日本人選手初のホームラン王獲得、WBC優勝、MVP受賞など先入観を覆し、不可能を可能にする大谷翔平選手の活躍はいつも我々に勇気を希望を与えてくれます。
私たちは、大谷選手が突然凄い才能を獲得したような錯覚を持ちます。しかし、事実はそうではありません。大谷選手はプロセスを徹底的に追求することの大切さを誰よりも理解しています。
「大きな夢は小さな目標の総量である」、つまり「結果」ではなく「プロセス」に意識を置いているのです。「小さな目標の実現」に果敢に取り組む。その小さな習慣こそが偉大な成果を上げる必須の要素ということだと思います。
昨日より今日、今日より明日。自分史上最高の自分にめぐり逢うための「ポジティブ思考」の神髄に迫る話題の書籍『「できない」を「できる」に変える大谷翔平の思考法』。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、自分を成長させる大谷選手の思考法を解説していきます。
【大谷翔平選手のような一握りの超一流の人たちの共通点】内発的モチベーションこそ、成功実現に不可欠な要素
心理学における最重要テーマの一つは、「モチベーション論」であり、これは本書の重要テーマの一つです。大谷選手の成功思考の一つが「モチベーション」であることは言うまでもありません。
同じ仕事を同じ時間やっても人により成果は異なります。しかし、それを能力の違いと片付けてしまうのでは成長はあり得ません。野球に対する心構えが他の選手と大きく違っていたから、大谷選手は突出したプレーヤーになり得たのです。
2019年5月に肘の手術から復帰した後、しばらく調子が出なかったことに触れて、大谷選手はこう語っています。
「わかっていてできるのが天才なら、僕はわかっていてもできないのでたくさん練習しなきゃいけない。練習はそのためにある、ということなんじゃないですかね」(『雑誌ナンバー2019・6・27号』文藝春秋)
モチベーションを大きく分類すると、「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」に分類できます。「内発的モチベーション」とは、内面から湧き上がる自然発生的なモチベーションのこと。このことに関して、2021年シーズンの後半、大谷選手はこう語っています。
「今年、このまま順調にいけば、おそらくキャリアハイの数字は残ると思いますし、逆に言えばそれがこれからの自分の中の基準になるんじゃないですかね。それを常に更新し続けていくことが目指す数字ということになっていくのかなと思います」(『雑誌ナンバー2021・09・24号』文藝春秋)
この大谷選手の言葉からもわかるように、「自分史上最高記録の更新」はとてもシンプルで自分を奮い立たせてくれる魅力的な「内発的モチベーション」の典型例です。
このことに関して、モチベーション理論の世界的権威ダグラス・マグレガー博士は、こう語っています。
「外発的動機付けで勤務態度を向上させることはできない」
金銭報酬などの「外発的モチベーション」は、「内発的モチベーション」を超えることはないのです。確かに、「外発的モチベーション」は、即効性はあるのですが、長続きしません。外発的モチベーションの典型例は報酬による動機付けです。このことに関して、小学生を対象にある実験が行われました。それは、本を一冊読むごとに2ドルのお小遣いをあげるという実験です。
この条件を設定して本を読ませると、最初小学生は熱心に読書に取り組みましたが、それは長続きしませんでした。しかもタチの悪いことに、そのご褒美を止めた途端、元々自発的に読書していた子どもたちも、それ以降本を読まなくなってしまったのです。
つまり、本来ご褒美がなくても自発的に本を読むことができた小学生にご褒美をあげてしまうと、ご褒美を止めたとき、ご褒美がなくても実行できた行動そのものまでできなくなってしまったのです。
また、こんな実例もあります。アメリカのある町で子どもたちがあまりにも本を読まないため、それを解消するあるアイデアが実行されました。それは「一定期間内に本を10冊読んだら、ピザのただ券をあげる」というアイデアでした。
何人かの子どもたちはピザにありつけましたが、彼らはその期間内に、自分が興味のある本よりも薄っぺらい簡単に読める本を10冊選びました。結果として、彼らの読書量を増やすどころか、手っ取り早くピザを手に入れるための姑息な手段に走らせてしまったのです。
つまり、読書すればピザにありつけることを知って、「読書」よりも「ピザ」のほうが価値があると考えてしまったのです。
それなら、むしろピザを10枚一定期間内に食べたら、好きな本を一冊プレゼントするというアイデアのほうが素晴らしいのです。
なぜなら、子どもたちは好きな本が読めるだけでなく、ピザ屋も潤う一石二鳥のアイデアになるわけですから。著名な医学者ジョナス・ソーク博士はこう語っています。
「行動への最大の報酬は、その行動をさらに続けられるようになることだ」
結論です。大谷選手のようなパイオニアにとっての報酬とは、「常識を覆すパフォーマンスを実現するための行動そのもの」なのです。
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いかがでしょうか?
大谷選手を超一流のアスリートへ飛躍させた思考法にはビジネスパーソンも学ぶことも多いと思います。ぜひ日々の小さな目標の実現を目指して一歩一歩、「できない」を「できる」に変える努力をしてもらえればと思います。
さらに詳しい解説は児玉光雄さんの著書、『「できない」を「できる」に変える大谷翔平の思考法』をチェックしてみてください。
「できない」を「できる」に変える大谷翔平の思考法
著/児玉光雄/アスコム
児玉光雄
1947年兵庫県生まれ。追手門学院大学スポーツ研究センター特別顧問、元鹿屋体育大学教授。京都大学工学部卒。大学時代はテニスプレーヤーとして活躍し、全日本選手権にも出場。カリフォルニア大学ロサンジェルス校(UCLA)大学院で工学修士号を取得。米国五輪委員会スポーツ科学部門本部の客員研究員として、米国五輪選手のデータ分析に従事。過去30年以上にわたり、臨床スポーツ心理学者として、ゴルフ、テニスを中心に数多くのアスリートのメンタルカウンセラーを務める。また、右脳活性プログラムのカリスマ・トレーナーとして、これまで数多くの受験雑誌や大手学習術に右脳活性トレーニングを提供。この分野の関連書は100冊以上、累計発行部数は150万部を越える。主な著書はベストセラーになった『この一言が人生を変えるイチロー思考』(知的生きかた文庫)をはじめ、『大谷翔平 勇気をくれるメッセージ80』(三笠書房)、『能力開発の専門家が作ったそうぞう力とさんすう力がみるみる育つこども脳トレドリル』『頭がよくなる!「両利き」のすすめ』(いずれもアスコム)など200冊以上。日本スポーツ心理学会会員、日本ゴルフ学会会員。
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