初対面の人や苦手な人といっしょにいる時、一瞬の沈黙が妙に長く感じられることはありませんか? 何か会話をしたいけど、何を話していいかわからない。せっかく話しかけてもらっても、うまい返しができなくてすぐに話が切れてしまった。そんな経験がある人は多いと思います。
そのたびに、「あ~、なんて自分はダメなんだ」と自分を責めてきませんでしたか。仕事でも、プライベートでも、世の中は雑談をする機会にあふれています。だから、「雑談が苦手だ」というマインドを持っていると、思いのほか、ストレスを感じることが多くなります。でも、そうした負の感情であなたの心を満たすのは、
今日でおしまいにしましょう。
ペラペラと饒舌にしゃべることだけが雑談ではありません。あなたは、あなたにできそうなことをやりつつ、ちょっとずつ雑談の技術を身につければよいのです。そんな雑談のテクニックがまとまった書籍『雑談が上手い人が話す前にやっていること』の中から一部を抜粋・編集し、雑談でたくさんモヤモヤを解消するヒントをまとめました。
【今すぐ雑談がラクになる簡単テクニック】「口下手」を魅力化するコツ
雑談が苦手な人の中には、口数が少ない人もいると思います。
ちなみに、「口数が少ない」という言葉に、どんなイメージがありますか。
「あなたは、口数が少ないですね」
「あの人は、口数が少ない」
どんなトーンで言うかにもよりますが、いずれの例にしても、受け取り手としては、どちらかというとマイナスの印象がありませんか。
とりわけ、雑談が苦手だという「自覚」のあるあなたは、
「はっ! なんか否定されてるかも」
と、ドキッとしたりしたのではないでしょうか。
インターネットで、誰もが自分の意見を主張できる時代。
周りは巧みな話術や交渉力を持っているような人ばかりに見えるかもしれません。
それに比べて、口数が少ない自分は、性格が暗く見られるのではとか、仕事ができないようにも思われるのではとか、不安な気持ちもあるかもしれません。
でも、本当にそうでしょうか。
確かに、ネットには、言葉巧みな人がたくさん存在しています。自分がいかにスゴイか、どう成功したか、なんてアピールをしています。
しかし、40年近く広告会社で働き、さまざまな職種の人にコミュニケーション力をつける方法を教えている私には、「口数が少ないこと」が不利とは一概に思えないのです。
だって、
口数が少ない=言葉が深く、重い
というイメージもあるからです。
物事は、視点を変えれば、見え方はガラリと変わります。
たとえば、私の知るかぎり、経営者は、社会的に評価が高い人になればなるほど、口数が少なくなる傾向にあります。その分、彼らの言葉には重みが出てきます。
ある企業のトップに、口数の少ない人がいました。
失礼とは知りつつ、「口数が少なくて、悩んだことはないですか?」と聞いてみました。すると、苦笑いしながらこう答えてくれました。
「痛いところをつくねぇ。実はずっと悩んできたよ。今でも悩んでいる。しかし、これはもう性格だから、変えようがない。そこで、口下手を逆に利用して、発言に深みや重さが出るように、意識してきたんだよ」
彼曰く、「口数が少ない人」の魅力は、「思慮深く見えること」と「ミステリアスに見えること」だと言うのです。
これを最大限に使って、自分のひと言に重みがあるように見せる努力をしたそうです。
たしかに、「彼はミステリアスだ」とか言われると、なんだかよいことのように感じますね。
どうですか、口数が少ないことは、マイナスではないことがわかってもらえたんじゃないでしょうか。
では、せっかくのこの武器をさらに磨くコツを紹介します。口数が少ないことで「思慮深い人」に見せる方法です。
簡単な方法なので、ぜひ身につけてください。
■口下手を「思慮深い人」に見せるコツ
二代目桂枝雀という落語家が、「笑いは、緊張の緩和から生まれる」と言っています。
前にあげた経営者は、これを応用したらしいです。
たとえば、
人から意見を求められたとき、発言する前に、少し難しい顔をする。
これが、思慮深く見せる効果があります。
そして、緊張から一気に緩和して、「その意見、いいですね」と言う。
相手は、彼の難しそうな顔を見て、「あれ、自分の意見とは反対なのかな?」とちょっと心配する。
そのあとに、同意の言葉を聞くと、「あぁ、深く考えたうえで賛同してくれたんだな」と思う、というカラクリです。
「ペラペラしゃべれない人は、ひと言に間をおいて重みをつけることで、人に聞いてもらえるようになる」とは、彼の言葉です。
この話を聞いて、「あぁ、不良がモテる法則と同じだな」と思いました。
ふだん優しい人が、優しくふるまうのは普通ですが、不良っぽい人が、ときに優しくふるまうと、好感度が一気に上がることがあります。マンガやドラマなどにも、そんなシーンがよく出てきます。
