店の前に立つだけで匂い立つスパイシーな香り――誰しもが食欲を刺激されるその店で提供されているのは、ミーシェンという耳慣れない料理だ。
見た目はラーメンのようにも思えるが、麺がまったく違う。ラーメンやうどんなどは小麦粉が原材料だが、ミーシェンは、なんと米と水だけで作られているというのだ。いったいどんな料理なのか。
2色のタイル貼り、スタイリッシュかつ人目を引く外観が特徴のタムジャイサムゴー新宿店で広報担当者がこう話す。
「ミーシェンは中国雲南省が発祥といわれており、漢字で書くと『米線』。読んで字の如く、お米に、ミネラル豊富な選りすぐりの水源の水だけを加えて作られます。オーガニックでグルテンフリーな少し太めのつるつるとした丸い麺。それが香港で独自のスタイルを確立し受け入れられるようになって香港ナンバーワンとなったのが、タムジャイサムゴーです」(以下、同)
いまでは若者たちを中心に幅広い層から根強い支持を受けているという。その秘密はいくつかあるが、なにより特筆すべきは食感。米由来だけあってもちもち、それでいて噛みごたえはぷりっと歯ごたえがいい。その麺とよく絡むオリジナルスープは、痺れる辛さの「マーラー」、酸味と辛味の絶妙なブレンド「サムゴ―サンラー」、甘みと酸味が効いた「トマト」など6つから選べる。さらに、辛さも「不辣」から「特辣」までの10段階から選んで自分好みのスパイシーな味で食べられる。さらに、鶏むね肉、キクラゲ、チンゲン菜など25種のトッピングも用意されている。
100万通りの味を攻略せよ!
スープ、辛さ、トッピングの組み合わせは100万通りにもなるというから、何度通っても飽きることはないはず。店側も、その期待に全力で応える。
どんなに混雑しても注文ごとに茹でたてで提供するポリシーで、いつでもできたてが味わえる。それもそのはず、譚仔三哥はあのミシュランガイドの「ビブグルマン」に3年連続で掲載されているのだ。
客席をのぞいてみると、老若男女がにぎやかに食事を楽しんでいる。なかでも目につくのは、デートに立ち寄ったと思われるおしゃれ着に身を包んだ若い男女の姿。一方、仕事の合間なのかカウンター席でひとり箸を運ぶ若い女性も少なくない。麺類のお店だが、デートシーンにも、女性の“ひとりメシ”にも入りやすく、マッチしているのが新しい。
「香港でも、ランチやおやつなどさまざまな用途で使っていただいており、中高生から大人まで幅広いお客様に親しまれています」
そのご当地である香港にタムジャイサムゴーが出店したのが2008年、今年で15周年を迎えるという。
「タムジャイサムゴールミーシェンの15周年記念スローガンは『堅持辣着』、すなわち『辛さにこだわり、持ち続ける』。私たちは『辛さ』とは単なる味以上のものを表しているとの信念を持ち続けています。今後もスパイシーさを使ってより多くの可能性を生み出すことをお約束します」
香港では90店舗以上あり、日本には22年3月の新宿店を皮切りに恵比寿、吉祥寺と3店舗を構えるほか、シンガポールにも支店があるという。
「すべての店舗で、香港の本場の味をそのままお届けすることにこだわっています」
秘伝のレシピは数人しか知らないトップシークレットだそうで、まさに真似のできない美味しさということになる。
「タムジャイサムゴーのスープベースは、『香麻辛辣』に『鮮』を加えた5つの要素で構成されています。『香』は鼻孔をくすぐる豊かな香り。『麻』は舌がピリッと痺れる刺激。『辛』『辣』はスパイス弾けるシャープな辛さ、食欲をそそるホットな辛さの2種類の辛さを演出します」
そしてそれらの美味しさを支えるのが、新鮮な食材のおいしい共鳴である『鮮』というわけだ。
香港ナンバーワンスターのお気に入り
“1000年に1度のスター”と言われる香港の注目度ナンバーワン俳優で、シンガーとしても実力を評価されるJeffrey Ngai。昨年彼が出演したタムジャイサムゴーのブランディング動画は香港で大きな話題となり、なんとオンライン動画は320万回以上の再生回数を記録。今年は、シンガーとして招待され、タムジャイサムゴーのロック調の曲を歌っている。
そんなJeffreyが日本の店舗を訪問し「個人的に大好きでずっと食べていた」というタムジャイサムゴーの魅力を語ってくれた。
「タムジャイサムゴーは、もう生活になくてはならないお店です。いままで通算3000回くらいは食べたと思います(笑) 家族で来るのはもちろん、中高生のころは学校帰りに友達と行ったり。懐かしい思い出が蘇ります」(Jeffrey、以下同)
おすすめの食べ方もあるとして、こんなふうに説明してくれた。
「僕はいつも10段階の上から3番めに辛い『中辣』。少しずつ辛いものへと段階を踏んでチャレンジしていくといいと思いますよ。香港ではトッピングに『イカボール』を入れるのが好きなんですが、残念ながら日本のメニューには採用されていないみたい。逆に、日本では香港にはない『うずらの玉子』があって、それを入れてみたら、とてもおいしかった。ぜひ入れてみてほしい」
いろいろなトッピングを試して新たな発見をしてほしいとJeffreyが提案する。
「クロスブリッジミーシェン(過橋米線)という“全部入り”みたいなメニューがあって、一度にたくさんの具材が試せます。ボリュームもたっぷりなので、2人でシェアするのもいいかも」
クロスブリッジは肉5種、海鮮2種、野菜5種、その他3種の計15種類のトッピングが入る、大満足の1杯だ。
「タムジャイサムゴーミーシェンを食べると、一気に香港に戻ったような感じがする。ホームシックになったときに食べたくなっちゃいますね」
ところで、香港に住むJeffreyは日本の音楽シーンや芸能界をどう見ているのか。
「日本のアーティストでは『ONE OK ROCK』とコラボしてみたいですね。それと、小さいころからドラマで見ていた堀北真希さんも大好きです(笑) 日本のみなさんとお会いする機会が増えて、たくさん来日できるようになるといいなと思っています」
まだタムジャイサムゴーを試したことのない人も多いはずだが、Jeffreyはこう勧める。
「日本には絶対にない味。一度試してほしい。きっと好みの味が見つかってハマるはずですよ!」
タムジャイサムゴー(譚仔三哥)新宿中央通り店
東京都新宿区新宿3-28-16 新宿コルネ坂詰ビル 1F・2F
03-3341-2772
https://www.tjsamgor.jp/
取材・文/土屋秀太郎 撮影/篠田麦也