初対面の人や苦手な人といっしょにいる時、一瞬の沈黙が妙に長く感じられることはありませんか? 何か会話をしたいけど、何を話していいかわからない。せっかく話しかけてもらっても、うまい返しができなくてすぐに話が切れてしまった。そんな経験がある人は多いと思います。
そのたびに、「あ~、なんて自分はダメなんだ」と自分を責めてきませんでしたか。仕事でも、プライベートでも、世の中は雑談をする機会にあふれています。だから、「雑談が苦手だ」というマインドを持っていると、思いのほか、ストレスを感じることが多くなります。でも、そうした負の感情であなたの心を満たすのは、
今日でおしまいにしましょう。
ペラペラと饒舌にしゃべることだけが雑談ではありません。あなたは、あなたにできそうなことをやりつつ、ちょっとずつ雑談の技術を身につければよいのです。そんな雑談のテクニックがまとまった書籍『雑談が上手い人が話す前にやっていること』の中から一部を抜粋・編集し、雑談でたくさんモヤモヤを解消するヒントをまとめました。
【「雑談だめメンタル」をぶっ壊す】[×]たくさんしゃべろうとする[〇]感じたことだけ正直に話す
日本人は、長く「沈黙は金」「以心伝心」を美徳としてきました。
それが、あっという間に「おしゃべりは金」の世の中です。
会社では、雑談は「無駄口」のように扱われてきたのに、今では「社員の雑談を増やすことが成長の鍵」とまで言われています。
無口が、報われない時代になってしまいました。
そんな世の中ですから、私のところにこんな相談が増えています。
「友人、知人に口数が少ないと言われます。こんな自分が話しても、きっと相手は楽しくないだろうなと思うと、話す気力が湧いてきません」
小学生から経営のトップ層まで、老若男女を問わずに多い悩みです。
しかし、この悩みは、単に口数が多くなれば解決する問題なのでしょうか。
流暢に話せれば、「楽しい人」と思われるのでしょうか。
たとえば、あなたが友人と、ラーメンを食べていたとします。
ひと口食べて、相手が、
「うん、縮れた麺にスープがよくからんでる。いかにもしょう油味らしい、澄んだ色合いとチャーシューの色がよく合っているね」
なんてとくとくと言ったら、楽しく感じるでしょうか。
それより、言葉も忘れて食べたあと、最後に天井を見上げて、
「……うまかった」
と言う人のほうが、ずっとつき合える友だちになれそうだと思いませんか。
無口の人が、口数を増やすのは簡単なことではありません。
だから、そんな努力は必要ありません。
一緒にいたい、また会いたい、ずっとつき合っていきたいと相手に思ってもらうためには、「口数とは別のこと」が必要なだけです。
それが、ラーメンを食べたあとに「……うまかった」というような、素直に思ったこと、心で感じたことを口に出す力なのです。
語彙がどれほど豊富でも、論理的にものを語ることができても、心の底から感じていることを言葉にできなければ、相手には伝わりません。
まずは、自分の気持ちを、心の内に留めておくのではなくて、意識して、声にしてみましょう。
最初は恥ずかしい気持ちがあるかもしれません。
無理せず、ひとり言っぽくてもいい。それをくり返して、体に染み込ませていくことで雑談力もついていくはずです。
■お風呂に入ったら「気持ちいいなぁ」と声に出して言う
意識して声に出す練習は、実に簡単です。
感情が変化した瞬間に、それを声に出して言語化するのです。
たとえば、
● お風呂に入ったとき、「気持ちいいなぁ」と言う
● 朝、玄関を出て外気に触れたら、「暑いなぁ」「寒いなぁ」と言う
● ご飯を食べるときは、「おいしいなぁ」「甘いなぁ」「いい匂いだ」と言う
● 満腹になったら、「おなか、いっぱいだ」と言葉にしていく
● 映画を観たら、「面白かった」「結末が好きになれなかった」と感想を言う
「そんな子どもっぽいこと、できないよ!」
と思うかもしれません。
そこなんです、あなたが雑談が苦手になっている原因は。
小さい子どもは、思ったことをすぐに口にします。素直に言語化できます。
大人は、人の視線ばかり感じて、子どものように無邪気に声を出すことを忘れている。その感覚を取り戻すのが、「感じたことを、すぐに口にする」という方法なのです。
■「個人的な感想です」からはじめる
そうは言っても、雑談が苦手な人は、自分が今まさに発言しようとすることが、その場に適したものなのか、正解なのか、わからなくて、押し黙ってしまうのではないでしょうか。
頭で理解できたとしても、それが簡単に実行できれば、苦労しないのです。
「感じたことを、口にする」と言っても、それがスッとできない人は、どうしたらいいのでしょうか。
ここでは、無口な人が上手く感想を述べられた例を紹介します。
