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乳酸は疲労物質ではない?運動している時、体内で何が起こっているのか

2023.12.24

フルマラソンのような長距離を暑いなかでぶっ続けで速く走れるのは、人間だけだと知っていますか? なぜなら、ヒト以外の動物は、体温調節ができないから。

運動生理学とは、運動中に体内で起こる化学反応、現象、影響、状態を追求する研究です。その観点を一般実用書として初めてマラソンに持ち込み、ランナーたちの弱点や能力向上のヒントを探った、意欲的なランニング強化本が「ランナーのカラダのなか運動生理学が教える弱点克服のヒント」。走っている時にカラダのなかでなにが起こり、どう変化し、どう影響するのか? そして、それに対し、長距離を効率よく走りきるために、どのような対策をすべきなのか?

何度もマラソンを経験しているのになぜか記録が伸びない、ケガが絶えない、レース調整がうまくいかない、トレーニングメニューが自分に合っているのかわからない。そんな悩める市民ランナーの「もっと走りたい」情熱に寄り添える一冊です。

本記事では「ランナーのカラダのなか運動生理学が教える弱点克服のヒント」の中から運動生理学の観点から長距離ランナーの能力を紐解いていています。。

「ランナーのカラダのなか運動生理学が教える弱点克服のヒント」
著/藤井直人 小学館 1650円

※本稿は、藤井直人/著「ランナーのカラダのなか運動生理学が教える弱点克服のヒント」(小学館)の一部を再編集したものです

【基礎知識2】乳酸は疲労物質ではない?

■乳酸はエネルギー源のひとつである!

 情報も広く伝わってきた近年において、「乳酸は疲労物質である」という誤解は、だいぶ解けてきたように思いますが、いまだ誤解しているランナーもいるかもしれません。

 前述したように、乳酸とは、ATP合成ルートのひとつ「解糖系」で生成される代謝産物のことです。

 解糖系において、グルコースがピルビン酸に変換され、さらにピルビン酸が乳酸に変換されます。乳酸は、場合によってはピルビン酸に戻る(合成する)ことができるので、ミトコンドリア内に入り、有酸素系エネルギー産生の原料として利用されます。また、筋細胞内の乳酸は血中に流れ出て、肝臓に送られると、再びピルビン酸に変換され、その後、糖新生によってグルコースに戻されます。変換されたグルコースは血中に戻され、活動筋などさまざまな組織で使われます。この骨格筋と肝臓間の乳酸とグルコースの回路を「コリ回路」といいます

 一方、解糖系の代謝能力が高い速筋線維は、ミトコンドリアの数が少ないのが特徴です。そこで生成された乳酸は、有酸素系の原料として効率よく利用できるように、血管を介して他の筋細胞(ミトコンドリアの多い遅筋や心筋など)などに供給されます。

 また、運動強度が高くなると、血中から除去されるより、血中に流入する乳酸が多くなり、血中乳酸濃度が上がっていきます。この血中乳酸濃度が高まるポイントを「LT値(乳酸性作業閾値 )」といい、運動強度の目安(基準)のひとつとして、ランナーのトレーニングに利用されています。乳酸は、疲労の指標とはなりますが、疲労物質ではありません。

〈カラダのなか〉高強度運動で乳酸は増えるが、エネルギーとして再利用される!

ゆっくりジョグなどの低強度の運動を続ける限り、乳酸が過剰に増えることはありません。高強度運動によって、解糖系の稼働割合が増えれば、そのぶん発生する乳酸の量も増えます。乳酸の量が増えても、有酸素系の材料であるピルビン酸に変換されたり、肝臓でグルコースに戻されたり(糖新生)、エネルギー源としてさまざまなところで再利用されます。

■乳酸はいろいろなところで再利用される

■強度の目安にもなるLT値って?

血中の乳酸濃度が上がり始め、2~2.5mmol/Lくらいになる強度をLT値(乳酸性作業閾値)といい、「ややきついけど長く続けられそう」なペースを意味します。また、乳酸濃度がさらに上がって4mmol/Lに達し、「頑張らないと長くは続けられない」強度をOBLAといいます。心拍数などと紐づけて運動強度の管理に利用することも。

☆ ☆ ☆

運動生理学が初めて明かすランニングの正体はいかがでしたでしょうか?

「ランナーのカラダのなか運動生理学が教える弱点克服のヒント」を読むことでトレーニングの本質を再認識することができるはず、気になる方は読んでみてください。

「ランナーのカラダのなか運動生理学が教える弱点克服のヒント」
著/藤井直人 小学館 1650円

著者/藤井直人 FUJII NAOTO
筑波大学 体育系 助教。博士(学術)。専門分野は運動生理学。
1981年6月24日大阪府生まれ。筑波大学体育専門学群卒業。大学在学中は陸上競技部に所属。その経験を活かし、運動時の呼吸・循環・体温調節に関する運動生理学的研究を数多く行っている。さらに筑波大学体育系の特色を活かし、競技パフォーマンス向上のためのスポーツ科学研究も進めている。これまでの研究成果はThe Journal of Physiology やMedicine & Science in Sports & Exercise といった運動生理学・スポーツ科学分野の一流雑誌を含め、国際誌に170報以上掲載されている。アメリカとカナダでの海外留学の経験を活かし、複数の国の研究者と共同研究を精力的に進め、国際的な賞も複数受賞している。

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