初対面の人や苦手な人といっしょにいる時、一瞬の沈黙が妙に長く感じられることはありませんか? 何か会話をしたいけど、何を話していいかわからない。せっかく話しかけてもらっても、うまい返しができなくてすぐに話が切れてしまった。そんな経験がある人は多いと思います。
そのたびに、「あ~、なんて自分はダメなんだ」と自分を責めてきませんでしたか。仕事でも、プライベートでも、世の中は雑談をする機会にあふれています。だから、「雑談が苦手だ」というマインドを持っていると、思いのほか、ストレスを感じることが多くなります。でも、そうした負の感情であなたの心を満たすのは、
今日でおしまいにしましょう。
ペラペラと饒舌にしゃべることだけが雑談ではありません。あなたは、あなたにできそうなことをやりつつ、ちょっとずつ雑談の技術を身につければよいのです。そんな雑談のテクニックがまとまった書籍『雑談が上手い人が話す前にやっていること』の中から一部を抜粋・編集し、雑談でたくさんモヤモヤを解消するヒントをまとめました。
【雑談力を一生もののスキルに育てるコツ】「言葉貯金」をしよう
以前、ある人から、こんな話を聞いたことがあります。
「自分は話すのが苦手だったので、それを克服するために、言葉の収集をはじめた。この表現は響いてくるとか、これは上手いことを言っているなと思った言葉を集めて、メモしておくんです。それをしだして言葉のストックができてくると、話のタネが生まれたり、うまい言い方を学べるので、だんだんと苦手だった人との雑談が変化していったんです。『言葉貯金』、おすすめです!」
言葉をストックしていくことを、「言葉貯金」というそうです。
私も長年、話し方に自信がなかったので、言葉貯金を増やしてきました。
学生時代は、知らない言葉を、大きめの単語カードのようなものに書いて覚えた時期もありました。
そのうち、あまりに膨大な量になり、整理が難しくなったので、英単語帳に変わりました。
次に、単語だけではなく、気に入ったフレーズや格言なども書き込みたいと思い、専用のノートをつくって書き込んだりもしました。
でも、このやり方は途中で破綻してしまったんです。
毎回ノートに書くのは、だんだん面倒になりました。
また、パッと見たいときにノートを持っていないこともあり、必要なときにないということもありました。
なので、今はスマホのメモアプリで言葉貯金をしています。
■メモアプリに集めるべき3種の言葉
私が使っているメモアプリは、日記用に開発されたアプリなので、日付表示が大変見やすくなっています。
ここに、覚えたい単語、誰かと話しているときに気になった言葉、気に入った名言、短いエピソードなどを、どんどん書き込んでいきます。
メモアプリはいろいろありますので、あなたに合ったものを探してみてください。
もし、どんなことを書いたらいいかわからない場合は、次の3つから書くようにしてください。
(1)ちょっと「いいな」と思った言葉
(2)「使ってみたいな」と感じた言葉
(3)「うまいこというなぁ」と感心した言葉
カテゴリーなどで細かく分けるとあとで面倒になるので、時間ごとに、言葉のメモをしていけばいいと思います。
その語彙やフレーズに出会った時間で分けると、「あぁ、あの暑い日に出会った言葉だな」なんて、記憶にも残りやすいのです。
言葉貯金は、「1日3つ、カテゴリーにこだわらず、新しい語彙を書き込む」ことを、当初の目標にしてはどうでしょうか。
言葉を収集しようとすると、「カラーバス効果」といって、自分の意識しているものにどんどん目がいくようになります。これは脳の特性です。
昨日まで気にならなかったことが、今流行っていると知ると、急にあちこちで目に飛び込んできたりします。
このカラーバス効果をうまく活用し、どんどん言葉の貯金をしていってください。
そして、できるだけ頻繁に、自分で書き込んだ言葉を読み直すようにしてください。
この、見返す作業が大切なのです。
情報がストックされてくると、自分がどんなことに興味を持っているのか、どんな言葉に心を動かされやすいのか、そういうことが見えてきます。
それは、将来あなたが雑談で使うかもしれない話のタネとなります。
言葉貯金は、はじめてすぐに雑談力がアップするわけではありません。
でも、続けていくと効果が出てきます。
まずは、あなたの言葉貯金を増やしていってください。
