〝空飛ぶクルマ〟と呼ばれているが、道路を走るわけではなく、究極的には自律飛行を目指す、乗用ドローンのことを指す。お披露目まで2年を切った次世代モビリティーの未来を展望する。
官民体制で推進する次世代モビリティー
無人航空機であるドローンは、ここ数年で身近な存在になった。趣味で操縦をする、ダイナミックな景色を撮影するといったプライベートな楽しみだけではない。農薬・肥料の散布や地図の制作、警備、インフラ点検、また昨年はセブン-イレブン・ジャパンがANAと共同で、コンビニエンスストアがない離島へ、スマホのアプリで注文した商品を島の指定された場所に配送する実証実験を実施したことが話題になった。ドライバーの人手不足が懸念される2024年問題の解決策のひとつとしてドローンの活用が期待されているのだ。
そしてこのドローンに、さらなる進化をもたらすと目されているのが、政府が主導する空飛ぶクルマ構想だ。空飛ぶクルマは、日常の移動スタイルを変える可能性を秘めた技術であり、2025年の大阪・関西万博の目玉として世界中から注目を集めている。空飛ぶクルマを簡単に説明すれば〝人が乗ることができるドローン〟だ。ヘリコプターのように燃料を使って飛ばすのではなく、ドローン同様にバッテリー駆動の電動で飛ばすが、電動化したヘリコプターと言い換えても差し支えないだろう。
昨年10月、ANAとセブン-イレブンはドローン配送サービスの本格運用に向けて実証実験を実施した。
オンデマンド飛行は10年先の未来を視野に
政府の構想によれば、万博を皮切りに空飛ぶクルマの商用化に向けた動きが加速するという。実際の状況はどうか? 2014年より空飛ぶクルマの開発に動き出した人物であり、空飛ぶクルマの運航事業者のひとつであるSkyDrive社と機体を共同開発するDream On(旧CARTIVATOR)の中村翼代表に話を伺った。
中村代表によると、空飛ぶクルマの正式名称は「電動垂直離着陸型無操縦者航空機(eVTOL)」といい、ドローンのように垂直に上昇してから前へ進む運航方式をとる。高度はドローンよりも高い上空150m以上が最低要件で、都心部では建物から300m上空での運用が求められているという。
また、駆動音が静かであることも特徴としており、日常生活を送る中で、上空を飛んでいることを気づかせない程度の騒音を想定して開発が進んでいる。
空飛ぶクルマの商用化が実現し、一般的なモビリティーとして普及したあかつきには、タクシーと比べて運賃は1.5倍、移動時間は5分の1程度に短縮されると予想。2030年頃には空飛ぶクルマが電車やタクシーと同様に、身近な移動手段のひとつになる可能性を秘めていると中村代表は話す。