中
正式開始からユーザー数は右肩上がりだが、虹彩登録でもらえるWLDの価格は1WLD=約200円前後(2023年9月22日現在)で推移している。
取材・文/久我吉史