「ジャパンモビリティーショー2023」が東京ビッグサイトで10月28日から11月5日に開催されました。
以前は「東京モーターショー」と呼ばれたこのイベントは、4年ぶりの開催。多くのクルマ好きが訪れる中、従来の東京モーターショーの内容から進化して、より未来を感じさせるものとなりました。
そんな中、ソフトバンクの佃 英幸専務執行役員 兼 CTOが「AIとモビリティが創る未来〜ソフトバンクの次世代社会インフラ〜」と題する講演を行いました。
ソフトバンク株式会社 専務執行役員 兼 CTO テクノロジーユニット統括 佃 英幸氏
「なぜソフトバンクが自動車ショーに参加するの?」と不思議に思われるかもしれませんが、実は、同社のネットワーク技術が、これからのクルマ社会の進化に欠かせないものとなっているからなのです。
高速道路の合流をAIがアシスト
ソフトバンクと言えば、スマートフォンの会社と思う方は多いでしょう。事実、ソフトバンクグループは携帯電話事業をはじめ、Yahoo!やLINE、PayPayなど、ネットワークを通じた多くの事業を多角的に行っています。
そして、中核を成す携帯電話事業は、4000万契約を超す日本の通信インフラの基盤となっているのは、みなさんご存じの通りです。
今、世の中は〝5G時代〟となり、スマートフォンなどを通じてモバイルで高速・大量のデータ通信が行われています。従来では難しかった、高度なデータ処理が、携帯電話回線を通じて行える……そんな世の中へと進化しているのです。
クルマなどのモビリティも、今まで以上にネットワークとつながることで、進化しようとしています。
たとえば、高速道路の合流。ネットワークとつながる〝コネクティッド〟な未来のクルマでは、センサーや測位情報などのインテリジェントな情報が、大量かつ瞬時に入手できます。
そこでは、加速や減速などのアシステッドな情報が届き、それにより、クルマの自律制御をサポート。他車との協調性をもたらし、渋滞緩和などにつなげることができるのです。
そんなモビリティの進化を支えるのが、ネットワークにコネクティッドなクルマであり、その膨大な情報の処理にAIが重要な役割を果たすのです。
交通事故の回避にも5Gの低遅延な情報伝達が役立つ
交差点での事故は、クルマ社会が抱える問題のひとつです。クルマや歩行者、バイクに自転車などの様々な交通がクロスする場所では、常に事故の危険が伴います。
そんな場所で、一台のクルマが持てる情報は限られます。しかし、道路に設置したセンサーや、前後左右の車両などと、ローレンテンシー(低遅延)に情報を共有できれば、交通事故を回避できる可能性が高まります。
また、バス3台による「自動運転・隊列走行BRT」を、JR西日本ソフトバンクは検証。2023年7月に専用テストコースで実証実験を完了し、公道での実証実験へと歩を進めています。
実証実験に使われた連節バス、大型バス、小型バスによる隊列は、互いに情報を共有。先頭の車両に人は乗っていますが、運転せず乗っているだけ。2台目、3台目のバスは無人運転で走行します。
将来的には、先頭車両が踏んだブレーキを、後続車が瞬時にかけるなど、自動運転により渋滞緩和にもつなげたいとしています。
さらに、2023年6月に、ソフトバンクは自動運転バスの実証実験を、慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)で実施しました。
現実の情報や出来事をデジタル化して仮想空間で共有。現実空間と同じ世界を再現する技術を「デジタルツイン」と呼びます。
そのデジタルツインでは、画像認識や空間センシングなどの膨大なデータ処理を、5Gネットワークなどを通じて行います。その高度な情報により、自動運転バスの運行をセキュアなものとする……そんな最先端の技術開発が進んでいます。
SFCでは、デジタルツインプラットフォームが送ってくる様々なデータを用いて、右折時の対向車検知や信号機の灯火予測を実証実験しました。
遠方の対向車や信号の変わるタイミングといった情報を、交差点の手前で入手することで、適切な右折の判断や事前の減速などに活用、安全な自動運転走行を実現する……そんな研究が進んでいます。