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UIが大きく変わった新型「Apple Watch Series 9」を使ってみてわかった○と×

2023.11.18

■連載/石野純也のガチレビュー

 スマートウォッチでトップシェアを誇るApple Watchだが、2023年も、iPhoneと同時に新モデルが発表された。「Apple Watch Series 9」と「Apple Watch Ultra 2」がそれだ。どちらのモデルも、チップセットに最新の「S9 SiP」を採用。計56億と、前モデル比60%増のトランジスタを備え、処理能力を向上させた。特に、機械学習(AI)の処理を担うニューラルエンジンの進化が大きく、最大で2倍に性能が上がっている。

 一方で、Apple Watch Series 9を見ると、その外観はSeries 7のころからほとんど変わっていない。アップルは、Apple Watch Series 7でケースとディスプレイを大型化しているが、そのデザインはキープしつつ、チップセットやセンサーといった中身の性能を向上させている。Apple Watch Series 9でも、その傾向は続いており、向上した処理能力を生かし、新たにダブルタップゼスチャーという操作に対応した。

Apple Watchの最新モデルとなるApple Watch Series 9。チップセットを強化し、ダブルタップゼスチャーに対応した

 これによって、片手での操作性を向上させているのがApple Watch Series 9最大の特徴と言っていいだろう。では、Apple Watch Series 9は、どこが変わって、どこが前モデルを受け継いでるのか。実機を元に、その実力をチェックしていきたい。

デザインキープながら見やすいディスプレイ、屋外での視認性はさらに向上

 Series 9といっても、その見た目はほぼ変わっていない。アップルは、Apple Watch Series 7で、ケースサイズを40/44mmから41/45mmにそれぞれ1mmずつ大型化。それに伴い、ディスプレイ周りのベゼル(額縁)を大幅に減らし、表示領域が本体いっぱいまで広がるようになった。そのケースやディスプレイは、Apple Watch Series 8を経て、Series 9でも踏襲されている。

ディスプレイサイズやベゼル幅、ケースのデザインなどは、Series 7の時から変わっていない

 Series 6以前のApple Watchや、Apple Watch SEを利用したユーザーにとっては、画面がより見やすくなる。また、ディスプレイが大型化した結果として、ソフトウエア側もキーボード入力に対応するなど、新たな機能が加わっている。約2年分の蓄積してきた進化は、Apple Watch Series 9でもそのまま利用できる。表示領域が広くなった分、文字盤の存在感が増し、デザインも洗練されたように見える。メールなどの文字も読みやすくなった。

ディスプレイサイズが大型化しているため、メールなどの文字が読みやすい。キーボードによる入力も可能だ

 ただし、これはSeries 7、8でも同じ。Apple Watch Series 9だけの特徴というわけではない。基本的に、過去のモデルは販売を終了しているため、比較検討して購入できるわけではないが、デザインやディスプレイという観点だけで、買い替えるメリットは薄い。逆に、こうしたポイントだけでいいのであれば、Amazonなどで販売されている過去モデルを手にするのもアリと言えるだろう。その方が、価格も安いからだ。

 一方で、ディスプレイの見え方は、Series 8までとは少々異なる。最大の輝度が、1000ニトから2000ニトへと2倍に上がったからだ。2000ニトは、昨年発売された初代Apple Watch Ultraと同レベル。あくまでピーク輝度のため、常時、この明るさで表示されるわけではないが、直射日光が当たる屋外では、ディスプレイの見やすさが大きく変わってくる。小さな、暗い色でもはっきりと見え、白はより際立って見える。

直射日光が当たる屋外での見え方は、Series 8までと大きく変わる。ピーク輝度が2000ニトになったこともあり、ディスプレイがはっきり確認できる。写真左がSerires 9

