今年5月にNetflixで配信され、大ヒットを記録した本格相撲ドラマ「サンクチュアリ -聖域-」。1年以上にわたって身体づくりをした俳優陣の巧みな演技、斬新なカメラワーク、広大なセットやVFX演出などが見事に融合し、大相撲のリアリティーを大胆に描き出した。
中でも視聴者の心を掴んだのは、生々しい肉体のぶつかり合い。相撲の真髄が激しく表現されていた点だろう。
それは今までに見たことがない相撲アクションであり、相撲ドラマだった。そんな『相撲のリアル』を演出していた一人、相撲コーディネーターの網谷勇志さんに今回、話を聞くことができた。
相撲ファンをも唸らせる、あの“男臭いぶつかり合い”はいかにして生まれたのか?そして「相撲コーディネーター」という仕事とは?世界的名作に携わった網谷さんにその全てを語ってもらった。
「サンクチュアリ」の激しいぶつかり合いはこうして生まれた
これまで「サンクチュアリ -聖域-」を始め、Disney Plus「シコふんじゃった!」などに相撲コーディネーターとして参加した網谷さん。仕事のスタートは意外な場所だったという。
「最初に相撲コーディネーターとして仕事したのは実は日本ではなく、アメリカなんです。大学卒業後の約5年間アメリカに住み、そこで相撲に関わる仕事をしていました」
「2017年に『Hail Mary! Sushi Tushi or How Asia Broke Into American Pro Football』という映画に参加し、出演もしたのですが、その時が初めての相撲コーディネーターとしての仕事でした」
――具体的な仕事内容とは?
「作品の“相撲に関わる事全て”です。キャストへの相撲指導、動作指導、作品内で実際に行われる相撲演出の考案、その他セットの小道具についての相談や演出に対して、相撲目線での意見を言うことも。とにかく相撲に関する全てに何かしらの形で絡んでいます」
「基本的には撮影前の準備段階から参加し、撮影が始まったら現場で監督の横に座って相撲シーンをモニターで確認。不自然な箇所を見つけたら、リテイクをお願いすることもありますね。スタッフのミーティングにも毎回参加するので結構忙しいお仕事です」
そんな網谷さんは幼い頃から相撲を経験し、中学時代は全中で個人優勝。「中学横綱」というタイトルを獲得した。さらに高校のインターハイでは団体戦で優勝。日大相撲部の副主将も務めた経歴の持ち主。
まさに「相撲コーディネーター」の名に相応しい経歴だが、「サンクチュアリ」で相撲演出&監修を務めることになった経緯とは?
「元々はキャストとしてオーディションに参加したのがきっかけです。その時は「面白そうだな」と言う軽い気持ちでオーディションを受けたのですが、そこで最終選考に残ってからは、他のキャストに相撲指導を頼まれるようになりました」
「相撲経験も国内外で十分ありましたし、自分で言うのもなんですが教えるのは上手い方だとは思います。そこから段々と相撲に関する様々なことを頼まれるようになり、気づいたらキャストというよりメインスタッフの1人になっていたという感じですね」
「サンクチュアリ」では撮影期間が約1年間、その前の準備期間が更に約1年。つまり、丸2年、相撲コーディネーターとして作品に関わっていたという。
そんな網谷さんが、世界中を虜にした相撲ドラマで特にこだわったところは?
「世界でも初めての本格的な相撲ドラマだったので、そういう意味でも相撲の「カッコよさ」を伝えられるようにと思って仕事をしていました。結果としてこれまで誰も見たことの無かった、相撲の本格的なドラマが誕生したと自負しています」
「特に見て欲しいところは、やはり相撲の取組シーンですね。普段皆さんが目にすることがないようなアングルやカットで相撲の取組がたくさんあります。これは相撲ドラマならでは。テレビ中継では相撲のアングルはいつも決まっているので、全てのアングルとカットにキャストとスタッフが全力で取り組みました。本当にカッコいい映像になったと思います」