日本人選手初のホームラン王獲得、WBC優勝、MVP受賞など先入観を覆し、不可能を可能にする大谷翔平選手の活躍はいつも我々に勇気を希望を与えてくれます。
私たちは、大谷選手が突然凄い才能を獲得したような錯覚を持ちます。しかし、事実はそうではありません。大谷選手はプロセスを徹底的に追求することの大切さを誰よりも理解しています。
「大きな夢は小さな目標の総量である」、つまり「結果」ではなく「プロセス」に意識を置いているのです。「小さな目標の実現」に果敢に取り組む。その小さな習慣こそが偉大な成果を上げる必須の要素ということだと思います。
昨日より今日、今日より明日。自分史上最高の自分にめぐり逢うための「ポジティブ思考」の神髄に迫る話題の書籍『「できない」を「できる」に変える大谷翔平の思考法』。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、自分を成長させる大谷選手の思考法を解説していきます。
【大谷翔平選手の成功方程式を読み解く】WBCで大谷選手が経験した「ゾーン」の正体
2023年3月22日、この日WBC の決勝戦の対アメリカ戦、大谷選手が最終回に投じた15球は圧巻でした。
3-2と1点リードで迎えた9回、先頭バッターのマクニール選手を四球で一塁に歩かせます。次の1番バッター、ベッツ選手を併殺打に討ち取り、2死走者なし。そして、迎えるバッターはエンゼルスの同僚で、MLB を代表するスーパースター、マイク・トラウト選手。
初球に投じた大きく横に曲がるスイーパーはボール。2球目以降は空振りとボールを交互に繰り返し、3ボール2ストライク。そして運命の6球目、87.2マイルのスイーパーはトラウト選手のバットをすり抜けていきました。
この瞬間、大谷選手は雄叫びをあげながら、グラブと帽子を放り投げて歓喜の輪の中に入っていったのです。この大会で、大谷選手は見事MVPに輝きました。
大谷選手をずっとサポートしてきた水原一平通訳は、試合後「翔平があんなに楽しく野球しているのを初めて見た」と語りました。まるで少年に戻ったような大谷選手がそこにいたのです。試合後、大谷選手はこう語っています。
「(優勝は)間違いなく今までの中でベストの瞬間だと思う。(投手として)ある程度プランは立てていったが、あとはバッターとピッチャーの間合いの中で、勘で球種を選択して投げた。第1回大会からいろいろな(日本の)先輩たちが素晴らしいゲームをして、実際に僕らがそれを見て、『ここ(WBC)でやりたい』『自分もこういうふうになりたい』という気持ちにさせてもらったのが一番大きい。今回の優勝で、そういう子どもが増えたら素晴らしいこと」(『侍ジャパンWBC優勝記念号』ベースボール・マガジン社)
WBC の決勝の対米国戦で、大谷選手に「ゾーン」が降りてきたことは間違いありません。ゾーンとは、「最高のパフォーマンスを発揮する最高の心理状態」を指します。
「ゾーン」は、スポーツ心理学におけるもっとも重要な研究テーマの一つです。もしもその選手が「ゾーン」に入ったら、以下のような兆候が表れることが、数多くのアスリートのアンケート結果により判明しています。
1.これから起こることが鮮明に予測できた
2.身体が無意識に動き、その結果は事前にイメージした通りになる
3.雲の上に乗ったようなフワフワとした感覚に襲われる
4.周囲の雑音をまったく感じることがなかった
5.時間の経過が驚くほど短く感じられた
この感覚はスポーツ選手だけが体験するわけではありません。さまざまな業種のトップ達にも「ゾーン」は訪れます。一流のパイロットは、凄まじい荒天においても、恐怖を感じることなく完璧なフライトを実現します。あるいは、一流の外科医なら、難度の高い手術であっても、手術前のイメージ通りにテキパキと作業を進めることができるのです。
ゾーンを引き寄せる要素は、「目標の明確さ」です。明確な目標を持って平常心と集中力を維持すれば、突然「ゾーン」は訪れるのです。さらにいえば、目標設定を上げて、やや難易度の高いことに挑んでいるときに「ゾーン」が訪れます。言い換えれば、自分が快感に感じる「コンフォート(快適)領域」では「ゾーン」は降りてこないのです。
図表2に、ゾーンを含む8領域を示します。横軸はスキルの度合であり、縦軸はチャレンジの度合を示します。高いレベルのスキルとチャレンジが噛み合ったときにゾーンは訪れるのです。その両端には「覚醒」と「コントロール」という好ましい心理状態が現れます。
そして、バランスが崩れた領域にチャレンジし過ぎる場合には「不安」と「心配」、チャレンジが不足し過ぎる場合には「くつろぎ」と「退屈」が現れるのです。
普段から「平常心」と「高い目標」という二つの要素を実現することにより、突然あなたにも大谷選手のような「ゾーン」が訪れるのです。
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いかがでしょうか?
大谷選手を超一流のアスリートへ飛躍させた思考法にはビジネスパーソンも学ぶことも多いと思います。ぜひ日々の小さな目標の実現を目指して一歩一歩、「できない」を「できる」に変える努力をしてもらえればと思います。
さらに詳しい解説は児玉光雄さんの著書、『「できない」を「できる」に変える大谷翔平の思考法』をチェックしてみてください。
「できない」を「できる」に変える大谷翔平の思考法
著/児玉光雄/アスコム
児玉光雄
1947年兵庫県生まれ。追手門学院大学スポーツ研究センター特別顧問、元鹿屋体育大学教授。京都大学工学部卒。大学時代はテニスプレーヤーとして活躍し、全日本選手権にも出場。カリフォルニア大学ロサンジェルス校(UCLA)大学院で工学修士号を取得。米国五輪委員会スポーツ科学部門本部の客員研究員として、米国五輪選手のデータ分析に従事。過去30年以上にわたり、臨床スポーツ心理学者として、ゴルフ、テニスを中心に数多くのアスリートのメンタルカウンセラーを務める。また、右脳活性プログラムのカリスマ・トレーナーとして、これまで数多くの受験雑誌や大手学習術に右脳活性トレーニングを提供。この分野の関連書は100冊以上、累計発行部数は150万部を越える。主な著書はベストセラーになった『この一言が人生を変えるイチロー思考』(知的生きかた文庫)をはじめ、『大谷翔平 勇気をくれるメッセージ80』(三笠書房)、『能力開発の専門家が作ったそうぞう力とさんすう力がみるみる育つこども脳トレドリル』『頭がよくなる!「両利き」のすすめ』(いずれもアスコム)など200冊以上。日本スポーツ心理学会会員、日本ゴルフ学会会員。
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