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広く使用されている抗うつ薬が過敏性腸症候群の新たな治療選択肢として有望、リーズ大学研究報告

2023.11.10

広く使用されている抗うつ薬がIBSの新たな治療選択肢として有望

これまで長年にわたってうつ病や片頭痛に使われてきた安価な薬を、過敏性腸症候群(IBS)の治療薬として適応外使用することの裏付けとなる臨床試験の結果が報告された。

三環系抗うつ薬のアミトリプチリンを使用した患者では、プラセボを使用した患者と比べてIBSの症状が改善する可能性が約2倍高いことが示されたのだ。英リーズ大学消化器学教授のAlexander Ford氏らによるこの試験の結果は、「The Lancet」に2023年10月16日掲載され、欧州消化器病週間(UEG Week 2023、2023年10月14~17日、デンマーク・コペンハーゲン)でも発表された。

Ford氏は、「低用量で開始して徐々に増量すれば、アミトリプチリンはIBSに対して有効かつ安全なことが示された。これは喜ばしいことだ」と話している。

IBSは生活の質(QOL)を低下させる慢性疾患であり、世界で約20人に1人がIBSの特徴である腹痛や腸の問題を抱えて生きていると推定されている。

現状では、IBSを完治させる治療法は存在しない。Ford氏は、「ファーストライン治療は多くのIBS患者には効果がなく、英国には他の治療選択肢もほとんどない。

一方でIBSが個々の患者や医療システム、社会全体に与える影響は甚大であり、アンメット・ニーズが存在していることに疑いの余地はない」と話す。

アミトリプチリンは、新薬が登場したことで、うつ病の治療薬としてはほとんど使われなくなり、現在では、片頭痛の予防や慢性の神経痛、背部痛の治療で使用されている。

今回報告された臨床試験は、2019年10月18日から2022年4月11日の間に、イングランドの3つの地域に所在する55カ所の一般診療所を受診した患者463人(平均年齢48.5歳、女性68%)を対象に実施された。

対象者は、6カ月にわたって低用量(10mg)のアミトリプチリンを1日1回服用する群とプラセボを服用する群のいずれかにランダムに割り付けられた。アミトリプチリンまたはプラセボの用量は、患者が3週間かけて、副作用や症状に合わせて最大30mgまで増量した。

その結果、治療開始から6カ月後の時点で、アミトリプチリン群ではプラセボ群と比べてIBS重症度スコアリングシステム(IBS-SSS)で評価した症状の改善度が大きいことが示された(IBS-SSSのスコアの平均差−27.0点、95%信頼区間−46.9〜−7.1、P=0.0079)。

アミトリプチリン群が全般的なIBSの症状の改善を報告する可能性はプラセボ群のほぼ2倍であった(オッズ比1.78、95%信頼区間1.19〜2.66、P=0.0050)。

一方、不安や抑うつの症状のスコアには変化は認められなかった。このことから、アミトリプチリンの効果は消化管を介したものであり、抗うつ薬としての同薬の作用によるものではないことが示唆された。

Ford氏は、「アミトリプチリンは、疼痛調節作用や、腸に対する何らかの作用を有している可能性があり、それがIBSに良く効く理由であるかもしれない」との見方を示している。アミトリプチリンの服用によりよく認められた副作用は、朝の口腔内の乾燥などの軽度の症状だった。

米マサチューセッツ総合病院の消化器専門医で、ハーバード大学医学大学院のKyle Staller氏は、「この臨床試験の結果は極めて刺激的だ」との見解を示している。

同氏は、「今回の臨床試験で用いたような低用量でのアミトリプチリンの使用は、IBSの症状の治療に極めて有効な可能性がある」と話し、「このことは、IBS患者を主に診ているわれわれには以前から分かっていたことだった。ただ、そのエビデンスがなかった」と付け加えている。

今回の臨床試験の結果から、アミトリプチリンはIBS治療の第二選択薬として位置付けられることが考えられるが、Staller氏は、「同薬が第一選択薬となる可能性もある」との見方を示している。

Staller氏は、この薬がさまざまな症状に効くのは、これらが脳と他の身体の部位のつながりにおける障害であり、シグナル伝達の異常が関与しているからではないかとの推測を示している。

同氏は、「私は患者に、こういった薬は神経のための補助輪のような役割を果たしていると説明している。薬が補助輪となって神経に適切に作用する方法を教え、脳へと伝達される異常なシグナルのボリュームを下げることができるのだ。このパラダイムはIBSに良く当てはまるが、IBSの他にもさまざまな疾患に当てはまると私は考えている」と話している。(HealthDay News 2023年10月18日)

Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(23)01523-4/fulltext

Press Release
https://www.leeds.ac.uk/main-index/news/article/5434/amitriptyline-helps-relieve-ibs-symptoms

構成/DIME編集部

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