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つながらないと不満が続出しているドコモ、ネットワークの品質を改善するために重要なことは?

2023.11.02

後追いの印象がぬぐえない改善策

房野氏:ドコモの説明には、みなさん納得しましたか?

石野氏:ちゃんと対策しますっていう姿勢を示したのは良かったんですけど、SNSの声を分析して出てきたのが鉄道路線っていうのは……。SNSの声を分析して鉄道路線の改善が重要だと、それを真顔で発表していたから、「笑ってはいけない記者会見」って感じでしたよ。だってSNSじゃなくてもわかるでしょう。普通に生活していれば、鉄道路線に電波が入ることが重要ってことはわかるし、別に大規模言語モデルにSNSの情報を食わせて分析しなくても、鉄道路線をX(旧Twitter)で検索すれば、「○○でつながらない」という声がそこそこ出てくるじゃないですか。リモートワークのしすぎで電車に乗らなくなっちゃったのかな。持ってきた分析手法が大がかりなわりには、出てきた答えがそれで、AIの無駄遣い感があるなと。後追いのものが多いなっていう気がすごくしたなぁ。

2023年10月のドコモの説明会では、ユーザーからのエリア申告の予兆を検知し、あらかじめ対策を行なうほか、ドコモのLLM付加価値基盤(大規模言語モデルによる付加価値基盤)により、SNSの投稿などを分析して素早く対応する、新たな取り組みが示された

石川 鉄道周りが重要なんて、KDDIの髙橋社長が5Gサービス開始当初に散々言っていた。

KDDI株式会社 代表取締役社長 髙橋 誠氏

法林氏:石野君が会見の時に突っ込んでいたけど、SNSで情報を取るのは、最近のやり方としてはよくある。KDDIのネットワークセンターでは、大型スクリーンにXのタイムラインが表示されている。ただ、通信品質を分析することに関しては、モバイルは人が動いているので、測るのが元々難しいんですよ。「渋谷でつながらない」は渋谷のどこでつながらないのかわからない。SNSの分析って、ちょっと弱いと思うんですよ。

石野氏:限界がある。住所をSNSで投稿する人なんていないですからね。

法林氏:その点、ソフトバンクが、子会社のAgoop(アグープ)が提供するSDK経由で、アプリから情報を収集しているというのは、上手いやり方だと思う。auも「デジラ」アプリとかで情報は少し取っているみたいです。

石野氏:Androidだとデフォルトで情報取得の許可を求められますよね。

法林氏:そう。ドコモは「ドコモスピードテストアプリ」でデータを取るって言っていたけど、どれだけ取れるか。

「ドコモスピードテストアプリ」

石川氏:ドコモは独自アプリをスマホにたくさんインストールしておきながらね。

石野氏:ドコモスピードテストアプリって、通信速度の速いことを競いましょう、みたいな建て付けになっているので、ユーザーは基本的に通信品質の良い場所でしか測らないんですよね。それで出てくる結果って良いものばかり。悪い声が伝わらない仕組みになっているというか、都合の悪い情報は耳にしませんっていうような感じ。

石川氏:スピードテストアプリを使う場合って、エリアマップを見てミリ波が飛んでいるとこに行って、こんなに高い数字が出たっていうのを喜んでシェアするような感じなんですよ。問題を洗い出すようなアプリではない。

石野氏:Agoopも一応ユーザーの同意は取っていますけど、こんなので同意を取ったといえるのか、みたいに問題視されることもあるので、あまり手放しで褒めたくはないんですが、やり方としては確かに合理的。ドコモだったら、d払いアプリにそういうものを仕込めていたら、レジ前でd払いが使えなくて困った、というようなことはもっと早く検知できたかなとは思います。

石川氏:d払いで払う時につながらなくて失敗したというデータを取っておいて、つながる時にそれをアップすれば、どのレジの前でつながらなかったのか、お店の場所だって確定できそうなもの。だけど、そういうことができていない。あまり言いたくないけど、ドコモ社内で横の連携が取れていない感じがする。

法林氏:まさにそこ。ドコモは位置情報に基づいたコンテンツサービスを過去からずっとやっていますよね。でも、コンテンツを作ってる人たちとネットワーク管理側との間で情報の行き来ができていない感じがする。例えば、「my daiz(マイデイズ)」の中に機能を仕込んでもらえれば正確な情報が取れる、それを上げるような仕組みにすればいいんじゃないの? というようなやり取りができていない。現場の声を拾えていないと僕が指摘しているのは、まさにそういう部分。見ていてすごく残念な感じがする。

