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「イップス」という言葉を聞いたことがあっても、意味を理解していない人もいるのではないでしょうか?イップスの意味と由来、スポーツにおけるイップスの具体例を紹介します。なりやすい人の特徴も確認し、知識を深めましょう。
「イップス」とは?由来・意味をチェック
イップスとは、何を表す言葉なのでしょうか?言葉の由来と、使われるようになったきっかけを紹介します。
■不調を表すゴルフ用語
和製英語のイップスは、不調に対して使われる言葉です。それまでは問題なくできていた動作が、緊張や不安などによって自分の思い通りにならなくなることを表します。
不調の意味合いでイップスという言葉を使ったのは、1930年ごろに活躍したプロゴルファーのトミー・アーマーとされます。トミー・アーマーはパターのストロークが制御できないなど、ボールを思うように打てなくなったことで引退に追い込まれました。数十年後、過去を振り返ったトミー・アーマーが、調子を崩した状態を「イップス」と表現したことから、イップスの言葉が広まったといわれます。
現在はゴルフ以外の分野でも使われる
現在ではゴルフに限らず、野球・テニスといったスポーツでもイップスという表現が使われています。また、楽器の演奏でも、腕・手首・指先などが思うように動かなくなる状態を「イップス」と呼ぶケースがあります。
ビジネスシーンも例外ではなく、「ジネスイップス」という言葉が存在するほどです。主に心理的な原因で、それまでスムーズにできていたことが急に困難になるといわれています。例えば、重要な場面で決断できなかったり、プレゼンで言葉が出なかったりなどが挙げられます。
■英語の「yipe」に由来
イップスは英語の『yipe』に由来する言葉です。一般的な表現ではありませんが、「ウワッ!」「キャー!」など、恐怖や驚きを表す感嘆詞としても使われます。
【例】
- Yipes! I dropped my phone and now the screen is cracked.
キャー!携帯を落として画面が割れてしまった - Yipes! I forgot to study for the exam.
ワー!試験勉強をし忘れていた - Yipes! I accidentally spilled coffee on my computer.
ウワッ!うっかりパソコンにコーヒーをこぼしてしまった
スポーツにおけるイップスの例
イップスの意味は理解していても、実際にどのような状態になるのか想像できない人もいるのではないでしょうか?より深く理解するために、ゴルフと野球の場合に分けて具体例を紹介します。
■ゴルフの場合
イップスに陥りやすいといわれているのが、パターのストロークです。スイングがうまく調節できなくなることで、カップに大幅に届かなかったり、超えてしまったりします。極度な緊張による腕の震えや体の硬直が、これらのミスショットにつながる原因の一つです。
イップスを経験したプロゴルファーには、『ジャンボ尾崎』の愛称で知られる尾崎将司(おざき・まさし)さんがいます。1988年の日本オープンでイップスに陥り、ボールをホールに入れるためのパットが打てなくなったのです。2度仕切り直しをしてパットを成功させたものの、その後もイップスに悩んだといわれています。
■野球の場合
野球においてイップスが起こりやすいポジションは、投手・捕手・内野手などです。投手の場合は捕手がキャッチできない暴投に陥りやすく、敬遠の際には緩やかな球を投げられなくなるといわれています。捕手・内野手は返球の際、近距離でも相手がキャッチしにくい悪送球を招く傾向にあります。
重要な局面での緊張やプレッシャーによって腕が震え、ボールをコントロールできなくなるのが主な原因です。日米のプロ野球選手として活躍したイチローも、高校時代にイップスを経験しています。当時、投手をしていたイチローですが、部内の厳しい上下関係をきっかけに速い球が投げられなくなり、長期のイップスに悩まされたようです。
イップスになりやすい人の特徴
イップスになりやすい人には、共通の特徴があるといわれています。なりやすい人の特徴と、イップスに陥らないための対策を確認しましょう。なお、以下はあくまでも傾向であり、当てはまったとしてもならないこともあります。
■真面目で完璧主義
責任感が強く、何に対しても真面目に取り組む人は、イップスになる可能性があります。特に、注意されたことで過度に落ち込んだり、自信をなくしたりと、完璧を追求しすぎる人は注意が必要です。
完璧主義を和らげるには、『できていること』に焦点を当てましょう。例えばプレゼンの案を半分まで完成させた場合、「半分しかできていない」ではなく、「半分できた」と考えるのです。その他、『2時間で完成させられるもの』『80%ほど満足できれば合格』とラインを設定するなど、完璧を追い求めない工夫も大切です。
■周囲の目を気にしすぎる
特にプライベートとは異なる職場において、周囲の目が気になってしまうのは無理もありません。ただ、必要以上に周囲の目ばかりを気にする人は、イップスになりやすいといわれています。
「周りにどう思われているか」を気にしすぎると、人と比較したり、失敗を恐れたりするようになります。不安が募ることで行動を制御し、イップスにつながるケースも珍しくありません。
周囲の目を気にしすぎないようにするには、意識を変えることが大切です。例えば、同僚がプレゼン中に言葉を間違えたとしても、「緊張しているのかな」ぐらいにしか思わないでしょう。もしかしたら、資料を読んでいて気が付かないケースもあるかもしれません。人はそれほど他人を意識していないことに気付くだけでも、緊張や不安が和らぐでしょう。
文/編集部