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NTTと東京電機大が無線品質を現行の量子アニーリングマシンで高速・高精度に推定可能な技術開発に成功

2023.11.06

NTTと東京電機大は、世界で初めて超高速と高精度を両立する電波伝搬シミュレーションの実現アルゴリズムを開発し、実際の量子アニーリングマシン上で有効性を実証したと発表した。

これにより、自動運転をはじめとした6G/IOWN時代に求められるすべての端末がつながり続ける無線通信サービスの実現への大きな寄与が期待できる。

技術ポイントは無線通信品質推定高速・高精度化技術と計算に必要な量子ビット削減技術の2点

サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会がSociety5.0として提唱されている。

次世代の移動通信システムにおいても、時々刻々と複雑に変化する無線通信品質をリアルタイムにサイバー空間上で高精度に推定し、フィジカル空間でのネットワーク制御に活用することで、6G/IOWN時代に求められる高速・大容量かつ高信頼でつながり続ける無線通信サービスを実現することが検討されている。

無線通信品質推定のための代表的なシミュレーション手法であるレイトレース法は、電波の通り道の探索や反射や回折などの電波の作用について複雑な計算を行なう必要があるため、膨大な計算時間が必要となる課題があった。

この課題に対して、2022年12月にNTTと電機大は、世界で初めてアニーリングマシン上で動作する伝搬QUBOモデルを考案し、従来のノイマン型計算機上で実行するレイトレース法と比べて100万分の1以上の計算時間を短縮させる技術を確立した。

上記技術では電波の散乱を全方向に対して一様に散乱する完全拡散反射モデルが使われおり(図1)、実際の環境が再現されたサイバー空間上において面的な広がりを持った無線通信エリア推定を超高速に行なうことを可能にした。

しかし、次世代移動通信(6G)のなかで検討が進められている場所・時・人に合わせた端末個々に対して所望の品質を確保するための柔軟なネットワーク制御を行なうには、高速性を維持したまま場所固有の無線通信品質推定を高い精度で実現することが求められる。

そのためには、実際の環境における電波の散乱について、図1に示す通り壁面などに入射する角と出射する角の関係性を伝搬QUBOモデルに取り込む必要があった。

↑図1 壁面における電波散乱モデル

サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合したシステム上で求められる無線通信品質推定は、msecオーダの高速性と誤差が数dB程度となる高精度化が両立したもので、実用化のためには現行のアニーリングマシンで提供される量子ビット数の範囲内で計算が実行できなければならない。

NTTと電機大はかねてより品質をエネルギーの観点に読み替えることによって無線通信品質を高速にシミュレーションできる新しい推定手法を開発してきたが、今回、これら3つの課題を同時に解決するアニーリングマシン上で実行可能な新たな伝搬QUBOモデルを考案。

これにより従来技術で実現されていたリアルタイム性を保ったまま、ピンポイントな場所に対する無線通信品質推定の高精度化を両立させることに成功したという。

また、疑似量子アニーリングによる動作検証のみならず、疎結合5640量子ビットの量子アニーリングマシンにて考案した伝搬QUBOモデルを実際に動作させることに成功し、アルゴリズムの有効性を実機で確認したとのことだ。

今回の技術ポイントは、無線通信品質推定高速・高精度化技術と計算に必要な量子ビット削減技術の2点。無線通信品質推定高速・高精度化技術では、建物壁面などに対する電波の散乱現象を模擬できるFraunhofer近似をQUBOモデルへ落とし込むことに成功。

これにより実環境が再現されたサイバー空間での無線品質推定精度を大幅に向上できたという。電波の通り道が複雑な50m四方程度のエリアに相当する計算モデルで計算を行なったところ、散乱回数3回の条件のとき厳密解となるレイトレース法に対する従来技術の誤差は損失量の小さい上位3経路で10dB以上となっているものの、本技術では上位2経路で1dB以内の誤差が実現できていることがわかったという(図2)。

この結果は、端末の移動による通信品質の変動を安定制御しようとするときに必要な精度を満足できることに相当する。

なお、本技術は従来技術と同様にノイマン型計算機でのレイトレース計算に対して100万分の1以上に計算時間が短縮できており、高速性は維持できていることを確認しているとのことだ。

↑図2 本技術による電波の通り道推定例と推定結果の比較

一方、計算に必要な量子ビット削減技術においては、現在の量子アニーリングマシンで使うことのできる量子ビット数は、本技術の大規模な計算実行時に十分な量ではないため、利用可能なレベルまで量子ビットを削減する技術を確立することが必要だった。

そこで、建物構造に対する電波の性質を考慮することで、電波の通り道の組み合わせ数爆発を抑制する技術を確立。実際の都市モデル(面数450面)を用いて散乱回数7回の大規模計算を行なったところ、必要量子ビット数を25分の1に削減し、現行のアニーリングマシンで提供される量子ビット数以内に収めることができたという。

リアルタイム性と高精度化を両立した無線通信品質推定が現行のアニーリングマシン上でできるようになったことで、無線端末1台1台に対して周波数、時間、空間といった無線リソースの最適化を実プロダクトの量子ビット提供レベルで実現できる道が拓けた。

これにより、端末単位での柔軟な電波環境の制御を行なうことで、将来的には車両1台1台の安心安全の徹底が求められる自動運転に対するネットワーク支援のような新たなモビリティサービスの創出が期待できる。

今後の展開としては、6Gでめざす信頼度99.99999%を達成するための技術開発を進めるとともに、本アルゴリズムを無線通信ネットワークに組み込み、高速・大容量・低遅延で繋がり続ける無線システムの実証を進め、2030年目途での技術確立をめざすとのこと。

また、人々の暮らしをより豊かにするアプリケーションを安心安全に活用できる社会の実現など、つながり続けるユースケースの飛躍的拡大に貢献していくとしている。

関連情報
https://group.ntt/jp/
https://www.dendai.ac.jp/

構成/立原尚子

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