アメリカを中心にブームを巻き起こしている〝スマッシュバーガー〟。あまり耳馴染みがないかもしれないが、有名どころだと、2015年に日本上陸したNY発のハンバーガーブランド「シェイクシャック」の看板メニュー「シャックバーガー」もスマッシュバーガーである。スマッシュバーガーとは、パティを鉄板の上に置き、その上からプレス器で押し焼くスタイルで提供されるハンバーガーのことで、カリッとした香ばしい焼き目が持ち味だ。スマッシュバーガーを扱う注目の3店舗を訪問し、個性溢れるバーガーの魅力をお届けする。
〝焼き目〟こそが最高の調味料 元力士が手がける
「K’ingsman」(東京・春日)
1店舗目は、春日駅から徒歩5分ほど本郷の菊坂通りに位置する「K’ingsman(キングスマン)」だ。元力士である店主の池田圭介氏が一念発起し、2022年12月にオープン。ディナータイムは2カ月以上の月日をかけて店内で熟成させた熟成肉のステーキや創作料理を提供し、ランチタイムはバラエティに富んだ6種類のスマッシュバーガーを提供している。
ランチタイム限定のスマッシュバーガーのパティは、デイリーで食べても胸焼けしにくいバーガーを目指し、オーストラリア産牛肉と国産豚を絶妙な割合で配合しているという。
「お肉がオイリーなほうが食べた時には美味しく感じますが、牛の脂は旨味が強いものの胃にはちょっと重たく感じてしまいます。なのでパティは牛の赤身をメインに、それだけだとパサパサしてしまうので、食感のいい豚肉で脂身を足してジューシーさを加減し、食べやすく仕上げています」(池田圭介氏、以下同)
お店の構想を始めた当初から、池田氏は「ハンバーガーを作るなら絶対にスマッシュ」と決めていたそうだ。
「パティを成形して焼くと、水分の多いフレッシュなお肉だと焼き縮みして、焼き目が綺麗に入りにくい。けれどスマッシュというのは、わざとパティを鉄板にこびりつかせながら焼くので、焼き目が全体にしっかり入ります。僕は、肉でもパンでも、焼き目が入ってこそ美味しいと思っているので、店でハンバーガーを扱うならスマッシュしかないと思っていました」
キングスマンのスマッシュバーガーのラインナップは、もっともスタンダードなチーズバーガー「プレジデント」、フレッシュな野菜を多用し、サンドイッチ感覚で食べられる「ファーストレディ」などがあるが、今回は、きのこの香りと肉の旨味を押し出した「マッシュルーム」をチョイスした。
「マッシュルーム(ダブル)」1700円。シングルは1200円。
「マッシュルームとオニオンは塩とオイルで炒め、パティの下味も塩胡椒だけ。あとは自家製マヨネーズのみという、いたってシンプルな味付けです。どのメニューもそうですが、バーガーの味が分散してしまわないよう、余計なものは極力削ぎ落として作っています」
ボール状に丸めたパティを上からジュッとプレスし、焼き目がつくまで火を通し、もう片面はあっさり火を通す程度。マッシュルームとオニオンは強めにソテーして、焦げ目をつける。チェダーチーズも鉄板に直に置いて火を通すのがこだわりだ。鉄板で具材を焼いている間、ゴマがまぶされたバンズをオーブンで香ばしく焼き上げ、具材とドッキングさせる。
「チーズを溶かすのに、鉄板の上のパティにチーズを乗せドーム状の蓋をかぶせて蒸すやり方もありますが、そうすると必然的に、せっかく入れた焼き目が死んでしまうので、うちではチーズに直に火を入れています。また、パティの脂を控えめにしているので、お肉のジューシーさを保てるよう、火を入れすぎない最適なバランスで焼き上げています」
表面はパリッとしていながらふかふかのバンズ、焦げ目によりワイルドな食感のパティはワシワシと噛みしめるごとに肉の風味が感じられ、マッシュルームの旨味に、オニオンもいいアクセントとなっている。まさに、池田氏が大切にしてる「焼き目の旨味」を実感できる一品だ。
店主の池田圭介氏。店名の「K’ingsman」には、名前の頭文字のKに「この場所で高みを目指して進み続ける男」という意味が込められているという。
シアトル発・スレイヤー社のエスプレッソマシンを導入しており、コク深い味わいのコーヒーも楽しめる。黒と緑を基調とした店内には、力士にちなんだアートが散りばめられており、思わず写真におさめたくなるはず。スタイリッシュな空間で、スマッシュバーガーとコーヒーをぜひ嗜んでみては?
K’ingsman(キングスマン)
東京都文京区本郷4-28-9
営業時間:ランチ/11:30〜15:00(DoorClose 14:30)、ディナー/18:00〜22:00(DoorClose 20:00)
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