毎日ジョギングするだけでは速くなりません
■有酸素能力のレベルアップに必要なもの
フルマラソンのレースに出場し、自己ベストを更新したいと考えたとき、どうすればレベルアップできるのでしょうか? ある程度の目標を持ちながらも、延々と低強度のジョグをくり返したり、長い距離を走るだけのトレーニングを続けたりしてしまうランナーも少なくありません。
趣味で楽しく走るだけなら、ジョグだけでも十分でしょう。なんら問題はありません。しかし、ある程度のスピードで走り、継続して記録を伸ばしたい場合は別です。ジョグだけでは、長距離走の記録を継続して伸ばすことはできません。
運動生理学の世界では、持久運動パフォーマンスに関連するさまざまな実験が行われています。そして、最大酸素摂取量に代表される有酸素能力を決定づけるさまざまな因子。これらを伸ばすために必要とされる条件として、ほとんどのケースで共通する要素があります。それが「運動強度」です。左ページの図に、最大酸素摂取量をはじめ、有酸素能力に必要なさまざまな要素が並んでいますが、トレーニングによって大きくレベルアップしたのは、「高強度トレーニング」を実施した場合です。
インターバルトレーニングなど、高い強度でトレーニングした場合に、ほとんどの要素がアップしています。つまり、有酸素能力を高めたい場合は、「高強度運動」をうまく入れ込むことが必須といっても過言ではありません。低強度のジョグをダラダラ続けるよりも、短時間の高強度トレーニングをやったほうが効果は高いと思います。ジョグも重要ですが、レベルアップにはケガやオーバートレーニングなどに配慮しつつ、高強度でのトレーニングが必要になります。
〈カラダのなか〉持久系トレーニングにおいては「強度」こそが正義!
マラソンは、低強度の長時間運動ですが、ゆっくり長く走る練習だけで速くなるわけではありません。そのパフォーマンスを支える有酸素能力の要素のほとんどは、実は高強度のトレーニングで伸ばすことができます。「ゼーハー」と息が切れるくらいの高い運動強度で負荷をかけることが、レベルアップのカギを握ります。
■有酸素能力の要素のほとんどは高強度運動でUP
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「ランナーのカラダのなか
運動生理学が教える弱点克服のヒント」
著/藤井直人/小学館
藤井直人FUJII NAOTO
筑波大学 体育系 助教。博士(学術)。専門分野は運動生理学。
1981年6月24日大阪府生まれ。筑波大学体育専門学群卒業。大学在学中は陸上競技部に所属。その経験を活かし、運動時の呼吸・循環・体温調節に関する運動生理学的研究を数多く行っている。さらに筑波大学体育系の特色を活かし、競技パフォーマンス向上のためのスポーツ科学研究も進めている。これまでの研究成果はThe Journal of Physiology やMedicine & Science in Sports & Exercise といった運動生理学・スポーツ科学分野の一流雑誌を含め、国際誌に170報以上掲載されている。アメリカとカナダでの海外留学の経験を活かし、複数の国の研究者と共同研究を精力的に進め、国際的な賞も複数受賞している。