LV.4自動運転実装にもチャレンジ
ソフトバンクはデジタルツインに加えて、遠隔監視をAI化することで、LV.4自動運転実装にも取り組んでいます。
クルマが時速100kmで走っていると、1秒間に約27m進みます。文字通り「あっ」という間のことです。仮に0.1秒でも2.7m進んでしまうわけです。それが0.01秒であれば、27cmの移動で済みます。つまり、自動運転では、データを大量に入手しつつも、瞬時に判断をしなければならないのです。
ソフトバンクによると、コネクテッド車両のデータ処理は、2030年には約30エクサFLOPSにのぼるとしています。エクサとは、10の18乗。1エクサは100京といいます。そして、FLOPSはコンピュータ処理能力の単位です。
この30エクサFLOPSとは、スーパーコンピュータ「富岳」75システム分という、とんでもないデータ処理量です。この演算はクルマ1台だけでの処理にとどめるわけにはいかないレベル。ネットワークでコネクテッドし、全体で調和のとれた計算が必要となります。
そこでソフトバンクは、2023年秋の稼働予定で、国内最大規模のAIデータセンターを構築。膨大なデータ処理の基盤とする予定になっています。
ソフトバンクのグループ会社でバスの自動運転や「MaaS」を実現
ここまで、ソフトバンクがモビリティで実現する未来を見てきました。一方、ソフトバンクにはグループ会社が多数存在しています。それらのグループ会社では、バスの自動運転や「MaaS(マース)」が、すでに実現化しようとしています。
BOLDY(ボルディ)は、安心な移動手段を誰もが自由に利用できるようにするため、IoTや自動運転を軸に、持続可能な公共交通を社会実装するための活動を行っています。
自動運転バスの実証実験回数は約130回にのぼり、
2023年度中には、26台、10地域で実用化する予定になっています。
【参考】BOLDY
また、MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)は、医療や行政、買い物などの不便を解消するために、「医療MaaS」、「行政MaaS」などを開発。取り組みは実証実験から実用化の段階へと進んでいます。
MONET Technologies株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 清水 繁宏氏
「MaaS」とは、Mobility as a Serviceの略で、スマートフォンのアプリで出発地から目的地までの交通手段の検索から予約、支払いまでができ、さらには、飲食店やホテルの予約・支払い、病院や行政サービスなどの予約・支払いも一括して行えるサービスです。
MONET Technologiesは、訪問診療のモビリティ版や妊婦の方の検診、行政のサポートといったサービスを、ハイエースをベースとした車両で行い、将来的には電動化や自動運転MaaSの実現を目指していくそうです。
ネットワークがクルマ社会に貢献すること
ここまで、ソフトバンクのネットワーク技術が、クルマ社会の未来にどう関わっていくのか、実証実験を中心に見てきました。
クルマはネットワークとつながることでインテリジェンス化され、単なる移動手段から、自動運転や医療サービスといった、暮らしのために必須のサービスを提供するモビリティへと進化していくようです。
そんな変化するクルマ社会で、ソフトバンクなどの通信キャリアが果たす役割は、今後ますます高まることが予測されます。これからの技術革新にみなさん、期待してみませんか?
取材・文/中馬幹弘