ビジネス雑誌やニュースで見聞きすることが多い「合同会社」。しかし、日常会話で話題にする機会はほとんどないため、正しい意味を理解していない人も少なくないはず。
そこで本記事では、「合同会社」の正しい意味や「株式会社」との違いを解説する。合同会社設立のメリット・デメリットもぜひチェックしてほしい。
合同会社とは
まず、「合同会社」の意味から見ていこう。「株式会社」との違いもぜひ参考にしてほしい。
日本の会社形態の一つ
合同会社とは、2006年5月1日の会社法改正により設立された会社形態の一つ。英語では“Limited Liability Company”と呼び、略して“LLC”と表記される場合もある。合同会社は、出資者自身が会社を経営し、出資した社員全員に会社の決定権を与える形態。近年では、大手外資企業も合同会社の形態であることが多い。
合同会社と株式会社の違い
合同会社と株式会社の違いは、会社の所有と経営が一致しているか否か。株式会社は所有と経営が分離しており、出資者である株主が経営権を経営者に委任、経営者が会社の実務を執行する。一方、合同会社は出資者も会社の経営者も同一となる。
合同会社設立のメリット
次に、会社設立時に合同会社を選択する5つのメリットを見ていこう。
1. 設立の費用や維持費が安い
合同会社は、設立費用が株式会社と比べて安い。また、株式会社で必要な役員更新の手続きや株主総会開催にかかる費用は、合同会社では不要となる。このように、初期費用と維持費用が低いことが合同会社の設立を選択する大きなメリットだ。
2. 節税できる
合同会社は、法人税法上の普通法人に区分され、事業所得が法人税の対象となる。そのため、欠損金の繰り越しや役員報酬の損金算入による節税が可能だ。
3. 速く意思決定できる
株式会社の場合、役員の選任や組織改変などの重要な事項は、株主総会を開く必要があるため、決定までに時間がかかってしまうのが難点だ。しかし合同会社は、所有と経営が同一であるため、所有と経営が分かれている株式会社と比べて速やかな意思決定ができる。
4. 自由に利益を配分できる
株式会社の場合は、出資者の出資比率と同じ割合で利益が配分される。一方で合同会社であれば、定款に比率を定めることで出資者への利益配分を自由に変更が可能。人物の実績を反映して利益を配分したいと考える方に向いている。
5. 決算公告や役員任期の更新の手間が不要
株式会社では、財務情報を開示する決算公告や役員任期の更新が必要となる。一方で、合同会社は決算公告は必須ではなく、役員の任期自体を設定する必要がないため、これらにかかる費用や時間を削減できる。
合同会社設立のデメリット
最後に合同会社設立のデメリットを4つ紹介する。良いところだけでなく、難点も覚えておこう。
1. 株式会社と比べると社会的信用度が低い
合同会社は決算公告の義務がないこと、会社形態の認知度が低いことから、株式会社に比べて信頼性が低いといわれている。取引先の企業によっては株式会社の方が良い印象を与えられることがあるため、慎重に判断しよう。
2. 資金調達の方法が限定されている
株式会社は株式の増資によって資金調達が可能だ。一方、合同会社は国・自治体の補助金や助成金、融資による借入が中心で、株式による資金調達ができない。そのため、株式会社と比較すると資金調達の方法が限られてしまう。
3. 社員同士で意見の対立が生じる恐れがある
1人1票の議決権を与え、意思決定をする合同会社では、出資者である社員同士で意見の対立が起こるリスクがある。利益配分の決定時にも社員同士の対立が起こる可能性があるため、定款に出資額に準じた利益配分にすることを定めて問題が生じるリスクを軽減しておくのが良いだろう。
4. 株式市場へ上場できない
株式会社の場合は株式市場へ上場することで事業拡大はもちろん、より多くの資金調達や認知度向上が目指せる。 これに対して合同会社は株式が発行できないため、株式市場への上場ができない。
文/編集部