これは、ギャップをつくることがポイントです。
この経営者にも、つくられたギャップがありました。
たとえば、一緒に食事に行ったとき。彼は難しい顔をしてモグモグ黙って食べています。
そのあとに、顔を弛緩させ笑顔になって、「この肉、ものすごくうまいね」と言う。すると、なんでもないひと言なのに、なぜかいいことを言ったように聞こえるんです。
緊張からの弛緩をうまく利用して、言葉に実感を込めているわけです。
このコツならば、使えそうじゃないでしょうか。
もし難しい顔をすることに抵抗があるなら、こんなやり方があります。
話をふられたら、難しい顔をしなくとも、ちょっと考える時間をとってから、そのときの自分の気持ちを伝えてみる。
「おいしい」「面白い」「いいね!」のような、簡単なひと言でもいいのです。
何かすぐに話さなくちゃ! という思い込みを捨てて、少しだけ、自分の脳みそに、相手に気持ちを伝える言葉を考える時間をつくってあげるのです。
話し相手も、無言でいられることが怖いのです。
その手前であなたの気持ちが聞ければ、それだけで場の雰囲気はなごむでしょう。
間が空くのを恐れないことは大切です。
相手の話をまずは一生懸命聞く。そして、間を恐れてすぐに返事や回答をしない。
つたない言葉でもいいので、ぜひちゃんと考えてから言葉にしてみてください。
間をつくってしまうことは気まずい、と思ってしまうかもしれませんが、気持ちが焦って、ちゃんとした回答や返事ができなくなることのほうが問題です。
雑談が苦手なあなたが目指すのは、「思慮深く、寡黙な人」です。
考え抜いた発言をくれる「誠実な人」です。
口数の少なさを、言葉の重みという価値に置き換えていきましょう。
ちょっと見せ方を変えれば、相手にとって、あなたは「口数が少ない人」から「思慮深い人」になることだってできるのです。
ちなみに、「話す前に少し難しい顔をする」の多用は、注意が必要です。あまりにも多用すると、芝居じみて「感じが悪い人」になってしまうからです。そこは気をつけてくださいね。
寡黙で思慮深い人のひと言は、「私のためにいろいろ考えてくれたんだ」という好感を生みます。当意即妙に返答するより、誠実さも伝わります。
〈ポイント〉
口下手を無理に直さず、ひと言に重みがあるように見せる。
★ ★ ★
いかがでしたでしょうか?
初対面でも、苦手な人でも、もう怖くない会話が得意じゃない人でも大丈夫! 本書を読めば苦手な雑談がたのしくなる秘けつを学べるはずです。
以下のような「雑談コンプレックス」を持つ方は是非、書店でチェックしてみてください。
●まずもって、何から話したらいいのかわからない人
●「これを話したらどう思われるだろう?」など、相手の気持ちを考え過ぎて話せない人
●「雑談が上手い人は、話が上手い人」(だから、自分は無理)と思っている人
●雑談で失敗した経験が忘れられず、「自分は話ベタ」と苦手意識を抱えている人
●本やYouTubeで話し方を勉強しているが、なかなかうまくいかない人
●社会人になってから、友人以外と雑談することに苦痛を感じている人
●リモートが増えて人との対話・雑談に苦手意識が増した人、もともと苦手な人
●親しくない人と話すとき、チャットはできても、顔を合わせての会話に自信がない人
●天気の話すらできない、対面だと「最初の一言」を話すのが怖い人
●「傾聴力が大事」と言われ過ぎて、つかれている人
●目的のない会話の仕方がわからなくて、苦手を感じている人
「雑談が上手い人が話す前にやっていること」
著/ひきたよしあき/アスコム
ひきたよしあき
コミュニケーション コンサルタント。
スピーチライター。
大阪芸術大学芸術学部放送学科 客員教授。
早稲田大学法学部卒業。博報堂に入社後、クリエイティブディレクターとして数々のCMを手がける。
政治、行政、大手企業などのスピーチライターとしても活動し、幅広い業種・世代の価値観、世代間のギャップ、言葉遣いの違いなどを分析し、コミュニケーション能力が高まる方法を伝授する。
また、大阪芸術大学、明治大学、慶應MCCなどで教え、「はじめて『わかった!』と心の底から思えた講義」「一生ものの考える力が身につく」と学生や社会人から支持を集める。
教育WEB「Schoo」では毎回事前予約が約20,000人、朝日学生新聞社「みんなをつなぐ新聞WEB」では、毎回1,200人近い子どもと保護者が参加する人気。
著書に『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)、『大勢の中のあなたへ』(朝日学生新聞社)、『トイレでハッピーになる366の言葉』(主婦の友社)など。