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ギュギュッと肉感を凝縮!パティをプレス器で押し焼く〝スマッシュバーガー〟の魅力

2023.11.12

牛を丸々一頭買い!焼肉屋が始めた和牛バーガー
「HENRY’S BURGER 自由が丘」(東京・自由が丘)

代官山と自由が丘に2店舗展開する「ヘンリーズバーガー」は、焼肉屋が母体のハンバーガー屋だ。もともと焼肉屋で使用する牛肉を一頭買いしており、その端材を活用して何かできないかと、コンビーフを作ったり、カレーを作ったりと試行錯誤を重ね、恵比寿にメンチボール専門店をオープン。経営は順調だったが、都市開発により退去を余儀なくされて、次の一手を迷っていた。

そんな折、代表の中原健太郎氏の頭をよぎったのが、スマッシュバーガーだった。中原氏は幼少期をアメリカ・カリフォルニア州で過ごしたそうだ。現地ではハンバーガーといえばスマッシュバーガーで、中原氏も慣れ親しんだ食べ物だったのだ。

焼肉屋は肉のプロであるとはいえ、ハンバーガーに関してはズブの素人。中原氏の当時の苦労の様子を知る大竹氏によれば、バーガーの開発には長期間を要したそうだ。

1頭買いにて牛肉を仕入れている。品評会で受賞した牛を落札すると、記念の置物が贈呈されるのだとか。

「ハンバーガー屋は老舗で修行してから独立するパターンが多いですが、中原は何のノウハウも知らないままイチから始めました。最初はパティをスマッシュしても肉がボロボロになってしまって形にならず、相当苦労したそうです。最初は焼くための機械をどこで手に入れるのかもわからなかったから、フライパンや、ビビンバ用の石で焼いて試作していたそうですよ」(ヘンリーズバーガー最高執行責任者 大竹哲平氏)

ちなみに大竹氏は中原氏の経営する焼肉屋「炭火焼肉なかはら」で料理人を勤めていた。2019年のヘンリーズバーガー立ち上げ時には店を離れていたが、大竹氏は昔から大のハンバーガー好きでグルメバーガー事情に詳しかったため、中原氏から試作の相談を逐一受けていた。そういった経緯で、時を経て事業に合流するかたちとなったそうだ。

では、ハンバーガーに話を戻そう。とくに和牛は脂を豊富に含んでいるため、熱で脂が溶けだすとひき肉がほどけてかたまりにくくなってしまうという問題を抱えていた。ある日の試作時、フライパンを斜めに構えて肉をスマッシュしていると、溶け出した脂が端に溜まり、パティがちゃんと成形できた。これをヒントに現在の鉄板のかたちにたどり着いたという。

「うちの鉄板は斜めに角度がついているのが特徴で、余分な脂が流れることでひき肉が結着し、和牛でありながら重たくない味わいを実現しています。鉄板の温度も、通常だと220〜230℃までしか上げられないところ、250℃以上の高温で一気に焼き上げることで香ばしい焦げ目をつけて、お肉の美味しさを引き出しているんです」

「和牛-Wagyu(ダブル)」1630円、シングルは1080円、トリプルは2180円。ポテトとドリンクのセット(COMBO A)は+530円。

ヘンリーズバーガーで扱っている牛肉のバーガーは、1種類のみ。和牛を中心に、肉の旨味に寄り添うシンプルな野菜とさっぱりとさせるソース、和牛の脂によく合うコクの強いチェダーチーズ、それらを包み込む、ほんのり甘くて主張しすぎないバンズという構成で組み立てられている。

「パン屋さんに協力してもらって、バンズの試作は10回以上、開発に半年を要しました。モチモチとしたバンズだと、脂や水分を吸うとベシャッとして重たくなってしまう。そのあたりもちゃんと計算して、バンズ自体は気泡が多くかなり軽めに作ってありますし、和牛の脂の甘みとバランスをとって、バンズの甘みを少し強くしています」

具材は上から順に、オーロラソース、トマト、グリーンカールレタス、チェダーチーズ、パティ、チェダーチーズ、パティ。ガブッとかぶりつくと、オーロラソースとトマトの酸味がふわっと広がり、噛むほどに和牛の旨味と香りが湧き上がってくる。パティは1枚100g、2枚で200gもあるわけだが、まったく重たさを感じずに食べ進められた。

「胃にもたれにくいので年配の方でもリピートしていただいていますし、小さなお子さまは、少々ピリッとするオーロラソースを抜けば安心して食べられます」

最近は訪日観光客の客足も復活し、ハンバーガーを食べに来るというよりは、ジャパニーズソウルフードである「和牛」を求めてやって来る人が多いという。

「ほかにも選択肢がたくさんあるなかで、当店を選んで来てくれるのはとても光栄なことです。今後はより視野を広げて、日本の食を世界に発信していきたいと考えています」

赤を基調とした、アメリカンダイナーのようなおしゃれな店舗。酒販免許をもつスタッフが常駐しており、クラフトビールの提供・販売も行っている。

新たな試みとして、23年3月から豚肉を使ったスマッシュバーガー「和豚-Waton-」の提供を開始した。使用しているのは岩中豚という岩手県産の無菌豚で、臭みが少なく、脂の融点が低く柔らかい口当たりが特徴だという。そんな豚ひき肉のパティをスマッシュし、目玉焼きと柚子入りの照り焼きソースを組み合わせた、和風仕立ての一品となっている。

「今までは和牛にこだわり続けていましたが、日本を代表する美味しい食材を使ったメニューをもっと増やしていきたい。その第一歩が和豚です。もし和牛や和豚のスマッシュバーガーを海外の食イベントに出展する機会があれば、日本のクラフトビールなどドリンクとのペアリングで提案してみたいです」

次は和牛パティの枚数を増やそうかな、和豚も試してみたい、ビールと一緒に夜バーガーもいいな…。そんな、一度食べると次々と欲が出てくるような、胃の底から美味いとわからせる魅惑のバーガー。胃もたれが不安な大人にこそ、ぜひ食べてみてほしい。

ヘンリーズバーガー自由が丘
東京都目黒区自由が丘2-8-8 le ciel bleu 1F
営業時間:11:00〜20:00
公式サイト

取材・文/清談社 松嶋千春

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