先日、若いスタッフ数人と、カレーライスを食べに行きました。
その中に、かなり無口な人がいました。
有名なカレー屋さんだったので、みんなが食べた印象を口々に言っています。でも、その人は何も言わないので、私が、
「○○さんの食べた感想はどうですか?」
と聞いてみました。彼はしばらく考えて、
「個人的な感想ですが、僕は、ライスとカレーを分けて持ってこられるより、ライスにかけてあるほうが好きです」
と、ぼそっとつぶやいた。この発言が突破口になって、一緒にいたスタッフたちも、どちらが好きかを言い出し、大いに盛り上がりました。
彼の話し方で、何がよかったのでしょうか。
答えは、「個人的な感想ですが」という言葉を使って話しはじめたことです。
話す内容に自信がなければ、とりあえず、自分で(失敗してもいいという)心の逃げ場所をつくっておいて、それから話せばよいのです。
聞くほうも、「個人的な感想なのね」と思って聞くので、自分の感想と違ったとしても、それをとやかく言うことはありません。
でも、こんなパターンのときはどうでしょうか。
「そもそも、個人的な意見、感想が湧いてこない。まったく何を言っていいのか見当もつかない」
こういう人は、例にあげた彼のように、気の利いたことが言えないかもしれない。
でも、まずは、カレーを食べて、「好きなのか」「あまり好きじゃないのか」この2択はできますよね。
まず、そんな初歩的な感想を述べるところからはじめましょう。
そして、「なぜ、好きだと思ったのか」「なぜ、あまり好きじゃなかったのか」を一つひとつ考えてみましょう。
それをくり返していくと、自分の好み、思考が明確になってきます。
千里の道も、まずは一歩から。
もちろん、意見や感想は人それぞれですから、相手の意見と自分の意見とが違うこともあり得ます。それが心配なら、自然に会話がつながる「質問」の形で返せば大丈夫。
「個人的に、あまり好きではないですが、あなたはどうでしょうか?」
といった具合に。
当然ですが、気持ちや感想には正解がありません。
雑談なら、あなたが感じたことを素直に口にすればいい。そのひと言をきっかけに、周りの人も自分の感想を言い出して、雑談が広がっていくこともあります。
自分の感じたことを言葉にする習慣をつけましょう。
〈ポイント〉
「うまかった」「気持ちいい」「あったかい」……
感情が動いたら、すぐ言葉にする「瞬間言語化」を心がける。
★ ★ ★
いかがでしたでしょうか?
初対面でも、苦手な人でも、もう怖くない会話が得意じゃない人でも大丈夫! 本書を読めば苦手な雑談がたのしくなる秘けつを学べるはずです。
以下のような「雑談コンプレックス」を持つ方は是非、書店でチェックしてみてください。
●まずもって、何から話したらいいのかわからない人
●「これを話したらどう思われるだろう?」など、相手の気持ちを考え過ぎて話せない人
●「雑談が上手い人は、話が上手い人」(だから、自分は無理)と思っている人
●雑談で失敗した経験が忘れられず、「自分は話ベタ」と苦手意識を抱えている人
●本やYouTubeで話し方を勉強しているが、なかなかうまくいかない人
●社会人になってから、友人以外と雑談することに苦痛を感じている人
●リモートが増えて人との対話・雑談に苦手意識が増した人、もともと苦手な人
●親しくない人と話すとき、チャットはできても、顔を合わせての会話に自信がない人
●天気の話すらできない、対面だと「最初の一言」を話すのが怖い人
●「傾聴力が大事」と言われ過ぎて、つかれている人
●目的のない会話の仕方がわからなくて、苦手を感じている人
「雑談が上手い人が話す前にやっていること」
著/ひきたよしあき/アスコム
ひきたよしあき
コミュニケーション コンサルタント。
スピーチライター。
大阪芸術大学芸術学部放送学科 客員教授。
早稲田大学法学部卒業。博報堂に入社後、クリエイティブディレクターとして数々のCMを手がける。
政治、行政、大手企業などのスピーチライターとしても活動し、幅広い業種・世代の価値観、世代間のギャップ、言葉遣いの違いなどを分析し、コミュニケーション能力が高まる方法を伝授する。
また、大阪芸術大学、明治大学、慶應MCCなどで教え、「はじめて『わかった!』と心の底から思えた講義」「一生ものの考える力が身につく」と学生や社会人から支持を集める。
教育WEB「Schoo」では毎回事前予約が約20,000人、朝日学生新聞社「みんなをつなぐ新聞WEB」では、毎回1,200人近い子どもと保護者が参加する人気。
著書に『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)、『大勢の中のあなたへ』(朝日学生新聞社)、『トイレでハッピーになる366の言葉』(主婦の友社)など。