ジャッジ
裁判所
「肉体関係あり!でも…すでに夫婦関係は破綻していたので不倫相手の勝ち!」
順番に解説します。
▼ 肉体関係は認められる
――不倫相手の方、不服なご様子で。
妻の不倫相手
「はい。私は肉体関係を持っていません。A子の家に行ったのは今後の相談や荷物を引きとるためです」
「私はA子と別れる決意をしたのです。今にいたっても付き合いはありません」
「前の訴訟が終わったあとは肉体関係がなく、道ですれ違ったくらいです」
――裁判所さん、いかがですか?
裁判所
「この写真が目に入らぬか!ある日の午前6時と別の日の同時刻ころ、あなたの車がA子さんの家の近くに止まってますよね」
妻の不倫相手
「そ、それは、どちらの日も会社が休みだったので、午前3時くらいに家を出て、そこに車を止めて…山に登りました」
裁判所
「シャラップ!12月でっせ。午前3時でっせ(さむっ)そんな時刻に山に登るなどありえない」
< 補足>
裁判では【いいわけ大喜利】が繰り広げられます。
真実は1%であとの99%はウソでしょう。たとえば「女性の気分が悪くなったのでホテルに入って介抱していた」とかありますね。今回の山登り弁解、IPPONグランプリならIPPON!でしょうが、さすがに裁判所では一蹴されましたね。
裁判所
「A子さんの家に出入りして肉体関係を持っていたと認定します!」
夫
「やったー!私の勝ちだ!」
▼ それではなぜ負けたのか?
裁判所
「いや、負けです。すでにあなたたちの夫婦関係は破綻していたからです」
――なんで夫婦関係が破綻してたら浮気相手は払わなくていいんですか?
裁判所
「そもそも浮気がダメなのは、婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害するからです。そうすると、夫婦関係が破綻していたときに浮気相手がSEXしたとしても、別に婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害したとはいえないからです(最高裁 H8.3.26)」
裁判所
「そして本件では、A子と不倫相手が肉体関係を持ったときには、すでに夫婦関係は破綻していたと認定しました。理由は以下のとおり」
[理由]
・7年前には別居をしていた(別居期間は6年9ヶ月にもなっている)
・4年前に妻は離婚訴訟を提起していた
・A子は離婚訴訟で負けたが今でも強く離婚を望んでいる
▼ 重要なのは「どっちが先か」
肉体関係があった時期と夫婦関係が破綻していた時期、どっちが先? はチョー重要です。その時期の先後で慰謝料数百万が左右されます。今日もどこかの裁判所で、この点についてバトルが繰り広げられていることでしょう。
Q.
夫婦関係がオワってるかどうかって、裁判官に分かるんですか? 夫婦にしか分からないのでは?
A.
ですよね。でもそれを裁判官がジャッジする。そういうルールなので仕方ないんです。というわけで、
■ 浮気している方へ
相手との夫婦関係がオワっていたことを立証するために、さまざまな証拠を集めて整理しておきましょう。
■ 浮気相手に慰謝料請求したい方へ
夫婦関係がオワっていたと認定されたら負けです。弁当を作る、ねぎらいのLINEを送るなどしてみてください。裁判所に「こりゃ形だけだな…」と思われたら負けですが「夫婦関係は瀕死寸前だけど、いまだご存命!」と思ってもらえたら勝ちです。
訴訟では、絶対的な真実はありません。【裁判官の目に映る事実】が【真実】となります。
今回は以上です。「こんな解説してほしいな〜」があれば下記URLからポストして下さい。また次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
webメディアで皆様に知恵をお届け中。「こんなこと解説してくれや!」があれば、下記URLからポストお願いします。
https://hayashi-jurist.jp(←プロフィールもコチラ)
https://twitter.com/hayashitakamas1