日本人選手初のホームラン王獲得、WBC優勝、MVP受賞など先入観を覆し、不可能を可能にする大谷翔平選手の活躍はいつも我々に勇気を希望を与えてくれます。
私たちは、大谷選手が突然凄い才能を獲得したような錯覚を持ちます。しかし、事実はそうではありません。大谷選手はプロセスを徹底的に追求することの大切さを誰よりも理解しています。
「大きな夢は小さな目標の総量である」、つまり「結果」ではなく「プロセス」に意識を置いているのです。「小さな目標の実現」に果敢に取り組む。その小さな習慣こそが偉大な成果を上げる必須の要素ということだと思います。
昨日より今日、今日より明日。自分史上最高の自分にめぐり逢うための「ポジティブ思考」の神髄に迫る話題の書籍『「できない」を「できる」に変える大谷翔平の思考法』。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、自分を成長させる大谷選手の思考法を解説していきます。
【大谷翔平選手に学ぶ夢をかなえる目標設定理論】「目的」と「目標」の違いを理解しよう
多くの人々が「目的」と「目標」の違いを誤解しています。辞書で「目的」を調べてみると、「最終的に目指す到達点」と記されています。一方、「目標」は、「目的を達成するために設けた手段」となっています。
私の知る限り、大谷選手は、自分の人生の目的について明確には語っていません。しかし、彼のさまざまな発言を分析した私の見立てでは、「自分史上最高の投手と打者になる」ことにつきるのではないかと思います。これは引退するまでバージョンアップしていけるもの。つまり、この目的にはゴールというものがないのです。
一方、大谷選手の目標は、たくさん存在します。彼は自分の目標についても明確に語っていませんが、私が推測するには、「今シーズンのメジャーリーグのMVPになる」「今シーズン最多勝投手になる」「今シーズンホームラン王になる」といった複数の目標になるでしょう。目標には必ず期限がつきます。つまり目標は自分の目的を実現するための道しるべなのです。
目的と目標で重要なのは、目標のほうです。「人生の目的」を言い換えると、「抱いた夢の実現」という表現が近いでしょう。実は、目的は少ないほうがいいのです。
一方、「人生の目標」を言い換えると、「日々の行動」になるでしょう。目的と違い、目標はたくさんあったほうがいいのです。なぜなら小刻みに多くの目標を設定すると、今自分がどの位置にいるかが客観的に測れるからです。
たとえば、大谷選手の「ホームラン」というテーマの目的は、「できるだけ多くのホームランを打つこと」になります。一方、目標のほうは「投手の投げたボールをバットの芯で捉えること」になります。どちらが大事か? もちろん、大事なのは「目標」です。
皆さんは不思議に思われるかもしれませんが、大谷選手はホームランを打つことを目的にはしているけれど、「ホームランを打ちたい!」という意識はあまりありません。なぜなら、それは自分でコントロールできないからです。
目標であるバットの芯でボールを捉えることは日々の練習でその気になればコントロールできます。つまり「ボールをバットの芯で捉える」という目標は自分の身体とつながっているのです。「バッターとして心掛けていること」について、大谷選手はこう語っています。
「自分の理想のバッティングというのは、データを活用しないのがベストだと思っているので、相手が何を投げてくるとか、どこに投げてくるとか全然関係なくて、ベース盤の上を通るボールを何も考えずにホームランに出来るというのが究極のスタイルじゃないかと思っている」(NHK スペシャル「メジャーリーガー大谷翔平自ら語る挑戦の1年」)
「目的は目標を次々に実現したご褒美でしかない」と、私は考えています。自らの行動を通して目標を次々に実現して、初めて目的達成というご褒美が手に入るのです。私は、イギリスの作家ロバート・スティーブンソンの以下の言葉が大好きです。
「希望に満ちて旅行することが、目的地に到着することより、良いことである」
「夢を実現する」という目的だけに酔っている人は、大抵目的を実現することはできません。なぜなら、この人は目標を軽視しているからです。
結論です。理屈抜きに目的の実現に導いてくれる日々の小さな目標を設定して、その目標を達成するための行動を起こして確実にそれをやり遂げる。これこそ、あなたの夢実現という目的を達成する、ひょっとしたら唯一の具体策かもしれません。
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いかがでしょうか?
大谷選手を超一流のアスリートへ飛躍させた思考法にはビジネスパーソンも学ぶことも多いと思います。ぜひ日々の小さな目標の実現を目指して一歩一歩、「できない」を「できる」に変える努力をしてもらえればと思います。
さらに詳しい解説は児玉光雄さんの著書、『「できない」を「できる」に変える大谷翔平の思考法』をチェックしてみてください。
「できない」を「できる」に変える大谷翔平の思考法
著/児玉光雄/アスコム
児玉光雄
1947年兵庫県生まれ。追手門学院大学スポーツ研究センター特別顧問、元鹿屋体育大学教授。京都大学工学部卒。大学時代はテニスプレーヤーとして活躍し、全日本選手権にも出場。カリフォルニア大学ロサンジェルス校(UCLA)大学院で工学修士号を取得。米国五輪委員会スポーツ科学部門本部の客員研究員として、米国五輪選手のデータ分析に従事。過去30年以上にわたり、臨床スポーツ心理学者として、ゴルフ、テニスを中心に数多くのアスリートのメンタルカウンセラーを務める。また、右脳活性プログラムのカリスマ・トレーナーとして、これまで数多くの受験雑誌や大手学習術に右脳活性トレーニングを提供。この分野の関連書は100冊以上、累計発行部数は150万部を越える。主な著書はベストセラーになった『この一言が人生を変えるイチロー思考』(知的生きかた文庫)をはじめ、『大谷翔平 勇気をくれるメッセージ80』(三笠書房)、『能力開発の専門家が作ったそうぞう力とさんすう力がみるみる育つこども脳トレドリル』『頭がよくなる!「両利き」のすすめ』(いずれもアスコム)など200冊以上。日本スポーツ心理学会会員、日本ゴルフ学会会員。
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