こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。
セクハラ裁判例を解説します。
長崎県の高校で炸裂したセクハラです。被害に遭ったのはアメリカ国籍を有する外国語指導助手(女性)。以下のセクハラを受けました。
・教頭がカラオケで「俺んとこ、こないか?」と氣志團バリのことを言う。
・講師がベッドに押し倒して首にキス
裁判所
「長崎県よ、50万円はらえ」
以下、分かりやすくお届けします(長崎県事件:長崎地裁 R5.1.24)。
※ 争いを一部抜粋して簡略化
※ 判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換
登場人物
■ セクハラ被害者
・Xさん(女性)
外国語指導助手
アメリカ国籍
■ セクハラ加害者
・Y教頭(男性)
・Zさん(男性)
外国語指導助手
イギリス国籍
Xさんとは別の高校に所属
上記2名のセクハラを見ていきましょう。
Y教頭のセクハラ
文化祭の打ち上げが行われました。1次会には職員25人くらいが参加。その後の2次会には10人くらいが参加しました。その店にはカラオケがありました。セクハラが頻発するシチュエーションですね。席が命運を分けますよね。
―― Xさん、セクハラ教頭から何をされたんですか?
Xさん
「教頭が歌ったときに、私の顔まで約20〜30センチのところに教頭の顔を近づけてきたんです」
【加齢臭接近セクハラ】と呼ばれているやつですね。
―― あとは?
Xさん
「教頭が私に対して『Do you want to come with me?』みたいなことを言ったんです」
和訳すると「あなたは私と一緒に家に来たいか?」ですね。氣志團訳すると「俺んとこ、こないか?」……ワンナイトカーニバルを狙っていたのでしょうか。教頭はカナリ酔っていたようで、2次会の途中からは眠るありさまでした。
後日、Xさんが他の教員に相談。校長にも伝わり、教頭は校長室でXさんに謝罪。Xさんは「職員室での座席を教頭から離してほしい」と要望し、実現しました。無事、顔面が30センチ以上離れました。
他校のZ講師のセクハラ
講師たちは、高校が主催するイングランドセミナーに向けた練習をしていました。そこで、歌の練習のために、XさんはZさんの自宅に行ったんです。
ガチャ。危険です。午後2時〜4時くらいまでの間、歌の練習をしました。
Xさんは、練習を終え、Zさんとハグをしました。たぶん社交辞令ハグです。
すると!Zさんが豹変。Xさんの首にキスをして「あなたの犬もこんなふうにするのか」みたいな発言をしました。さらにZさんはXさんの口にキスをしようとしてきたので、Xさんは顔を背けました。
Zさんは止まりません。さらにXさんを抱えてベッドに連れていき「I still want to do what I want with you」と言い、手でXさんの肩を押さえつけながら首にキスをしました。
Xさんは「恋人がいる」と言いましたが、Zさんは「それは知っている。だけど、今は忘れよう」と、ラブソングのような返しで対応、Xさんの口にキスしようとしました。
しかしラブソングはXさんに届かず。XさんはZさんを押しのけ家を飛び出しました。
訴訟を提起
Xさんは長崎県に対して損害賠償請求しました。Y教頭とZさんは長崎県立の学校で勤めていたので、Xさんは長崎県を訴えました。