Appleは、米国時間10月30日に開催したApple Eventにて、第3世代Appleシリコン「M3」「M3 Pro」「M3 Max」を発表した。なお、これらのチップは11月7日発売の新型「MacBook Pro」&「iMac」に搭載される。
Appleシリコン向けのグラフィックスアーキテクチャにこれまでで最大の飛躍をもたらす、次世代GPUを搭載
今回発表された「M3チップファミリー」は、業界をリードする3ナノメートルプロセステクノロジーを使って作られたパーソナルコンピュータ向けのチップ。次世代GPUや、より高性能なCPU、より高速なNeural Engineを搭載するほか、大容量のユニファイドメモリにも対応しており、同社では「パーソナルコンピュータ向けとして最も先進的なチップ」とアピールしている。
■次世代GPU
M3チップファミリーは、Appleシリコン向けのグラフィックスアーキテクチャにこれまでで最大の飛躍をもたらす、次世代GPUを搭載。このGPUは、リアルタイムでハードウェアのローカルメモリーの使用量を割り当てるDynamic Cachingが導入されているのが特徴で、Dynamic Cachingによりそれぞれのタスクに必要な正確な量のメモリのみが使われるようになるため、GPUの平均使用率が劇的に向上し、最も負荷の高いプロ向けアプリやゲームのパフォーマンスも大幅に向上するという。
また、M3チップファミリーにより、ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシングがMacで初めて利用可能に。レイトレーシングは、シーンと相互作用する光の特性をモデル化し、極めてリアルで物理的に正確な画像をアプリで作成できるようにする。この機能と新しいグラフィックスアーキテクチャによって、M1チップファミリーよりも最大2.5倍の速度でプロ向けアプリを実行できる。
さらに、新しいGPUによってハードウェアアクセラレーテッドメッシュシェーディングがMacで利用可能になり、ジオメトリ処理にさらに優れた機能と効率性をもたらし、ゲームやグラフィックスを駆使するアプリで、より視覚的に複雑なシーンの表現が可能になる。
しかも、GPUアーキテクチャは、これらすべての機能強化や新しい機能を実現しながら、
Appleシリコンの定評ある電力効率を維持。M3のGPUはM1と同じパフォーマンスを約半分の電力で実現し、ピーク時には最大65パーセント高いパフォーマンスを発揮するという。
■より高速で、より効率的なCPU
M3、M3 Pro、M3 Maxの次世代CPUでは、高性能コアと高効率コアのアーキテクチャが改良。高性能コアはM1ファミリーのものよりも最大30パーセント高速なので、Xcodeで何百万行ものコードのコンパイルやテストなどのタスクをさらに高速に実行できる。また、高効率コアはM1の高効率コアより最大50パーセント高速なので、日々のタスクがこれまで以上に高速になる一方、システムがバッテリー駆動時間を最大化できる。これらのコアにより構成されるCPUは、M1と同じマルチスレッドのパフォーマンスをわずか半分の電力で実現し、ピーク電力では最大35パーセント高いパフォーマンスを発揮する。
■最大128GBに対応したユニファイドメモリアーキテクチャ
M3ファミリーの各チップは、Appleシリコンの代名詞とも言えるユニファイドメモリアーキテクチャを搭載。専用のパッケージ内でメモリを1つのプールに収めることによって、チップ内のすべてのテクノロジーが複数のメモリプール間でデータをコピーすることなく同じデータにアクセスでき、パフォーマンスと効率性がさらに向上。そして、システムが大半のタスクで必要とするメモリの量を削減する。
さらに、最大128GBのメモリに対応しているため、AIデベロッパが数十億のパラメータを使用するさらに大規模なTransformerモデルを操作するなど、これまでノートブックでは不可能だったワークフローが可能になる。
■AIとビデオ用のカスタムエンジン
M3、M3 Pro、M3 Maxは、パワフルな機械学習(ML)モデルを加速する、強化されたNeural Engineも搭載。Neural EngineはM1チップファミリーのものより最大60パーセント高速で、プライバシー保護のためにデータをデバイス上に保持しながら、AI/MLのワークフローをさらに高速化する。
また、先進的なメディアエンジンも備えており、H.264、HEVC、ProRes、ProRes RAWなどの最も一般的なビデオコーデックにハードウェアアクセラレーションを提供。さらに、今回初めて、メディアエンジンがAV1デコードに対応し、電力効率の高い再生がストリーミングサービスで可能になり、バッテリー駆動時間がさらに長くなる。
■各チップの性能
・M3
M2より50億個多い250億個のトランジスタを搭載。GPUは10コアで、グラフィックスパフォーマンスはM1より65パーセント高速化した。また、CPUは8コア(高性能コア4基+高効率コア4基)で、CPUパフォーマンスはM1より最大35パーセント高速に。さらに、最大24GBのユニファイドメモリに対応する。
・M3 Pro
370億個のトランジスタを搭載。GPUは最大18コアで、M1 Proよりも最大40パーセント高速化。対応するユニファイドメモリの容量は最大36GBに対応する。また、CPUは最大12コア(高性能コア6基+高効率コア6基)で、M1 Proより最大30パーセント高速化した。
・M3 Max
920億トランジスタを搭載し、GPUは最大40コアで、M1 Maxより最大50パーセント高速化。また、CPUは最大16コア(高性能コア12基+高効率コア4基)で、M1 Maxより最大80パーセント高速に。さらに、最大128GBのユニファイドメモリに対応する。
構成/立原尚子