ソーシャルメディアの閲覧が子どものスポーツ離れの一因に
TikTokやInstagramなどのソーシャルメディアに投稿された写真には、体型が大幅に加工された非現実的なものが少なくない。
70人の子どもを対象にした予備的な研究で、そのような理想化されたアスリートの写真を目にした子どもは、自分の体型がそのスポーツには適していないと思い込んでやめてしまう可能性のあることが示された。
米Nemours小児病院のスポーツドクターであるCassidy M. Foley Davelaar氏らによるこの研究結果は、米国小児科学会(AAP)のNational Conference & Exhibition(AAP Experience 2023、2023年10月20〜24日、米ワシントン)で発表された。
スポーツをすることは、子どもが心身ともに健全に育つ上で有用なことが知られている。しかし、現実には、70%の子どもが13歳までにスポーツをやめてしまう。また、14歳になるまでにスポーツをやめる女子の割合は男子の2倍以上といわれている。
この研究では、スポーツからの離脱に、ボディイメージ、ソーシャルメディア、ジェンダーと文化的なバイアスなどの因子が及ぼす影響について検討された。
Davelaar氏らは、地域のスポーツ団体に所属するか、スポーツクリニックを受診した8〜18歳の子ども70人に調査を実施し、その回答の分析を行った。対象者には、現在スポーツを行っている者だけでなく、過去にスポーツを行っていた者も含まれていた。
その結果、調査参加者がスポーツをやめた理由として挙げたものの中で最も多かったのはコーチング(指導者との関係性の問題)であったが、そのほかの理由として、ソーシャルメディア閲覧を通じたボディイメージの低下とスポーツの競争性によるプレッシャーも多いことが明らかになった。
競争性を理由にスポーツをやめた参加者の割合は、女子の方が男子よりも多かった(35.5%対10.3%)。また、ソーシャルメディアで目にした他者の競技能力と自分の能力を比較することとスポーツからの離脱との間には強い相関があることが示され、スクリーンタイム、運動、ボディイメージはスポーツからの離脱と統計学的に有意に関連することが明らかになった。
例えば、自分の競技能力にあまり自信のない参加者は、自分自身のボディイメージをそのスポーツに「あまり向いていない」と評価していた。
この研究には関与していない、米ネイションワイド小児病院の小児心理学者であるErin McTiernan氏は、「子どもというものは、フィルターがかけられたり加工されたソーシャルメディア上の非現実的な顔や体型の写真を見て、気付かないうちに自分と比較してしまいがちだ。実生活での活動や人間関係が自尊心を育むのに役立っている子どもなら、その影響を払いのけることができるが、全ての子どもがそうできるわけではない」と話す。
同氏は、「この研究は小規模ではあるが、ソーシャルメディアが原因で子どもが健康的な活動をやめてしまう頻度はどの程度なのかという重要な問題を提起した」との見方を示す。
McTiernan氏は、ティーンエイジャーの生活の中でソーシャルメディアの使用を禁じるのは現実的ではないが、時間制限やその他のルールを設けることはできると話す。
同氏は、「何より重要なのは、スポーツやその他の活動、友人や家族と顔を合わせる時間など、子どもに実生活でたくさんの経験を積ませることだ」と言う。
さらに、子どもがソーシャルメディア上で閲覧しているコンテンツや、それが子どもに抱かせる感情を親が把握する必要性についても強調している。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2023年10月20日)
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(参考情報)
Press Release
https://www.aap.org/en/news-room/news-releases/conference-news-releases/social-media-contributing-to-poor-body-image-among-teenaged-athletes-associated-with-dropping-high-school-sports/
構成/DIME編集部