ノーマル仕様はマイルドな仕上り
はやる気持ちを抑えて、運転席に座る。身体をしっかりと支えるMスポーツシート、前席はM2ロゴのイルミネーション付だ。シートはオプションで軽量化され、多点式シートベルトにも対応し、横Gサポートも完璧なMカーボンバケットシートも選べる。
コクピットドリルを受けるのももどかしく、とにかくセンターコンソールのMモードを「ROAD」にして走り出す。スタートからの動きは大人しい。8速ATは次々とシフトアップする。トルクも太いので、マニュアルモードにすると6速1000回転でも走行する。乗り心地も「COMFORT」モードではやや硬めだが、上下動もあり、ちょっと速い「2シリーズクーペ」、という感じだ。もちろん、この状態でも0→100km/hの加速は4秒台前半をしれっとたたき出すし、直6エンジンは7000回転まで吹け上がる。しかし「M2」というハイレベルのスポーツモデルという印象は薄かった。
走りに慣れたところで、いろいろとチューニングを試みる。「M2」はセンターコンソールに「Mモード」のほかに「Set Up」ボタン、さらにハンドルスポーク左右に赤い「M1/M2」というスイッチがある。これらをそれぞれにセッティングすると、自分好みのサーキットでの走りがセッティングできるのだ。
まず「Mモード」を「Sport」にスイッチ。Mモードはさらに「TRACK」モードもあるがこれはサーキットコース用だ。エンジン/シャーシ/ステアリング/ブレーキの各項目が「SPORT」モードに切り替わった。エキゾーストノートも大きくなり、アイドリングでも、室内に低いビートが響いてくる。アクセルを踏みこむと、「ROAD」モードと同じ踏みこみだが、ダッシュ!アクセルレスポンスは段違いに素早い。乗り心地も上下動が抑えられ、硬め。これがイメージしていた「M2」だ。
どうやら、最新の「M2」は、かつてのノーマルモードでの硬さ、速さが「SPORT」モードになり、ショッピングにも行ける「ROAD」モードが加わったようだ。これも少しでも幅広い層に乗ってもらいたいという動きなのだろう。
ただし、本来の「M2」ユーザーの楽しみは「SPORT」「TRACK」モードでどうぞ!というわけだ。M1/M2ボタンを選択すれば、エンジン/ミッション/シャーシ/ステアリング/ブレーキ/DSCの各項目で、COMFORT/SPORT/SPORT PLUS/まで選択できる。それでもM1はダイレクトなレスポンスを楽しむモード、M2は燃費も考慮したオートシフトというような性能が与えられている。
新型「M2」は、サーキットから生まれたモデルとはいいながら、ノーマル仕様では、マイルドな性格に仕上がっていたのは、1970年代スポーツカー好きのおじさんにはちょっと寂しかった。が、これも時代の流れなのかもしれない。
文/石川真禧照 撮影/萩原文博