小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

トレーニングで最大酸素摂取量を向上させるポイントは「強度」と「頻度」にあり

2024.01.06

【ラントレの効果2】総合的な有酸素能力の指標!最大酸素摂取量を向上させるには?

■練習の具体的な目的や狙いを定める

 持久運動パフォーマンスをトレーニングで伸ばしたいと考えたとき、漠然としたイメージでメニューをこなすよりも、運動生理学の知識があったほうが、目的や効果に対する意識がより明確になります。

 有酸素能力をイメージしたとき、その総合的な指標となるのが「最大酸素摂取量」です。では、その最大酸素摂取量を向上させるために必要な要素とはなんでしょう? それを知る手がかりとなるのが、第1章でも紹介した「フィックの式」です。

 酸素摂取量の内訳を「心拍出量×動静脈血酸素較差(動脈血酸素含量-静脈血酸素含量)」と表現したものがフィックの式。第1章では、そこから心臓や肺、筋、血管、血液の機能などが酸素摂取量を決定づける因子になると解説しました。

 最大酸素摂取量を伸ばす方法も、同じように各要素を分解していくと、鍛えるべき要素が具体的に見えてきます

 たとえば、心拍出量。高強度トレーニングにより血液量が増えますが、その分、心臓から出せる血液の量も多くなります(心拍出量の増加)。

 また、心筋の収縮特性が変化することで、心臓の中の血液をより多く絞り出せるようになる可能性も。心臓を強くして心拍出量を増やそうとした場合、心臓も筋肉であるため、筋トレのように、激しく収縮と拡張をくり返すような高い負荷を与える必要があると予想されます。

 こうした明確な狙いを定めて各要素を鍛えていけば、酸素摂取量を高めるアプローチやバリエーションも増え、伸びしろが増していくと考えます。

〈カラダのなか〉フィックの式を目安にしてトレーニングの目的を明確にする!

最大酸素摂取量を向上させるため、フィックの式をもとに内訳を分解して考えると、鍛えるべきターゲットが明確になります。心臓や肺の能力、血液の酸素運搬能力、筋の酸素消費能力(ミトコンドリアの能力)など、カテゴリーに分けることで、どこにどのような強度で負荷を与えるべきなのか、トレーニングの目的がより具体性を帯びてきます。

■酸素摂取量のうち、どの要素を強化するのか?

〈カラダのなか〉トレーニングでなにが変わるのか?

トレーニングによって、体内でどのような変化が起こるのか? トレーニング効果を具体的にイメージできると、より精度の高いトレーニングを行うことができます。心臓から送り出す血液量を増やし、筋に酸素を運び、酸素を使う力がいかに伸びていくのかを実験データとともに見ていきましょう。

■一回拍出量の増加によって最大酸素摂取量が向上

左上の図は心拍出量の、右上の図は一回拍出量の、トレーニング前後での変化をそれぞれ示しています。トレーニング後に最大一回拍出量が増加し、最大心拍出量も増えていることがわかります。これにより最大酸素摂取量も向上します。

■酸素をたくさん運んで、たくさん使う能力

高強度トレーニングで総血液量、高地トレーニングで赤血球やヘモグロビンが増加します。持久トレーニングで毛細血管網の密度が増えると、末梢組織( 筋など)でのガス交換の効率が上がり、さらに高強度トレーニングによるミトコンドリアの増加で酸素をより多く使う能力も向上します。

Wilmore and Costill., Physiology of Sport and Exercise, 2004

〈カラダのなか〉最大酸素摂取量を向上させるには「強度」と「頻度」を意識する!

最大酸素摂取量の向上には運動強度がキーとなりますが、高強度運動だけではカラダへの負担が大きくなり、ケガなどのリスクも高まる可能性があります。強度の低さをトレーニング時間の長さでカバーするなど、強度や時間、頻度の組み合わせを考慮した、個人に合ったトレーニングの実施が重要です。

■強度が一番大事!

上図は、異なる強度(%VO2 max)でトレーニングを行った際の最大酸素摂取量の変化量を示したもの。運動強度が高いほうが最大酸素摂取量は向上し、90~1 00%VO2 max の強度でトレーニングすることが最もよいようです。Wenger and Bell は、最大酸素摂取量を向上させるには、強度が最も重要な要因であると述べています。

■頻度もまた重要!

最大酸素摂取量を上げるには、トレーニング頻度も重要です。左図では、トレーニング頻度が高いほど最大酸素摂取量の向上が大きくなることが示されています。

■強度の低さは運動時間でカバーできる!

毎日、高強度で追い込むのは現実的ではありません。右図は一回の運動時間を長くすることで、最大酸素摂取量の増加が上がることが示されています。

Wenger and Bell., Sports Med, 1986

★ ★ ★

「ランナーのカラダのなか
運動生理学が教える弱点克服のヒント」
著/藤井直人/小学館

藤井直人FUJII NAOTO
筑波大学 体育系 助教。博士(学術)。専門分野は運動生理学。
1981年6月24日大阪府生まれ。筑波大学体育専門学群卒業。大学在学中は陸上競技部に所属。その経験を活かし、運動時の呼吸・循環・体温調節に関する運動生理学的研究を数多く行っている。さらに筑波大学体育系の特色を活かし、競技パフォーマンス向上のためのスポーツ科学研究も進めている。これまでの研究成果はThe Journal of Physiology やMedicine & Science in Sports & Exercise といった運動生理学・スポーツ科学分野の一流雑誌を含め、国際誌に170報以上掲載されている。アメリカとカナダでの海外留学の経験を活かし、複数の国の研究者と共同研究を精力的に進め、国際的な賞も複数受賞している。

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年4月16日(火) 発売

DIME最新号は「名探偵コナン」特集!進化を続ける人気作品の魅力、制作の舞台裏まで徹底取材!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。