地域連携と環境整備も空飛ぶクルマ普及の鍵に
ただ、商用化実現で重要なのは性能だけではない。何よりも不可欠なのが、機体の型式証明、航空運送事業の許可である。
「一般的な航空機はこれまで培ってきた経験や技術で、安全性を予測することができます。しかし、eVTOLという規格自体がこれまでなかったもの。機体の開発競争が加速しているとはいえ、経験値は圧倒的に少ない。そうした状況の中で、現在の航空機と同様の安全性を満たすことを証明し、安定した品質で生産できる体制を確保するというのは、非常に高いハードルなのです」(前出・中村代表)
法整備も進んでいる。2022年12月、国土交通省は、無人航空機の飛行形態を、無人地帯における目視外飛行「レベル3」から、有人地帯における目視外飛行が可能になる「レベル4」まで引き上げた。これにより、人が住んでいる地域での目視外飛行が認められるようになった。もちろん、環境整備には自治体の理解と連携を欠かすことはできない。
商用化実現の前に立ちはだかる大きな課題として中村代表は〝離発着場の拡充〟と〝充電インフラの整備〟の2つを挙げる。
都市部の離発着場整備においては、ビルの屋上の活用を想定している。そこでヘリポートの出番となるわけだが、空飛ぶクルマが普及した際は、複数機が駐機できるスペースを新たに確保する必要がある。充電のインフラにおいては、離発着場での充電環境も重要で、当面は一回フライトするたびに30分~1時間の充電時間が必要になると想定される。超急速充電を整備して充電時間を短縮する方法もあるが、高圧電流を流す必要があるなど課題は尽きない。
「もうひとつ、空飛ぶクルマの自律飛行を実現するためには、運航管理と堅牢な通信環境が不可欠です。クルマの自動運転の進展と同様、空の世界でもそういった整備が進むことで、本当の意味での空飛ぶクルマの実装が始まるのではないでしょうか」(同)
政府が推進する「空の移動革命」ロードマップ
昨年3月に政府が公開した、空飛ぶクルマ商用化に向けたロードマップ。2025年開催予定の大阪・関西万博を皮切りに、商用運航に向けた動きが全国で加速する。
万博上空を飛ぶ4社の機体が商用化の狼煙に
大阪・関西万博で、日本初となる空飛ぶクルマの商用運航を予定。関西空港や神戸空港と万博会場間で来場者を輸送するほか、会場周辺や瀬戸内海を含む地域での遊覧飛行も検討。
Joby Aviation「Joby S4」(米国)
運用会社:ANA 定員:5人乗り 機体タイプ:推力偏向
Volocopter 「VC2-1」(ドイツ)
運用会社:JAL 定員:2人乗り 機体タイプ:マルチコプター
Vertical Aerospace「VA1-100」(英国)
運用会社:丸紅 定員:5人乗り 機体タイプ:推力偏向
SkyDrive「SD-05」(日本)
運用会社:SkyDrive 定員:3人乗り 機体タイプ:マルチコプター