ルノーは、2013年からコンパクトSUVの「キャプチャー」を発売している。このクルマは発売以来、ベストセラーを記録。2020年に2代目になってからも欧州で販売された全てのSUVモデルの中でNo.1セールスを記録している。
「アルカナ」はこの「キャプチャー」でのノウハウにプラスして、F1で培った技術陣が開発したフルハイブリッド方式を独自の手法で実用化し、実戦に投入してきたモデル。そのほかにも、クーペスタイルのFF車だが、最低地上高はオフロード車並みにあり、名ばかりの4WD系SUVなど及ばない走行性能を秘めているなど、かなり魅力的なモデルに仕上がっている。「アルカナ」は2022年2月に現行モデルがデビューしている。
全長4570mm、全幅1820mm、全高1580mm、というボディは、ホンダ「ZR-V」やちょっと背の低い(110mm)マツダ「CX-5」といったサイズ感だが、特徴はそのスタイリングにある。ルーフラインがテールエンドまで大きく弧を描く、クーペスタイルだ。全高1520mmに対し、最低地上高は、なんと200mmも確保されている。これは現実的に、都会での使い方でも足回りに気を使わずに済むという点で、実にありがたい。
カタログ上のパワーユニットは、デビュー当初は、独自に開発したフルハイブリッド方式の直4、1.6L、94PS、148Nm+49PS、205Nmと20PS、50Nmのモーターだけだったが、2022年11月に直3、1.3Lガソリンターボ、158PS、270Nm+5PS、19.2Nmのモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドモデルも加わった。当時の車両本体価格は、フルハイブリッド(E-TECH HYBRID)が429万円、マイルドハイブリッド(R.S.LINE.MILD HYBRID)は399万円だった。
期待したルノー独自のフルハイブリッドだったが、メインのEモーターとHSG(ハイボルテージスターター&ジェネレーター)の2つのモーターと自然給気4気筒1.6Lガソリンエンジンを繋ぐミッションの電子制御ドグクラッチマルチモードATというユニットのフィーリングは、いまひとつだった。ドグクラッチの作動がスムーズさに欠けていたのだ。
ちなみに1.6Lエンジンは日産・三菱とのアライアンスエンジンだが、ピストン、コネクティングロッド、クランクシャフトなどは独自に開発された。デビューから約1年。内外装を新しくした「E-TECHエンジニアード」が登場したものだ。
外観は、車体前後のエムブレムはブラック塗装、さらにフロントグリル、スキッドプレート、リアスポイラーもブラック塗装されている。アクセントとしてチタニウムカラーのF1ブレード・ツインエキゾーストが特徴。
内装もチタニウムカラーのラインやステッチがハンドルやドアパネル、アームレスト、シート、センターコンソールに用いられている。そして、9つのスピーカーが奏でるBOSEサウンドシステムも標準装備された。
Dレンジにシフトし、走り出す。走行モードはECOを選択。このほかにマイセンス/スポーツが設定されている。マイセンスはパワートレイン/ステアリングをユーザー好みで変化させることができる。
ECOモードではスタートからの動きは、マイルド、エンジンが掛かるとややうなり音が聞こえる。高めの着座位置での走りは、操舵力はやや重め。直進性の強いのはFF車らしい部分。ワインディングではやや重めの操舵力との戦いだ。SPORTモードに切り替えると、アクセルレスポンスが俊敏になる。回生モードも強くなる。ルノーのモデルは「アルカナ」も、優雅なクーペのように見えて、実際に走らせてみると、意外に硬派なスポーツカー的要素を秘めている。
室内もクーペスタイルではあるが、後席は足元も頭上も空間はしっかり確保されている。後席は身長170cmクラスでも窮屈ではない。これも意外なところといえる。
クルマを生活道具のひとつと考えているフランス人の世界で、ベストセラーをつくり続けているメーカーの製品は、使うほどにその良さが実感できる仕上がりになっているに違いない。
◆ 関連情報
https://www.renault.jp/car_lineup/arkana/index.html
取材・文/石川真禧照 撮影/萩原文博