■言葉のキャッチ力を強化する
言葉貯金が増えてくると、言葉を集めるのがどんどん楽しくなってくるはずです。
興味のおもむくまま、言葉をストックしていって構わないのですが、ここではより効率的に言葉貯金を増やしていくコツを紹介します。
おすすめは、できるだけふだん自分が接しない世代、地域、仕事のジャンルの言葉に接することです。
たとえば、私はこんなふうにしています。
ファッション系のYouTubeを見ていたら、「抜け感」「キレイ系」と「こなれ感」という言葉が頻繁に出てきました。
すかさず、「抜け感」「キレイ系」「こなれ感」をスマホにメモしました。
お坊さんの説法を聞いていたら、話の最後に「お味わいください」と言っていた。
「そうか、話はわかるよりも味わうことなのか」と気がつき、「味わう」という言葉をいろいろ使ってみようと考える。
人は、意識しないと「自分の好きなこと」「居心地のいい空間」の中だけで過ごすようになってしまいます。
すると脳は、「好きそうな話題」ばかりに意識がいくようになります。
自分に心地よいジャンルの言葉にどっぷり浸かっているだけでは、言葉の幅が広がりません。
いろいろな相手と雑談ができるよう、意識して、自分の心地よいゾーンからはみ出た言葉をストックしていってください。
そのためには、ふだんは見ないようなテレビ番組を見てみたり、ふだんはスキップボタンで飛ばしてしまう動画CMを見てみたり、「いつもはしないこと」にもチャレンジしてみると、新しく出会う言葉がたくさんあることに気づきます。
「あれ? この意味知らないぞ」
「この言葉って、そういう使い方をするんだ」
「こんな単語を使って表現するんだな」
こうした気持ちが生まれると、あなたの言葉の幅はどんどん広がっていくはずです。
〈ポイント〉
気になった言葉は、ジャンル問わず、メモアプリに記入。
さらに、自分がふだん接しない環境に身を置いて、新しい言葉を見つけてみる。
★ ★ ★
いかがでしたでしょうか?
初対面でも、苦手な人でも、もう怖くない会話が得意じゃない人でも大丈夫! 本書を読めば苦手な雑談がたのしくなる秘けつを学べるはずです。
以下のような「雑談コンプレックス」を持つ方は是非、書店でチェックしてみてください。
●まずもって、何から話したらいいのかわからない人
●「これを話したらどう思われるだろう?」など、相手の気持ちを考え過ぎて話せない人
●「雑談が上手い人は、話が上手い人」(だから、自分は無理)と思っている人
●雑談で失敗した経験が忘れられず、「自分は話ベタ」と苦手意識を抱えている人
●本やYouTubeで話し方を勉強しているが、なかなかうまくいかない人
●社会人になってから、友人以外と雑談することに苦痛を感じている人
●リモートが増えて人との対話・雑談に苦手意識が増した人、もともと苦手な人
●親しくない人と話すとき、チャットはできても、顔を合わせての会話に自信がない人
●天気の話すらできない、対面だと「最初の一言」を話すのが怖い人
●「傾聴力が大事」と言われ過ぎて、つかれている人
●目的のない会話の仕方がわからなくて、苦手を感じている人
「雑談が上手い人が話す前にやっていること」
著/ひきたよしあき/アスコム
ひきたよしあき
コミュニケーション コンサルタント。
スピーチライター。
大阪芸術大学芸術学部放送学科 客員教授。
早稲田大学法学部卒業。博報堂に入社後、クリエイティブディレクターとして数々のCMを手がける。
政治、行政、大手企業などのスピーチライターとしても活動し、幅広い業種・世代の価値観、世代間のギャップ、言葉遣いの違いなどを分析し、コミュニケーション能力が高まる方法を伝授する。
また、大阪芸術大学、明治大学、慶應MCCなどで教え、「はじめて『わかった!』と心の底から思えた講義」「一生ものの考える力が身につく」と学生や社会人から支持を集める。
教育WEB「Schoo」では毎回事前予約が約20,000人、朝日学生新聞社「みんなをつなぐ新聞WEB」では、毎回1,200人近い子どもと保護者が参加する人気。
著書に『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)、『大勢の中のあなたへ』(朝日学生新聞社)、『トイレでハッピーになる366の言葉』(主婦の友社)など。