30代で糖尿病と診断されると寿命が14年短くなる可能性
人生のより早い時点で2型糖尿病と診断されるほど、寿命が短くなることを示唆するデータが報告された。30代で診断された場合、50歳時点の余命が14年短くなる可能性があるという。
英ケンブリッジ大学のEmanuele Di Angelantonio氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Diabetes & Endocrinology」2023年10月号に掲載された。性別で比較した場合、女性でより大きな影響が認められるという。
この研究では、2件の大規模疫学研究を統合したデータが用いられた。そのうち1件は、心血管疾患に関連する潜在的なリスク因子探索のための国際共同研究(Emerging Risk Factors Collaboration)であり、別の1件は英国で行われている「UKバイオバンク」。高所得国を中心に19カ国、151万5,718人(平均年齢55.0±9.2歳、男性45.6%)のデータが解析された。
2310万人年の追跡で24万6,670人が死亡。2型糖尿病と診断されていた人は、その診断時年齢が若いほど全死亡(あらゆる原因による死亡)リスクが高いという、線形の用量反応関係が認められた。
全死亡のハザード比(HR)は、診断時年齢が30代の場合は2.69(95%信頼区間2.43~2.97)、40代では2.26(同2.08~2.45)、50代で1.84(1.72~1.97)、60代1.57(1.47~1.67)、70歳以上1.39(1.29~1.51)。
50歳時点の平均余命を米国の非糖尿病者と比較すると、30歳で診断されていた場合は14年、40歳で診断されていた場合は10年、50歳で診断されていた場合は6年、それぞれ短縮すると計算された。
同様にEUの非糖尿病者と比較すると、同順に13年、9年、5年短くなると計算された。性別に解析すると、女性は糖尿病と診断された場合の余命が、男性よりも短縮するという結果が示された。
例えば米国の非糖尿病者と比較した場合、50歳時点の平均余命は男性では、診断時年齢が30代であれば約14年、40代なら約9年、50代なら約5年短縮するのに対して、女性は同順に約16年、11年、7年の短縮と計算された。
論文の筆頭著者である同大学のStephen Kaptoge氏は、2型糖尿病という疾患について、「この疾患はハイリスク者を特定した上で、行動変容を促すことやリスクを抑制する薬剤の処方などのサポートによって、発症を抑制できる。発症後には生活のさまざまな側面に影響が及ぶことを考慮すると、2型糖尿病の発症予防を社会的な緊急課題とすべきと言える」と解説している。
なお、国際糖尿病連合(IDF)は2021年の世界の成人糖尿病患者数を5億3700万人と推定している。
糖尿病発症後に血糖値などの治療が不十分な状態が続いていると、心臓発作や脳卒中、腎臓病、がんなどの合併症の発症、および、それらによる死亡のリスクが増大する。
今回の研究で示された糖尿病患者の余命短縮も、多くはそれらの合併症が原因だった。論文の共著者の1人である英グラスゴー大学のNaveed Sattar氏は、「われわれの研究結果は、2型糖尿病を発症する年齢が若ければ若いほど、合併症の負担が大きくなるという従来からの考え方を裏付けている。しかし、スクリーニングによる糖尿病の早期発見とその後の集中的な血糖管理によって、糖尿病による疾病負担を抑制する余地のあることを示すものでもある」と強調している。(HealthDay News 2023年10月5日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.thelancet.com/journals/landia/article/PIIS2213-8587(23)00223-1/fulltext
Press Release
https://www.cam.ac.uk/research/news/type-2-diabetes-diagnosis-at-age-30-can-reduce-life-expectancy-by-up-to-14-years
構成/DIME編集部