日本人選手初のホームラン王獲得、WBC優勝、MVP受賞など先入観を覆し、不可能を可能にする大谷翔平選手の活躍はいつも我々に勇気を希望を与えてくれます。
私たちは、大谷選手が突然凄い才能を獲得したような錯覚を持ちます。しかし、事実はそうではありません。大谷選手はプロセスを徹底的に追求することの大切さを誰よりも理解しています。
「大きな夢は小さな目標の総量である」、つまり「結果」ではなく「プロセス」に意識を置いているのです。「小さな目標の実現」に果敢に取り組む。その小さな習慣こそが偉大な成果を上げる必須の要素ということだと思います。
昨日より今日、今日より明日。自分史上最高の自分にめぐり逢うための「ポジティブ思考」の神髄に迫る話題の書籍『「できない」を「できる」に変える大谷翔平の思考法』。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、自分を成長させる大谷選手の思考法を解説していきます。
【大谷翔平選手の成功思考の秘訣を教えよう】良くないことを好転させる大谷選手の心理から学ぶこと
大谷選手は、常に自分が「楽しいかどうか」という判断基準に照らし合わせて物事を決定します。もちろん、彼にはプロに入る前からの座右の銘である「何事も“楽しい”よりも“正しい”で判断する」という判断基準が存在します。
つまり、最初の判断基準である「正しい」をまず最優先させて、正しいものの中から「楽しいこと」を見つけ出して、行動の最終判断をするという感覚なのです。
この行動が正しいかどうかをまず自分で判断して、それらの中から楽しいものだけをピックアップして、優先度の高い行動から率先して行っていく。これこそが大谷選手の行動パターンを支えているのです。
メジャー1年目の2018年シーズンに、大谷選手は6月に肘の違和感を覚え、DL(故障者リスト)入りとなります。そして、それから88日後の9月2日、敵地アストロズ戦で大谷選手はマウンドに上がります。
そしてその2回、アストロズの6番打者、マーウィン・ゴンザレス選手の打ったピッチャーフライに思わず大谷選手は右手を差し出し、ボールが右手薬指を直撃。3回に大谷選手の投げる球速が落ちたため、この回で降板となります。これが結果的にトミー・ジョン手術につながったのです。このことについて大谷選手はこう語っています。
「バッターを抑えられるのかどうかもそうでしたけど、この状態で投げていて、自分の中に楽しいイメージが湧くかどうか……それは打球が右手に当たったこととは関係ありません。試合前から違和感がありましたし、それは普通なら試合で投げられる程度のものでした。その原因が靱帯にあるなら、そういうピッチングが楽しいのか。今までも張りを感じたときに球速が落ちるなと感じたことはありましたし、これから先発ピッチャーをやっていく上で、それではこっちのバッターを抑えられません。あの試合、投げていてそういうイメージしか湧かなくて、これは楽しくないなと思ったんです」(『雑誌ナンバー2018・10・25号』文藝春秋)
トミー・ジョン手術を最終的に決断したのは大谷選手です。もしもこの手術をしなかったら、ピッチャーとして投げていて楽しめない。その判断基準を彼は最優先させたのです。
前に紹介したように心理学のさまざまな実験で、「行動した後悔」よりも「行動しなかった後悔」のほうが悔いが残るという結論が出ています。このことについても、大谷選手はこう語っています。
「もしもあの9月2日の試合に投げていなかったら、結論を来年に持ち越して、キャンプで投げてやっぱりダメだとなって、来シーズンの1年間何もできなかったかもしれません。そうやって考えると、何がよくて、何が悪いのかなんてわからないと思うんです。こういうことになって、手術を受けることに決めた……それ以外のことは何もない。そこにタラレバはないんです」(『雑誌ナンバー2018・10・25号』文藝春秋)
あなたの人生には、よいことばかりが起こるわけではありません。むしろ、予測し得ないよくないことが起こる。それが人生です。
あらかじめ、「これだけは譲れない!」という判断基準を決めておく。そうすれば、どんな不測な事態が起こっても、後悔を最小限に抑えることができます。
このとき、正しいかどうかはもちろん、大谷選手のように楽しいかどうかを最終の判断基準にすることにより、後悔を最小限に抑える決断ができるのです。
ハワイ大学の心理学者エレイン・ハイビー博士によると、よくないことに見舞われてもモチベーションを落とさず着実に成果を上げるタイプが存在するそうです。彼らの共通点を探ると、「自分を褒める能力」であることが突きとめられました。
自分で自分を褒めることは、その気になれば、すぐにでも実行できます。
具体的には、就寝前の10分間を活用して記入する、「自分を褒める日記」(図表8)を活用しましょう。やり方は簡単です。その日自分が行った善行をできるだけ簡潔、かつ具体的に記入すればいいのです。
記入項目は3種類。「今日、自分が一生懸命やれたこと」「今日、自分が他人にしてあげた善行」「今日、ありがとうと言えたこと」について具体的に記入していきましょう。
普段から自分を褒める習慣を身につけることにより、意外と逆境耐性のある人間になれるのです。
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いかがでしょうか?
大谷選手を超一流のアスリートへ飛躍させた思考法にはビジネスパーソンも学ぶことも多いと思います。ぜひ日々の小さな目標の実現を目指して一歩一歩、「できない」を「できる」に変える努力をしてもらえればと思います。
さらに詳しい解説は児玉光雄さんの著書、『「できない」を「できる」に変える大谷翔平の思考法』をチェックしてみてください。
「できない」を「できる」に変える大谷翔平の思考法
著/児玉光雄/アスコム
児玉光雄
1947年兵庫県生まれ。追手門学院大学スポーツ研究センター特別顧問、元鹿屋体育大学教授。京都大学工学部卒。大学時代はテニスプレーヤーとして活躍し、全日本選手権にも出場。カリフォルニア大学ロサンジェルス校(UCLA)大学院で工学修士号を取得。米国五輪委員会スポーツ科学部門本部の客員研究員として、米国五輪選手のデータ分析に従事。過去30年以上にわたり、臨床スポーツ心理学者として、ゴルフ、テニスを中心に数多くのアスリートのメンタルカウンセラーを務める。また、右脳活性プログラムのカリスマ・トレーナーとして、これまで数多くの受験雑誌や大手学習術に右脳活性トレーニングを提供。この分野の関連書は100冊以上、累計発行部数は150万部を越える。主な著書はベストセラーになった『この一言が人生を変えるイチロー思考』(知的生きかた文庫)をはじめ、『大谷翔平 勇気をくれるメッセージ80』(三笠書房)、『能力開発の専門家が作ったそうぞう力とさんすう力がみるみる育つこども脳トレドリル』『頭がよくなる!「両利き」のすすめ』(いずれもアスコム)など200冊以上。日本スポーツ心理学会会員、日本ゴルフ学会会員。
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