動画自体は全年齢対象でも……
該当の動画の収益化が制限されると、YouTubeに費用を出しているスポンサーの大半がその動画に広告を出さなくなってしまう。「我が社の商品のイメージに合わない動画に広告は出したくない」ということだ。
そのような流れから、動画自体は全年齢対象でもセンシティブな表現のせいで広告が殆どついていないということがしばしば発生する。
なお、配信者はその動画を公開する前に内容を自己評価することができる。センシティブ(と思われる部分)を正直に評価・報告する仕組みだが、実際のところYouTubeと評価が食い違うことも珍しくない。
その場合は不服申し立てができるが、それが却下される場合も。そして自己評価の精度が低いと、動画のアップ当初から収益化に制限がかかる可能性がグンと高くなる。
これも不服申し立てができるのだが(YouTubeのAIは決して精度が高くない)、人間による再審査には時間がかかることも。このせいで、得られるはずの広告収益をフイにしてしまうという現象も発生している。
「死」や「殺」はタブー?
YouTubeで公開されている動画に、よく「死」や「殺」といった文字を伏字にしているものがあるのはお分かりだろうか。なぜそういうことをするかというと、つまるところ「収益化制限」を回避するためだ(最悪、動画の公開自体に支障をきたす可能性もあるという)。
上述の通り、YouTubeのAIはお世辞にも賢いとは言えず、サムネイル画像や動画内で記載されている文字に反応することがある。
もっとも、これは明らかにYouTubeの落ち度。ならば野球の「併殺」や「死球」はどうなのだということになってしまうはずで、日本語ならではのこの言い回しすら自粛しないといけない羽目になる。
そういった煩わしさがあるのは事実だが、一方で配信者側が気をつけなければならない点もやはりある。
ゲームのゴア表現にも注意が必要
筆者を含めたゲーム実況者にとって、注意すべきは「流血表現」や「銃で人を撃つ表現」である。
今時、そうしたゲームは珍しくないのだが、だからといってYouTubeはその全てを良しとはしていない模様。ゲーム内のゴア表現のせいで「この動画は18禁規制を免れたが、広告がつかなくなってしまった」ということがしばしば起こる。
それを覚悟で動画を配信するのもひとつの手段だが、確実に収益化を求めるのならゲーム内のゴア表現をオフにするという方法もある。大半のゲームは、作中のゴア表現を表示するかしないかを選択できるのだ。
つまるところ、YouTubeで公開されている動画はそのような工夫の上で配信されている。
そのため、YouTubeの規約変更は大きな話題になりがちである。この変更の内容によっては、自分が今まで制作してきた動画が一切収益化できなくなる可能性もあるからだ。
「YouTubeでの収益化」は小学生から大人まで多くの人がおぼろげに想像する夢でもあるが、それを達成した先にもいろいろと苦労が待っている。
【参考】
YouTube
https://support.google.com/youtube/answer/6162278
取材・文/澤田真一