1周回って「ナウい」カルチャーとなったレコード文化。その波に乗って80年代に発売されていた〝あの〟レコードプレーヤーが復活。その開発過程はノリノリかと思いきや波乱万丈だった!!
7000台が即完売!人気を受けて継続販売へ
オーディオテクニカ『サウンドバーガー AT-SB727』
2万3980円(オンラインストア価格)
サイズ:W100×H70×D290mm、900g 接続方法:Bluetooth、有線
方式:ベルトドライブ 付属カートリッジ:ATN3600L 連続使用時間:12時間
1980年代に話題となった商品を2022年11月に復刻限定販売。すぐに完売となったため、通常販売された。当時と異なり、電源にはUSBを使用。Bluetooth機器にも対応する。
オーディオテクニカ
マーケティング部 プロダクトマネジメント課 コンシューマープロダクトグループ
(右)リーダー 國分裕昭さん、(左)佐藤賢磨さん
4人の開発メンバーの中から2人が語ってくれた。発売後も、どうやって商品を訴求していくか密にコミュニケーションをしている。
「通常モデルに掲げたのは、〝レコード文化を紡ぐ〟ミッションです」
アラフィフ世代の人なら、見た瞬間に「懐かしい〜♪」という声が思わず漏れるはず。それもそのはず、この『サウンドバーガー』は、1982年に発売されたポータブル・アナログレコードプレーヤーを復活させたもの。2022年11月に創業60周年を記念して全世界7000台限定で発売すると、瞬く間に完売。それを受けて、2023年6月に通常販売されたのだ。
「本体にレコード盤を挟んで聴くユニークなスタイルをハンバーガーに見立て、この商品名にしました。今も斬新ですが、40年前の発売当時も人気が高かったと聞いています」(國分さん)
80年代はレコードからCDに移行する端境期。製品寿命は短かったこともあり、復刻を望む声がたくさん届いていたという。
「実は社内では何度もリバイバルする企画が挙がっていました。そんな中、Z世代を中心にレコードやカセットテープが流行ったり、80年代カルチャーブームが起きたりしました。そんな市場的要因が後押しとなり、満を持して『サウンドバーガー』を開発に踏み切りました」(佐藤さん)
企画そのものはすんなり通った。が、始めた途端、壁にぶち当たった。当時の設計図面が社内に残っていなかったのだ。
「いかんせん40年前の代物ですからね……。なので、まず始めたのが当時の製品を分解して各パーツをひとつずつ測定すること。とはいっても定規などで測ったわけではありません。時代は令和! 3D測定器を使って正確に測定し、それをCADデータに落とし込んで3Dで設計しました」(國分さん)
復刻モデルなので、外観は寸分違わず再現。ただ、仕様は現代に即してアップデートすることに。
「当時は乾電池駆動だったのですが、これには充電式の内蔵バッテリーを組み込みました。加えて、ワイヤレスで聴けるようBluetooth機能と、それに伴うアンテナ基板も搭載することに。サイズは変えられないので、基板のレイアウトに苦労しました」(佐藤さん)
こうして完成した創業60周年を記念したモデルだが、そのヒットを受けて発売されることになった通常モデルも開発時に紆余曲折があったという。
「実は、全く異なるデザインにしようとしていたんです。〝インテリアマッチング〟なんて言葉を使って、ナチュラルカラーでリビングになじむデザインで進めていました。……が、ある日、開発メンバーの1人が『これって実は違うと思っている』と一言。しかも、開発の中期段階で! 『そんなことを言うなら、確かめてみよう』という話になり、社内のZ世代と、昔レコードを聴いていた世代にヒアリングしたんです。結果は、100%当時のデザインを踏襲したモデル。振り返れば、皆、薄々そんな気がしていたんだと思います。やっぱり、こっちだったって(笑)」(佐藤さん)
勇気あるひと言をきっかけに、わずか2〜3日で方向転換し、発売に漕ぎ着けた。
「このブームを一過性のものにしてならないと思っています。だから、この通常モデルには〝レコード文化を紡ぐ〟ミッションを掲げています。実は、すでに成功の兆しがあって、ウチの子が『円盤から音が出てる♪』とおもしろがっているんですよ(笑)」(國分さん)
Z世代はレコードを単なるインテリアにしている人が多い。そこで「壁に飾られているレコードを救え!」をテーマにしたビジュアルを製作した。
パッケージにもこだわる。裏ブタの模様は、商品名にちなんでハンバーガーの包み紙をイメージ。
好きな場所でレコードを楽しめるよう、ボディー側面に携行に便利な取っ手がついている。