第2試合はUKマト1ターコイズ無修正vs UKマト1修正あり。最初期のUK盤はジャケット左上のLED ZEPPELINと右下のATLANTICのロゴの色から、ターコイズと称される。以降のUK盤や他の国のレコードはオレンジ系の暖色だ。
無修正と修正ありとは、ラベル外側に刻印されたレコード番号588171がそのままのものと、左から3番目の8が消されてその上に手書き数字の8が刻まれているものを指す。何故の修正かは不明のようだ。修正より無修正の方がより初期とされて、レコードの値も張る。僕の修正ありのジャケットのロゴはオレンジだが、ややこしいことにターコイズには無修正と修正ありがあって、当然なから無修正の方が高価だ。10年近く前にターコイズ無修正を約17万円、修正ありを約5万円で購入したが、今やターコイズは安くてもその3倍はする。
高いなりに音質にも期待したいところだが、当時、有名中古レコード店にあったターコイズ無修正を購入しようかと逡巡していた時、店員氏に「音は変わりませんよ。値段はジャケット代と思ってください」と言われたことがある。その言葉通り、聴き比べの結果は見事に4対4のイーブン。自宅での聴き比べでも、その違いははっきりしなかった。「せっかくだから希少な方を勝ちとしましょう」、という僕の提案でターコイズを勝ち残りとした。
3回戦はUSマトA/A(PR工場)vs USマトA/C(PR工場)。アメリカ盤のマトリクスは数字ではなく、アルファベットで表される。レコード会社等によりまちまちなので一概には言えないが、おおよそAからFくらいまでは初版と捉えていいとされる。A/Aは両面マトA、A/CはA面マトA、B面マトCを意味する。PR工場とはレコードをプレスした工場のことだ。アメリカは広いので各地にプレス工場があり、アトランティック・レコードなら、PR、SP、CO、MO、CPなどの工場名(略称)がラベルに印刷されている。当時のアトランティックのメイン工場がPRなので、ツェッペリンではPR工場のレコードが最も音が良いとされているようだ。
「グッド・タイムス・バッド・タイムス」はA面1曲目なので、この2枚は同じマトリクスとなる。もちろん50年以上前のレコードなので、コンディションの違いで音が異なることは十分にありうるが。比較した結果は5対3でA/Cに軍配が上がるが、大きな音の差はなかったと思う。
マト1ワールド、なんとも奥が深い
続いては2回戦第1試合、リマスター vsターコイズだ。これまで何度か『Ⅰ』の聴き比べイベントをやったが、リマスターが高評価を得たことはなかった。リマスターは、妙にメリハリがありすぎてあざとい。アナログなのにデジタルっぽい。ところがこの日のリマスターはそんなことはなく、自然な音で耳心地もいい。とはいえ僕の耳ではターコイズの勝ちだ。しかし参加者の挙手ではリマスターの圧勝となる。買えば50万円超対1万円以下で、安い方の勝ち。内心、複雑な思いだった。
第2試合はUSマトA/C vs USマトC/C、ともにPR工場だ。実はこのC/C、僕は最強の『Ⅰ』だと確信している。爆音、轟音という言葉はこのレコードのためにある。優勝間違いなしなので1回戦パスのシード・レコードとしたが、案の定、全員がC/Cに軍配を上げた。
いよいよ決勝戦、リマスターvs C/Cだ。僕の予想通り、大健闘のリマスターもC/Cには太刀打ちできない。文句なしでC/C優勝となる。さてここで僕は参加者に問いかけた。「C/C、何かおかしくないですか?」。みなさん、首を捻る。「では何かがおかしいと思って、もう一度聴いてください」。それでも回答は出ない。
音が左右、逆なのだ。曲頭のシンバルの音は中央右から出るのが正しいが、C/Cでは左から出る。今回試聴した7枚中6枚が右から出るので、左から出るのは明らかに間違いだ。だがこれだけ音が良ければ、そんなことはどうでもいいのではないか。7枚を聴き比べてきた8名が気づかないのだから、左右逆だろうとステレオ再生ならどっちでもいいのではないか。とまで言っては、暴論だろうか?
『Ⅰ』対決のおまけとして、最後にC/CとA/CのB面を聴き比べてみた。どちらもPR工場マトCだ。曲は「コミュニュケイション・ブレイクダウン」。これまたC/Cの圧勝ちとなる。改めてラベル外側のマトリクスをチェックするが、どちらもST-A681462C AT/GP PRで全く同じだ。盤面も見た目は綺麗で甲乙つけ難い。なのに、この違い。マト1ワールド、なんとも奥が深い。
続く『Ⅱ』の比較試聴では、マト1業界(なんてないが)が騒然となる、衝撃の結果が出た。
『Ⅱ』の比較試聴記は次週配信予定です!
文/斎藤好一