 ここまで明るくなれば、屋外で画面が見えず、手でディスプレイを覆って内容を確認する必要がなくなる。ただし、それで連続使用時間が短くなってはいない。通常時で18時間、低電力モードでは最大36時間駆動し、高速充電にも対応する。通常時で丸1日持たない点にはまだ改善の余地がありそうだが、朝起きて装着し、夜遅めに家に帰っても十分バッテリーは持つ。毎晩の充電を欠かさなければ、1日使っていても問題ないレベルと言えるだろう。

まるで魔法のような新操作のダブルタップゼスチャー、使いどころも多い

 冒頭で述べたように、Apple Watch Series 9ではチップセットの処理能力が大幅に向上している。トランジスタ数が60%増加し、30%の高速化を果たしたほか、ニューラルエンジンの性能向上で機械学習を用いた処理の速度が2倍に上がっているからだ。ただし、元々Apple Watchは動作がスムーズなことに定評があり、もたつきは少ない。iPhoneのように、各種機能を次々と起動させたり、ゲームのようにパフォーマンスが必要なアプリを動かすこともないため、高速化の恩恵は限定的だ。操作感のよさを判別するのは、なかなか難しいだろう。

 ただし、機械学習となると話は別だ。Apple Watch Series 9で新たに搭載されたダブルタップゼスチャーは、この処理能力を生かした機能の1つ。単純に手や指の動きをAIによって検知しているだけではなく、センサーを用いて血流の独特な変化を検出したうえで、ゼスチャーとして認識している。こうした処理を用いていることもあり、誤検知されてしまうことは非常に少ない。筆者がレビュー用にテストした限りでは、腕に装着したまま、誤ってダブルタップゼスチャーが起動してしまったことは1回もなかった。

メッセージの通知をダブルタップゼスチャーで開く。文章が長くスクロールが必要な時は、再度のダブルタップでスクロールさせることが可能だ

 逆に、ここぞという場面では、しっかりゼスチャーとして認識される。指の動きが少し小さくなってしまった場合などにゼスチャーが発動しないことはあったが、やり直せば、ほとんどの場合は成功した。この正確性こそが、ダブルタップゼスチャーに機械学習を用いた成果と言えるだろう。ディスプレイのタッチに次ぐ新たな操作方法として、ユーザーにしっかり使われることを目指している狙いが透けて見える部分だ。

 この機能は、watchOS 10.1の配信に伴って実装された。テレビCMなどでもApple Watch Series 9の〝売り〟として前面に打ち出しており、注目を集めている。文字盤が表示されている際にダブルタップすると、watchOS 10の新機能である必要な情報をまとめた「スマートスタック」が表示されるほか、メールやメッセージを着信した際に画面をスクロールして中身を読み、そのまま返信することも可能だ。UI上のボタンをスワイプしたり、タッチしたりする代わりにダブルタップで操作する格好になる。

文字盤でダブルタップすると、スマートスタックが出現する

 そのため、ダブルタップゼスチャーは、様々な操作に応用が可能だ。電話やFaceTimeの着信に応答したり、アラームを止めたり、iPhoneのカメラのシャッターを切ったりといった操作を行える。ただし、メールやメッセージの返信となると、なかなか骨が折れる操作になる。ダブルタップで本文を表示した後、画面をスクロールさせ、もう1回ダブルタップして音声認識を起動し、本文を書いたあと、さらにダブルタップして送信しなければならないからだ。

デスクワーク中に着信を取るようなシーンで便利

アラームやストップウォッチを止めたり、再開したりできる

片手でiPhoneを持ち、画質の高いアウトカメラで自撮りすることも可能。この際に、ダブルタップゼスチャーが役に立つ

 これをハンズフリーでできるのは近未来的でおもしろいものの、やや動きが複雑になりすぎるきらいがある。その間、腕を上げっぱなしにしていなければいけないため、疲れてしまうのも難点だ。どちらかといえば、ゼスチャー1回で完結する操作の方が、使い勝手はいい印象だ。特に片手が塞がっている時に、その真価を発揮する。筆者が便利だと感じたシチューエーションの1つが、Apple Watchが自動でワークアウトを検知した場合。この時も、ダブルタップゼスチャー一発で、そのワークアウトの計測をスタートさせることができる。

