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走ると息が切れるのはなぜ?酸素摂取量を増やす呼吸調節のしくみ

2023.12.27

フルマラソンのような長距離を暑いなかでぶっ続けで速く走れるのは、人間だけだと知っていますか? なぜなら、ヒト以外の動物は、体温調節ができないから。

運動生理学とは、運動中に体内で起こる化学反応、現象、影響、状態を追求する研究です。その観点を一般実用書として初めてマラソンに持ち込み、ランナーたちの弱点や能力向上のヒントを探った、意欲的なランニング強化本が「ランナーのカラダのなか運動生理学が教える弱点克服のヒント」。走っている時にカラダのなかでなにが起こり、どう変化し、どう影響するのか? そして、それに対し、長距離を効率よく走りきるために、どのような対策をすべきなのか?

何度もマラソンを経験しているのになぜか記録が伸びない、ケガが絶えない、レース調整がうまくいかない、トレーニングメニューが自分に合っているのかわからない。そんな悩める市民ランナーの「もっと走りたい」情熱に寄り添える一冊です。

本記事では「ランナーのカラダのなか運動生理学が教える弱点克服のヒント」の中から運動生理学の観点から長距離ランナーの能力を紐解いていています。。

「ランナーのカラダのなか運動生理学が教える弱点克服のヒント」
著/藤井直人 小学館 1650円

※本稿は、藤井直人/著「ランナーのカラダのなか運動生理学が教える弱点克服のヒント」(小学館)の一部を再編集したものです

【基礎知識5】走ると息が切れるのはなぜ?呼吸調節のしくみ

■強度が上がれば、息が切れるのは必然

 人間は走ると息が切れますが、これはなぜ起こるのでしょうか? 呼吸調節のしくみもフィックの式で考えると、容易に理解できます。運動の強度(走速度)が上がると、酸素摂取量も上がっていきます。このとき、酸素摂取量を上げるためには、フィックの式でいう「動脈血酸素含量」を維持する必要があります。心拍出量を上げるのと同時に、呼吸も上げなければ、血液に十分な酸素をのせることができず、動脈血酸素含量が低下してしまい、酸素摂取量が増えません。「酸素摂取量を上げるため」というのが、息が切れる理由のひとつといえます。また、LT値と似ていますが、ある程度の強度を超えると、呼吸が急激に上昇するポイントがあり、それを「換気閾値」といいます。

 そして、「呼吸を急激に上げる」主な要因のひとつは水素イオン(H+)と思われます。

 血液や筋の水素イオンが増えると、pHが低下して酸性に傾きます。すると、頸動脈小体にある化学受容器などのpH低下を感知するセンサーが刺激され、「呼吸を上げろ」という指令が出るのです。さらに、突き詰めて考えると、「なぜ血中の水素イオンが増えるのか」という疑問に突き当たります。

 血液や筋の水素イオンが増える要因は主に3つ。三大栄養素の代謝、解糖系における乳酸の生成、ATPの分解です。これらすべてが運動強度を上げれば活発になるので、高強度運動で水素イオンが増えて息が切れるのも当然といえます。

 ちなみに、運動不足の人が軽い運動で息が切れてしまう理由は、低強度運動にもかかわらず解糖系が動員され、血中の水素イオンが急激に増えてしまうことが考えられます。

〈カラダのなか〉酸素摂取量を増やすには呼吸を上げなくてはいけない!

運動強度が上がれば、筋が必要とする酸素の量も増えるため、必然的に酸素摂取量も上がっていきます。酸素摂取量を上げるためには、呼吸を上げて動脈血酸素含量を維持することが重要。呼吸の深さと回数を上げて、動脈血に十分な酸素をのせて、全身の筋に届けるのです。

■動脈血酸素含量を高いレベルに維持する必要がある!

〈カラダのなか〉水素イオン(H+)が運動によって増えると、呼吸が上がる!

高強度運動時に息が切れる要因のひとつとして、血液や筋の水素イオン(H+)増加が挙げられます。水素イオンが増えるとpH が低下し、「呼吸を上げろ」という指令が出されます。水素イオンが増える要因が運動です。解糖系や有酸素系のエネルギー代謝によって水素イオンが増えるため、強度が上がるほど水素イオンが増え、呼吸が上がると考えられます。

■呼吸が急上昇する「換気閾値」って?

上の図は、縦軸が換気量、横軸が運動強度(走速度)を示しています。強度の上昇とともに換気量もゆるやかに上昇していきますが、ある強度を境に急激に上昇しています。この換気量が急激に増えるポイントを「換気閾値」といい、おおよそ乳酸閾値(LT)強度と近くなります。

■水素イオン(H+)が換気量を上げる!

血液や筋の水素イオン増加は、pH の低下を意味します。すると、頸動脈小体などにある「化学受容器」が刺激され、「呼吸を上げろ」という指令が出されます。つまり、水素イオンの増加は呼吸を上げる要因になるのです。

■水素イオンが増える3つの要因

運動時に水素イオンが増える要因は、主に3つあります。三大栄養素の代謝で二酸化炭素が増えること、解糖系による乳酸の生成、ATPの分解。これらはすべて、運動すると必然的に起こるエネルギー代謝によるもの。運動で息が切れるのは当然といえます。

■水素イオンを除去する方法が「呼吸」

水素イオンが極端に増えると、筋収縮ができなくなるなど、カラダのさまざまな機能に悪影響を及ぼす可能性があるため、体外へ排出しないといけません。その方法が呼気として肺から吐き出すこと。水素イオンの大部分は重炭酸イオンとくっついて炭酸を形成し、炭酸は二酸化炭素と水に解離します。二酸化炭素は呼吸により除去されます(H++重炭酸イオン→炭酸→水+CO2)。

☆ ☆ ☆

運動生理学が初めて明かすランニングの正体はいかがでしたでしょうか?

「ランナーのカラダのなか運動生理学が教える弱点克服のヒント」を読むことでトレーニングの本質を再認識することができるはず、気になる方は読んでみてください。

「ランナーのカラダのなか運動生理学が教える弱点克服のヒント」
著/藤井直人 小学館 1650円

著者/藤井直人 FUJII NAOTO
筑波大学 体育系 助教。博士(学術)。専門分野は運動生理学。
1981年6月24日大阪府生まれ。筑波大学体育専門学群卒業。大学在学中は陸上競技部に所属。その経験を活かし、運動時の呼吸・循環・体温調節に関する運動生理学的研究を数多く行っている。さらに筑波大学体育系の特色を活かし、競技パフォーマンス向上のためのスポーツ科学研究も進めている。これまでの研究成果はThe Journal of Physiology やMedicine & Science in Sports & Exercise といった運動生理学・スポーツ科学分野の一流雑誌を含め、国際誌に170報以上掲載されている。アメリカとカナダでの海外留学の経験を活かし、複数の国の研究者と共同研究を精力的に進め、国際的な賞も複数受賞している。

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