【雑談力ゼロでもすぐにできる5つのこと】雑談に「観覧者」として参加する
「雑談=相手と話をすること」
これは、実は間違っています。無理して話さなくてもいい雑談もあるのです。
雑談は、話すだけではないのです。
雑談に臨むとき、たいていの場合は「ちゃんと発言しなくちゃ」「うまくコメントしなきゃ」と思いがちです。
でも、考えてみてください。
Aさん・Bさん・Cさん・Dさんがいたとします。
もしも4人ともが話好きで、それぞれ思い思いにしゃべり出したとしたら……
想像するだけでカオスです(ときどきそういう場に出くわします)。
「話す人」がいれば、それを受けとめる「聞く人」も必要。聞く人がいないと雑談は成り立ちません。
雑談には、「話す」という役割の人と、「聞く」という役割の人とがいます。
つまり、「聞く」も雑談のうちなのです。
だから、話すのが苦手な人は、積極的に「聞く人」になればいい。
そう考えると、「うまく話せない」という、しんどい気持ちから解放されるんじゃないでしょうか。
さらに、雑談には「聞く」以外の役割もあります。それが、「観覧者」という役割です。
3人組の漫才やコントを思い出してください。
2人組ではなく、なぜ3人組なのでしょうか。2人のほうが、ボケとつっこみがリズムよく進みそうなのに、なぜもう1人いるのでしょう。
実は、残りの1人は「観覧者」の役割をしています。
2人のやりとりを見て、同意したり、少し離れた立場からツッコんだり。
「話す人」「その話を聞く人」の他に、「そのやりとりを楽しむ人」という観覧者がいてこそ、さらに話が盛り上がっていくのです。
テレビのバラエティ番組に観覧者を入れることがありますが、あれは観覧者がいるほうが、場が盛り上がるからです。
同じように、場をにぎやかせるための「ガヤ」と呼ばれる人たちがいます。これも、番組を盛り上げているわけです。
雑談は、会議やプレゼンと違い、話をするときに、なんらかのリアクションがあったほうが、人は話しやすく感じます。
話すことがしんどい人は、「聞く役割」「観覧者として楽しむ役割」になればいいのです。
しゃべらなくてもいい。
うなずいたり、笑ったり、みんなの会話を一緒になって楽しんでいる。
そんな聞き手や観覧者がいることで、気持ちよく話せる人がいる。
これも、雑談には必要な、立派な役割です。
■みんな、自分の話を聞いてほしい
そもそも、自分の話を聞いてほしい人はたくさんいます。
世の中は、自分の話をしたい人であふれている。
これは、大事な真実なので二度言います。
多くの人の心の中には、「聞いて、聞いて!」という思いがあるのです。大の大人であっても!
聞いてくれる人がいると、普段恥ずかしがっているような人も雄弁になります。多くの人は、話す人より、聞いてくれる人を求めているのです。
だから、がんばって話をしようと努めるのではなく、少し考え方を変えてください。饒舌にしゃべれるようにはならなくていいのです。
「ちゃんと、あなたの話を聞いてるよ」という姿勢を見せるように心がける。
まずは、この一点さえできれば、それでOKです!
私の教え子で、アニメのプロデューサーの業務に就いている女性がいます。主な仕事は、多くのアニメーターと話をすること。
彼女から「聞き専」という言葉を教えてもらいました。
もとの意味は、リモート会議などで、マイクをミュート状態にして、人の話を聞くだけの人をさします。そこから派生して、「人の話を聞く専門の人」をさすようになったそうです。
彼女は、アニメーターや制作関係者と打ち合わせをするとき、まずは自分が「聞き専」になって、黙って話を聞くようです。
すると、「この人は、私の話を聞いてくれる!」と思った相手が、本音や日頃の不満を話し出すとか。
その話から、「聞き専」という一見受動的に見える態度が、人間関係には求められていると教えられました。
自分からうまく話せないことに、落ち込む必要はありません。
むしろ、「聞くプロ」「観覧者のプロ」を目指すくらいの気持ちで、まずは雑談に参加してみましょう。「聞き専」から雑談をはじめようじゃないですか!
相手が気持ちよく話せるような「聞き方」ができれば、それは立派な雑談上手と言えます。
〈ポイント〉
まずは、話を聞く。「聞き専」として雑談に加わる。
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雑談が上手い人が話す前にやっていること
著/ひきたよしあき/アスコム
ひきたよしあき
コミュニケーション コンサルタント。
スピーチライター。
大阪芸術大学芸術学部放送学科 客員教授。
早稲田大学法学部卒業。博報堂に入社後、クリエイティブディレクターとして数々のCMを手がける。
政治、行政、大手企業などのスピーチライターとしても活動し、幅広い業種・世代の価値観、世代間のギャップ、言葉遣いの違いなどを分析し、コミュニケーション能力が高まる方法を伝授する。
また、大阪芸術大学、明治大学、慶應MCCなどで教え、「はじめて『わかった!』と心の底から思えた講義」「一生ものの考える力が身につく」と学生や社会人から支持を集める。
教育WEB「Schoo」では毎回事前予約が約20,000人、朝日学生新聞社「みんなをつなぐ新聞WEB」では、毎回1,200人近い子どもと保護者が参加する人気。
著書に『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)、『大勢の中のあなたへ』(朝日学生新聞社)、『トイレでハッピーになる366の言葉』(主婦の友社)など。