「甘いのが当たり前」とされてきた、ペットボトル飲料のミルクティー。その常識を覆して、発売初日に500万本の販売数を記録! 砂糖の有無を選択したいというニーズを見事にキャッチした。
発売初日で500万本突破
キリンビバレッジ『午後の紅茶 おいしい無糖 ミルクティー』
173円/500mL
ダージリンとウバ茶葉の2種を各10%使用。爽やかな香りの紅茶とエスプレッソ抽出した紅茶をブレンドして奥深さを高め、それにミルクを適量加えることで、すっきりとした味わいとした。
キリンビバレッジ
マーケティング部ブランド担当
佐々木周平さん
多くの人に手に取ってもらうため、パッケージにもこだわった。「背の高いグラス」のイラストにすることで、ゴクゴクと飲める印象に。
「商品として無糖を謳うには、法定の基準を守る必要がありました」
ミルクティーは、カフェや喫茶店では、砂糖の有無を選択できるもの。一方、ペットボトル市場では加糖1択、無糖のミルクティーがなかった。そのギャップに気づき、無糖のニーズがあると考えて開発されたのが、『午後の紅茶 おいしい無糖 ミルクティー』だ。
「単純に砂糖を抜けば無糖のミルクティーが完成するわけではない、という点が一番大きなハードルでしたね。商品として無糖を謳うには、法定の基準を守る必要があります。実は、ミルクの中にも乳糖という糖分が含まれており、それが基準値を超えてしまうだけでも、無糖とは言えないのです」
メインで開発に携わったメンバーは、マーケティング担当2名、開発担当2名の計4名。無糖の基準をクリアするためのミルク原料や茶葉の新たな選定が必須。ミルクが濃厚なものもあれば、すっきりとした味わいのものもある。どのようなユーザーに、どういうシーンで飲んでもらいたいのか、明確にする必要があったのだ。
「『おいしい無糖シリーズ』が誕生したのは2011年。それをきっかけに食事のシーンや仕事中の水分補給としても飲める〝紅茶の可能性〟を広げてきました。そこで今回のミルクティーも、これまで同様、日常で飲むシーンを想定し、すっきりとした味わいとすることにしました」
しかし、〝無糖の基準値〟を達成するのは容易ではなかった。作っていく過程の中で乳糖が原因となり誤差が生じてしまうのだ。
「〝100%無糖〟と言い切れるようにするため、何度も議論を重ね、結果100回近く試作を繰り返しました。完成まで8年もかかってしまいましたが、自信を持ってお届けできる味になりました」
右が、2011年に発売された第1弾『午後の紅茶 おいしい無糖』。左は2020年デビューの『午後の紅茶 おいしい無糖 香るレモン』。発売以降、販売数は11年連続で伸長している。
イギリスのアフタヌーンティーの文化を日本にも取り入れようとしたのが『午後の紅茶』の起源。これまで紅茶を飲んでこなかった人との接点をつくり、紅茶を楽しむ文化を広げた。
取材してわかったヒットの要因
1:世の〝当たり前〟を疑う
「甘いのが当たり前」だったペットボトル飲料のミルクティーに疑問を抱いたのが開発の起結果、ユーザーにも気づきを与え、「これまでなかったのが不思議」とSNSで話題に。
2:明確な方向性を打ち出す
同じミルクティーでも濃厚なもの、すっきりとしたものもがある。日常的に飲んでもらうことを想定して後者を選択。味わいの方向性をしっかり決めたことで明確に指示を出せた。
3:従来の考えを見直すことも大事
無糖の基準値をクリアするため、従来の考えを見直すことに。新たなおいしさを創出するまで、諦めずに試作を繰り返した。
取材・文/編集部
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2023年9月30日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。