 徒歩のような場合はいいが、自転車に乗っている時などは手を離せないケースが多い。このような時、片手だけで操作ができるのは便利だ。また、仕事中など、キーボードを打ちながら先に挙げた電話/FaceTimeに応答するのもスムーズ。キーボードから離す手が、片手だけで済むので動きを減らすことができる。メッセージやメールも、スクロールさせるまでなら活躍するシーンは増える。新機能だからと言って無理に使いこなそうとせず、取り入れられるところから取り入れていった方が利便性は上がる気がしている。

操作体系が大幅に見直されたwatchOS 10、Series 9との相性もいい

 Apple Watch Series 9から、watchOS 10が標準で搭載されるようになった。watchOS 10では、UIが刷新されており、ボタンの役割すら変わっている。10世代目を迎え、操作体系を刷新した格好だ。これまでのwatchOSで、少し引っかかっていた部分がしっかり改善しており、使い勝手は向上している。例えば、文字盤を変更する操作。以前のwatchOSだと、左右にフリックするだけで文字盤が切り替わっていたため、気づかない間に手が触れ、別のものが表示されてしまうことがあった。

文字盤の変更画面は、ロングタップで呼び出せるようになった

 これに対し、watchOS 10ではまず、文字盤をロングタップしたあと画面を左右にスワイプする方式に操作が変更されている。結果として、いつの間にか文字盤が変わっていたという誤操作がなくなった。コントロールセンターの呼び出し方も、ディスプレイの上スワイプから、サイドボタンのシングルクリックになり、より確実性が増している。通知音の有無やフライトモード、低電力モードへの切り替えなど、比較的利用頻度が高い機能なだけに、物理キーでシンプルに呼び出せた方が合理的だ。

コントロールセンターを呼び出す方法も、サイドキーのシングルクリックに変わっている

 また、アプリ一覧もグリッド表示とリスト表示の2方式から選べる点は変わっていないが、グリッド表示の際に、アイコンがより整然と並ぶようになった。従来は、縦横両方にアプリが広がるように配置されており、起動したいものを見つけるのがなかなか難しかったが、watchOS 10は、グリッド表示の見た目をある程度維持しつつ、縦スクロールで一覧可能になっている。デジタルクラウンの縦スクロールだけで済むため、アプリにアクセスしやすい。

アプリ一覧はグリッド表示を受け継ぎつつ、縦スクロールだけになった

 このように、watchOS 10では、かなり大胆に操作方法を変更している。watchOS導入以降、初となるUIの刷新なだけに、かなりユーザーの声を反映させた印象を受ける。これまでApple Watchを使い続けてきたユーザーは、いきなりの変更で戸惑うおそれもありそうだが、使い勝手や合理性を重視した改善になっている部分は多いだけに、慣れればこちらの方が使いやすいだろう。特にApple Watch Series 9では、ダブルタップゼスチャーでスマートスタックを簡単に呼び出せる。その意味で、同モデルは、watchOS 10をもっとも使いこなしやすい端末の1つと言えるかもしれない。

 一方で、冒頭で述べたように、見た目はほぼそのまま。センサーの追加もないため、ここ1、2年でApple Watchを購入したユーザーが、無理に機種変更することはない。ただ、初めてApple Watchを購入するなら、お勧めできる1台だ。また、Apple Watch Series 6以前からだと、ディスプレイのサイズ、明るさ、動作速度などが大きくアップグレードされている。操作性もいいため、買い替えを検討する価値はある。ベーシックで高機能なスマートウォッチを求めている人には、お勧めできる1台と言えるだろう。

【石野’s ジャッジメント】
質感        ★★★★★
ディスプレイ性能  ★★★★
UI         ★★★★
連携&ネットワーク ★★★★
音楽性能      ★★★★
センサー性能    ★★★★
防水性能      ★★★★
決済機能      ★★★★★
バッテリーもち   ★★★★
*採点は各項目5点満点で判定

取材・文/石野純也

慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

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