「my daiz(マイデイズ)」

石川氏:ドコモはネットワークに絶対的な自信を持っていたと思うので、そんな必要もないだろうと思っていたんじゃないのかなと。一方、ソフトバンクは「つながらないから(ソフトバンクの)iPhoneは買わない。ドコモから出るのを待つ」って言っていた人が多かった中で、孫さんがこれはまずいと思って対策させた。それが今も脈々と続いて、ソフトバンクとしては実になった、みたいな感じなんじゃないですか。

ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役 会長兼社長執行役員 孫 正義氏

房野氏:KDDIはSNSのエゴサーチをよくやっているといわれていますね。

石川氏:Xのau公式アカウントは、ユーザーの「つながらない」という投稿によくコメントしているし、auのネットワークセンターではつぶやきが可視化されている。「楽天つながらない」という投稿もauは知っているし、4社に関するつぶやき状況をつぶさにチェックしている。SNSのチェックが改善につながっていることを感じます。

房野氏:実際に改善されてる事例があるんですか?

石野氏:野外フェスとかはそうみたいです。フジロックを取材したライターさんがいて、楽天モバイルもちょっと遅かったんですけど、ソフトバンクとauがちゃんと結果を残した中、ドコモはパケ詰まりでスピードテストで測定不可能になったとありました。ユーザーの声に対する対策の遅れがもろに出たのはフェスという感じですね。

房野氏:フェス会場は都会ではないですよね。ルーラルエリアは本来だったらドコモの得意なエリアだと思うんですが。

石野氏:普段はあまり人がいないので、基地局のキャパシティが大してないんですよ。だから各社とも移動基地局を設置したりWi-Fiを増強したりしてトラフィックを逃がしているんですけど、ドコモはそこがやりきれなかった。やっぱりユーザーの声をちゃんと拾ってなかったところがあるのかなと。今回の対策の中でも、5G移動基地局車や運べるキャリー基地局を増強しますという説明をしていました。

ドコモは今後、可搬型基地局や4G/5G移動基地局車の配備を増やすなど、集客イベントでのトラフィック対策を強化する方針だという

房野氏:移動基地局車はドコモが一番たくさん持っていると思いましたが。

石野氏:他社が成果を出しているのに、移動基地局車を一番持っていながら、トラフィック対策ができていなかったのは、きちんと現状分析ができていないのかなっていう感じがするんですよね。やっぱりSNSなどでユーザーの声をちゃんと拾っていなかったことが痛いっていう感じですね。

石川氏:現場はわかっていたけど、対策を打てなかったのかもしれない。

石野氏:そうですね。現場には声が届いているけれど、上の人が気にしなかったのかもしれない。

石川氏:「どうせ『つながらない』って騒いでいるのは石野だろ」みたいに(笑)

法林氏:その解釈は間違っていないかも(笑)。でも、ドコモについては情報の取り方がちょっと物足りない感がすごくある。NTTグループは全体的に、指摘されて、これはまずいなと思って直す、という感じがする。

房野氏:指摘はお上からってことですか?

法林氏:ユーザーの声とか外部からの指摘じゃないですかね。外から言われて直すというパターンが結構多い。たぶんネットワークもそうだろうなという感じ。人流は見てるんでしょうけど、読み間違いはまさにそこだと思う。

 KDDIは「ずっと、もっと、つなぐぞ。au」というキャッチコピーを作るくらいで、確かにStarlinkでエリアカバーして、基地局を建てるのも面白いと思うし、今度は衛星を使って、SOSを送れるようにしますって話もある。現実的に、KDDIの電波が届かない山奥とかに行くかといえば、行く人は限られているかもしれないけど、もしかして取材で船で海上に行ったら、天候が怪しい、SOS! って時に「空が見えれば、どこでもつながる」っていう話はすごく説得力がある。ドコモは見せ方も展開の仕方も、ちょっとワンステップ遅いかなと。

石野氏:ドコモの説明会で衛星電話「ワイドスターⅢ」の情報を入れてきましたよね……あんぐりですよ。

衛星電話サービス「ワイドスター Ⅲ」

石川氏:あれはイマイチだったかな。

法林氏:あれはどうかと思った。僕らは普段使わないので。でもまぁ、しょうがないね。ワイドスターの新製品が出たので、それを知らせたいのはわかるんだけど、あのタイミングで発表しなくてもねぇ。空気を読めていない感があった。

石川氏:なんか、節々にセンスのなさを感じるんですよ。NTTグループは定期的に異動するので、なんか過去からのモバイル業界の空気感をつかめていない感じがするんですよ。

法林氏: NTTグループとして対応しているのは、おそらく記者クラブがメイン。通信専業の記者ってほぼいない。一方、モバイル業界には石川、石野の2人を代表として口の悪い、うるさい人が多いので(笑)

石川氏:新聞記者も3年か4年で担当が変わっていく。一方で、KDDIやソフトバンクの広報は長くやっているんですよ。ちゃんと空気を継続的に読んでいる感がある。

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